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自社導入プロジェクトから誕生したRPAツール「akaBot」の特徴と活用事例−ベトナム最大手IT企業の日本法人FPTジャパンに聞く

» 2019年09月20日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)への注目が高まり、導入企業も着実に増えている状況を踏まえ、2018年と比較すると導入を検討し始めている企業数が飛躍的に増加している。しかしながら、コスト負担が重く、なかなか導入に踏み切れない中堅・中小企業も少なくないのではないだろうか。

コストを理由にRPAの恩恵から取り残されてしまっている状況は、日本以外でも見られる。製造業を中心に日本との関わりが深いベトナムでも、導入をためらう企業があるという。

そこでベトナム最大手IT企業であるFPTソフトウェア株式会社は、これまでのRPAに関するワンストップソリューションを提供することにより培った経験を元にRPAツールを自社開発し、多くの企業が導入しやすい価格体系を実現した。コスト競争力を持ちながら、世界で評価の高いRPA製品を参考として「いいところ取り」することにより、必要十分な機能を備え、さらにロボットが苦手としてきたアプリケーションにも対応させるなど、新たに顕在化した課題にも対応しているという。

FPTソフトウェアでRPA製品のプロダクトオーナーを務めるブイ・ディン・ザップ氏、日本国内においてRPAの販売および導入支援を担当するFPTソフトウェアジャパン株式会社 ド・トゥアン・アイン氏の2人に、日本やベトナムなどの顧客に対して、さまざまなRPAツールを導入してきた経験を踏まえ、昨今の国内のRPAツールを取り巻くニーズの変化、そして自社開発をしたRPAツール「akaBot(アカボット)」の特徴や活用事例について聞いた。

(左から)FPTソフトウェア株式会社 ソリューション・イノベーション・サービス RPA・事業開発最高責任者 ブイ・ディン・ザップ氏、FPTソフトウェアジャパン株式会社 デジタルプロセッシングサービス本部 RPAイノベーションCoE 部長 ド・トゥアン・アイン氏

■記事内目次

1.多様化するRPAツールへのニーズ

2.これまでRPAツールが苦手としていた「.NET Framework」やレガシーシステムの操作を克服する「akaBot」

3. ハードルの高かった銀行の送金業務に適用されるロボット事例

4.「akaBot」トライアル期間は2カ月。より多くの企業にRPAを体感してもらいたい


多様化するRPAツールへのニーズ

−この6月に開催された「RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019」では、FPTソフトウェアのブースにも多くの来場者が足を止めていました。どのような関心を持って受け止められたのでしょうか。

ド・トゥアン・アイン氏(FPTソフトウェアジャパン株式会社 デジタルプロセッシングサービス本部 RPAイノベーションCoE 部長):弊社のRPAツール「akaBot」は、ベトナムでは活用事例が増えていますが、日本ではまだ新しいツールです。今回のイベントが、大々的に披露する機会となりました。

来場者との会話を振り返ってみると、RPA未導入企業の関心は「価格」「機能」「展開」の大きく3点に分類することができます。「展開」というのはその後の運用までを含めたサポートのことですね。ただプラットフォームを売って終わりではなく、開発や運用まで、ワンストップでどれだけサポートがあるのかを気にされているのでしょう。

また、すでに導入済みの来場者、あるいはこれまで他社製のRPAツール導入を支援してきた顧客に「akaBot」を紹介すると、こちらも「価格」「機能」について詳しい話を聞きたいと言われることが多いですね。

−言い換えるならば、現状のRPAツールに課題感を持っているともいえるのでしょうか。

アイン:そう考えていいと思います。価格面については、「akaBot」は大手ベンダーのツールに比べて約3分の1で提供することができるため、特に中小規模企業の担当者からは驚かれますね。その結果、現実的な選択肢として受け止められているのを感じます。

以前、FPTコーポレーション(FPTグループ)におけるRPA事業の中心、FPT DPS社 CEOであるカックが、RPA BANKの取材(「RPAの限界」を突破するには――ベトナム最大手IT企業の日本法人FPTジャパンホールディングスに聞く)でご説明しましたが、「akaBot」のルーツは私たち自身のRPA導入プロジェクトから始まっています。

FPTコーポレーションは、ベトナムの民間企業でトップ10に位置づけられる企業であるために、企業レベルに相応した大手ベンダーのツールを導入することも検討しましたが、投資金額が大きくなり投資対効果が小さくなってしまうことを懸念しました。それなら、自社の技術力を生かして開発したほうが賢明だと判断したのです。

同時に、将来的には金額を抑えて、顧客に提供することも視野に入れていました。RPAに興味を持っていても、投資金額が大きくなりすぎて導入決定にまで至らない企業がとても多いことは知っていましたので、ベトナムのIT業界リーディングカンパニーとして貢献したかったのです。FPTソフトウェアのグローバルにおける売り上げ金額の半数以上が日本市場におけるものです。そのため当然、日本市場において、さまざまな課題により導入に躊躇されている企業に対しても提供することを考えましたし、満足してもらえる品質のプロダクトにするつもりでした。そして今、いよいよ日本にも「akaBot」を提供できる準備が整ったわけです。

それから最近では、手書き文字の認識を可能にするAI-OCR との組み合わせによって、これまでよりも自動化できる範囲が拡大しつつありますが、やはり価格を理由に導入まで踏み切れない企業が少なくありません。

FPTソフトウェアではAI-OCR製品も自社開発しており、RPAと同様に十分な価格競争力を持っています。ベトナムを中心に多数の優秀なエンジニアを擁しており、価格と品質の両立を実現しています。

