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6割以上が「信頼できるのは上司よりもロボット」、マネジャーの役割とは

日本オラクルが発表した「職場におけるAI(人工知能)」に関する調査結果によると、「マネジャーよりもロボットを信頼する」と回答した割合は64%に上った。マネジャーに新たに求められる役割とは。

» 2019年10月30日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 業務の自動化やデータから新たなインサイトを得る目的でAIに関心を抱き、実際に活用する企業が増えている。オラクルが2019年7月2日〜8月9日に、米国、英国、フランス、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、ブラジル、日本における、従業員やマネジャー、人事部門リーダー(合計8370人)を対象に、職場におけるAI利用に関する年次調査を実施した。本調査は今回が2度目となる。その結果、この1年でAIの利用率が向上したことが分かった。

 それだけでなく、回答者の64%は「信頼できるのは上司よりもロボット」と回答するなど、AIが職場の人間関係を変化させているという。今後、マネジャーに期待される役割とは何か。

約25%の従業員は、AIとの関係を「愛情にあふれている」と回答

 現在は、どれほどの企業がAIを活用しているのだろうか。調査によると、「職場で何らかの形でAIを利用している」と回答した割合は50%だった。2018年に実施した調査では32%であったが、この1年で職場でのAIの利用率が18%も向上したことになる。この状況を受けてオラクルは「AIが存在感を高めている」と見ている。この結果を国別に見ると、AIの利用率が特に高かったのが中国(77%)とインド(78%)で、フランス(32%)や日本(29%)の2倍以上の利用率を示した。

 さらに、AIに対する職場の受け止め方を聞いた項目では、約65%の従業員が職場でのAI採用を好意的に受け止め、約25%はAIとの関係を「愛情にあふれ、満足にいくものである」と回答した。

特にAIの利用率が高い中国とインドではAIの導入に対して好意的であり、インドでは60%、中国では56%の従業員がAIの導入に肯定的だった。その他、UAE(44%)、シンガポール(41%)、ブラジル(32%)、オーストラリア/ニュージーランド(26%)、日本(25%)、米国(22%)、英国(20%)、フランス(8%)が続いた。

 男女別に結果をみると、男性の32%、女性の23%が、職場のAI導入に肯定的だと回答した。

64%が、信頼できるのは上司よりもロボットと回答

 AIは、従業員とマネジャーとの関係にも影響を与えていることが分かった。「マネジャーよりもロボットを信頼する」と回答した割合は64%で、「マネジャーよりもロボットにアドバイスを求める」とした割合は回答者の半数に上った。さらに、回答者の82%が、マネジャーよりもロボットの方が物事をうまくこなすと考えていることが分かった。

 国別に結果をみると、マネジャーよりもロボットへの信頼度が高いのは、インド(89%)と中国(88%)。次いで、シンガポール(83%)、ブラジル(78%)、日本(76%)、UAE(74%)、オーストラリア/ニュージーランド(58%)、米国(57%)、フランス(56%)、英国(54%)の順だった。

 ロボットがマネジャーより優れている点として、「偏見のない情報の提供」(26%)、「作業スケジュールの維持」(34%)、「問題解決」(29%)、「予算管理」(26%)。一方、マネジャーがロボットよりも優れている点としては、「従業員の感情の理解」(45%)、「従業員の指導」(33%)、「職場文化の創出」(29%)が上位に挙がった。

若い世代ほどAI利用におけるセキュリティのリスクに敏感

  AIに関するエクスペリエンスについて尋ねた項目では、「より優れた操作性を求める」と回答した割合は34%、「ベストプラクティストレーニングを求めている」と回答した割合は30%、「行動に合わせてパーソナライズされたエクスペリエンスを求める」とした割合は30%だった。

 一方、職場でのAI利用を遠ざける理由を聞いた質問では、「セキュリティ」(31%)と「プライバシー」(30%)が挙がった。この傾向は若い世代ほど顕著で、職場でのプライバシーやセキュリティを懸念すると回答した割合は、「ジェネレーションZ」(1997年以降に生まれた人口層)が43%、「ミレニアル」(1981〜96年に生まれた人口層)が45%だったのに対して、「ジェネレーションX」(1960年代半ば〜70年代に生まれた人口層)は29%、ベビーブーマー(1946年〜1960年代半ばに生まれた人口層)は23%だった。

 オラクルで人材管理クラウド・ビジネス・グループ担当シニア・バイスプレジデントを務めるエミリー・ヒー(Emily・He)氏は、「機械学習と人工知能に関する技術が急速に進歩し、人々が技術やチームとやりとりする方法が大きく変化している。職場では、人間と機械の関係が見直されており、この課題にうまく対応できる汎用(はんよう)型のアプローチは存在しないことが、今回の調査で分かった。企業は、人事部門と連携して職場にAIを導入するアプローチをパーソナライズする必要がある」と述べている。

 また、今回の調査を共同で実施したFuture Workplaceでリサーチ・ディレクターを務めるダン・ショベル(Dan・Schawbel)氏は、「職場にAIが導入されたことで、従業員がより楽観的になり、それを人事部門が先導していることがこの2年間で分かった。2019年の調査は、AIが従業員とマネジャーの関係を変化させるだけでなく、AI主導の職場でのマネジャーの役割も変化させていることを示す。調査結果に基づけば、マネジャーは、人間としてソフトスキルの使用に注力し、技術的なスキルや定型業務をロボットに任せられれば、将来も関係を維持できる」と述べた。

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