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IT資格の取得状況(2019年)/前編

前編では、「現在保有している資格」「今後取得したい資格」「注目している資格」などを読者に尋ねた。2018年の結果と比較すると、資格の保有動向に変化があった。あえてIT関連以外の資格にも注目が集まるのはなぜか。読者調査からIT資格のトレンドを読み取った。

» 2019年12月05日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2019年11月5日〜21日にわたり、「IT関連の資格保有に関するアンケート」を実施した。全回答者数194人のうち、情報システム部門は29.9%、製造・生産部門が19.1%、営業・販売・営業企画部門が13.9%、経営者・経営企画部門が7.2%などと続く内訳であった。

 今回は、IT関連資格の「保有状況」や「資格取得の目的」「今後取得したい資格」「現在、注目している資格」など、資格取得の現状や考え方を把握するための質問を展開。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

2018年と比べ、2019年は資格の取得傾向に変化

 人が持つ技術力やノウハウなどは、表からは見えにくいものだ。特にITスキルについては、実際にプロジェクトで仕事をしてみなければ技量を計れないところもある。自らが持つ技術力やスキルを可視化する手段の一つに、資格がある。例えばプロジェクトにアサインするメンバーを選出するとき、人選の指標にもなり得る。このように、資格はその人の技量を示す“名刺”のような役割を果たす。本調査では、資格の中でもIT関連の資格に焦点を当て、資格の保有状況を読者に尋ねた。その結果を見ていこう。

 はじめに、IT関連資格の保有状況を知るために読者に対して資格の保有有無について尋ねたところ、全体の73%が何らかのIT資格を「保有している」と回答した(図1)。この結果を、年代別で見ると、40代前半が86.4%、40代後半が83.8%となり、40代の資格保有率が高い傾向にあった。

図1 IT関連資格の保有有無

 保有する資格について尋ねると、取得割合の高いIT関連資格は、1位が「基本情報技術者」56.2%、次いで2位は「応用情報技術者」27.4%、3位「ITパスポート」16.4%、4位「情報セキュリティマネジメント」13.7%、5位「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」11.6%と続いた(図2)。

 この結果を2018年に実施した調査と比較すると、上位に国家資格がランクインする傾向に変わりはないが、「情報セキュリティマネジメント」や「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」といった情報セキュリティ分野の資格取得割合が増加傾向にあった。代わりに「ネットワークスペシャリスト」や「ITストラテジスト」などの取得率は減少傾向にあった。

 増え続けるサイバー攻撃や情報漏えい事故などによって企業が受ける被害が深刻さを増す中、サイバーセキュリティの対策強化に向けた専門人材の確保を喫緊の課題と捉えている企業も少なくないことが、調査の結果から読み取れる。

図2 保有しているIT関連資格

「自分のため」か「会社のため」か、資格取得の目的は?

 全体の8割が何らかのIT関連資格を保有する状況が明らかになったが、資格に対して何を求めているのだろうか。次に、「資格を保有する理由」について尋ねたところ、「自己啓発やスキルアップのため」が最多で84.2%、次いで「実務で必要なため」24.0%、「会社で取得を推奨もしくは義務化されているため」22.6%と続いた(図3)。自身の「学びたい」「スキルアップがしたい」といった内発的なモチベーションを動機として資格を取得する層が多いようだ。

図3 資格取得の目的

 一方で、実務で必要に駆られたり昇給や転職に生かせたりするなどの外的理由も、当然資格取得のモチベーションにつながってくるだろう。次に「資格を取得する際に重視するポイント」について尋ねたところ、「スキルアップにつながるかどうか」が67.1%と1位ではあるものの、2位以下は「実務に生かせるかどうか」57.5%、「取得のしやすさ、難易度」37.7%、「資格の知名度」34.9%、「会社で資格手当が支給されるかどうか」26.0%と続いた(図4)。

 昇給などに有利に作用するよう人材価値を上げるためなど、外発的な動機によって資格取得を目指す層も一定層存在する

図4 資格を取得する上で重視するポイント

あえてIT関連外の資格を これからを生き抜く専門スキルとは

 ここまでは保有する資格や資格を取得する理由などについて触れてきたが、資格保有者は今後どの資格を狙っているのだろうか。

 今後取得予定のIT関連資格について尋ねたところ、「ネットワークスペシャリスト」と「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」が同率首位で18.3%、次いで「AWS認定各種」15.8%、「情報セキュリティマネジメント」15.0%、「ITストラテジスト」と「G検定」14.2%と続く結果となった(図5)。

 これを2018年に行った前回調査と比較したところ、「AWS認定」や「Google認定」といったクラウド関連資格や「RPA技術者検定」「G検定」といったRPA(Robotic Process Automation)、ディープラーニングに関わる資格の取得予定率が急伸していた。これらの項目は前回調査で「注目している資格」としてフリーコメントで寄せられる程度だったが、この1年で取得を目指すほど需要が増していることが分かった。

図5 今後取得したいIT関連資格

 関連して、現在注目しているIT関連資格や検定についても聞いた。

 目立ったのはやはりクラウドやAI(人工知能)、RPAに関わる資格で、国家資格だけでなく民間資格も含め依然として注目度が高い。また「転職先は国内企業とは限らないので、海外のIT関連資格について考えている」など、海外でのキャリアも見据えて資格や検定の取得を検討している層もいた。

 注目したいのが「統計検定2級以上を取得し、データサイエンティストやアナリスト業務に就きたい」など、あえて“IT関連外”の資格の取得を目指す声である。つまりITに直接関連した資格を取るのではなく、他の分野の知識を取り入れた上でIT関連スキルと掛け合わせることにより、いっそう専門的な人材を目指すといったキャリア像を語る層が一定数見受けられた。

 これは技術革新により市場環境がめまぐるしく変化する現代において、「1つの専門スキルがいつまで通用するか」の予測が難しくなってきたことなども背景の一つにあるのだろう。こうした社会で今後需要のある人材像を考えた時、複数分野で専門性を持つことが一種の“保険”にもつながり、他にはない専門スキルになると考える方が増えてきているのかもしれない。

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