これまでRPAツールが苦手としていた「.NET Framework」やレガシーシステムの操作を克服する「akaBot」

−RPA導入済み企業から寄せられる関心のうち、「機能」についてはどのような点が注目されているのでしょうか。

ブイ・ディン・ザップ氏(FPTソフトウェア株式会社 ソリューション・イノベーション・サービス RPA・事業開発最高責任者):9割の企業が求めているのは、単純なデータ取得や入力に代表されるような、シンプルな定型作業の自動化を実現できる基本機能です。

私たちは開発ツールの「akaBot Studio(アカボットスタジオ)」のほか、ロボットの監視・管理を行う「akaBot Center(アカボットセンター)」、スケジューリング機能を備えて無人でロボットを動作させることも可能な実行ツール「akaBot Agent(アカボットエージェント)」という3つのコンポーネントによって、一般的に必要とされる機能を提供しています。

もちろん、ただ機能が揃えばいいという話ではありません。価格は抑えつつも、1つひとつのクオリティは確かなものである必要があります。私たちは、主だったRPA製品をグローバルで60社以上、日本では30社以上に導入してきている実績があります。さらに、コンサルティングからサポートまでを提供するRPAワンストップソリューションを提供している経験を通して、グローバル市場で高く評価されている製品の機能を知り尽くしている自負があります。

「akaBot」の開発においては、これらの経験を生かして「いいところ取り」をし、さらにインターフェースなど改善の余地がある部分に磨きをかけました。

−「akaBot」は比較的後発のプロダクトではありますが、すでに出回っている製品の「よさ」「悪さ」を知っているので、むしろ強みになってくるのですね。

ザップ:これまでの経験でわかったのは、他社のRPAツールでは、マイクロソフトが提供する「.NET Framework」を使って開発・実行するアプリケーションや、自社業務向けに作り込まれたシステムに対応できないケースが少なくないということです。

そのようなロボットが苦手とするシステムを使用している場合、RPAに対して決して複雑な処理を求めているわけではないのに、残念ながら適用を諦めざるを得なかったユーザーもいます。

そこで「akaBot」は、「.NET Framework」との親和性があるツールにしました。特に使用できる変数の型については、.NETで使用可能な全てのタイプをサポートしているのがユニークだと思っています。

アイン:日本市場での提供を開始するにあたって、もちろん日本語へのローカライズにも力を入れました。また、導入検討から始まり、開発、運用まで一連のプロセスで必要なサービスを、要望にあわせて提供できる柔軟さが求められることも承知しています。

さらに踏み込んで、RPAだけで効率化できない場合にはアウトソーシングを含めた提案や、RPAが稼働しやすいように業務システム全体を改修する知識と経験、さらに技術力も必要です。

FPTジャパンホールディングスは2005年に日本法人として設立し、これまで企業のシステムをフルサポートしてきた経験もあるので、日本のビジネス習慣も理解し、ワンストップでスピーディーにRPAを導入する際の要件を提供できる体制が整っています。業務アプリケーションに対して、RPAとの親和性を持たせるためにアドオンを開発した実績もありますし、場合によっては「akaBot」のカスタマイズまでも相談できます。

ハードルの高かった銀行の送金業務に適用されるロボット事例

−「akaBot」は、どのような企業での採用が進んでいますか。

ザップ:多くのツールと同じように、業界に関係なく使われているのですが、ぜひご紹介したいのが金融機関での事例です。ある大手銀行では、手作業で処理していた送金業務を「akaBot」で自動化することができました。これは、データに不備や不整合がないことの検証、実際の取引の実行、取引実行結果や履歴データの保存といった、一連の送金プロセスを自動化するものです。

−金銭を扱う業務は、もし入金額や送金先が異なるなどのミスがあると、利用者や取引先に多大な迷惑をかけてしまう業務です。RPA利用の先駆的な事例だと思いますが、勇気が必要だったのではないでしょうか。

ザップ:もちろん重要な業務ですから、慎重に開発とテストを行いました。さらに、RPAを導入することにより、銀行における業務プロセスの変更も大幅に必要となりましたが、導入先から積極的なサポートをいただいたことにより、この大きな課題も解決することができました。その結果、手作業より精度が向上し、処理時間や労力も大幅に削減することに成功しています。具体的には、1件当たりの処理時間が10分程度かかっていたところ、ロボットで自動化したところ2分未満へと80%の短縮。必要となる人員は約6割削減。作業精度は約2倍向上。加えて、24時間365日の送金も可能となり、顧客満足度が大幅に向上しました。

「akaBot」トライアル期間は2カ月。より多くの企業にRPAを体感してもらいたい

−最後に、「akaBot」のこれからについてお聞かせください。

アイン:より支持されるRPAを目指して、改善を重ねていきます。たとえば当社では、RPAの価値をよく理解してもらえるよう、トライアルは 2カ月間という十分な期間を設けています。これは、1カ月でロボットを開発し、1カ月間で効果を判断できるようにするためです。

合わせて、その間には、できるだけフィードバックしてもらうようお願いしています。いただいたフィードバックについては、毎週グローバルの関係者でミーティングを実施し、要望への優先順位を決めながら、早いペースで改善を図っています。

ザップ:現在のakaBotは、まずは基本機能を重点的に実装し終えた状態です。今後のロードマップでは機能拡充を予定しており、来年には、アドバンスの機能を追加するとともに、すぐ使い始めることができるクラウドでの提供も現在準備を進めています。

これからも、機能、価格、そして展開の総合力で、あらゆる企業にとって投資対効果のあるRPAを届け、貢献したい。これまでRPAが必要なのに届いていなかった企業に届けることが、私たちの使命だと考えています。

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