アクセンチュアが日本を含む20カ国、8300社以上を対象にIT活用状況や組織への浸透度の実態調査を実施した。イノベーションの推進に成功している企業の特徴が明らかになった。
デジタルトランスフォーメーション(DX)実現の取り組みの一環としてIT活用を視野に入れることが広がっている。イノベーションの推進に成功する企業とそうでない企業にどのような違いがあるのか。アクセンチュアが日本を含む20カ国、8300社以上を対象に実施した調査によれば、業界をけん引する企業の多くに共有するIT活用の方法や考え方があることが分かった。
調査は、「テクノロジーの導入状況」「テクノロジーの活用度」「組織文化への浸透度」に関して企業のスコアを算出し、上位10%を先行企業、下位25%を出遅れ企業と定義した。2015年から2023年(予測値)の業績評価指標に基づいて、IT活用と業績との関係を分析した結果、先行企業は出遅れ企業に比べて2倍以上の収益成長率を実現できていることが判明したという。
2018年に限れば、出遅れ企業は年間で15%の増収機会を失った。アクセンチュアはIT活用方法を変えない限り、2023年には46%の増収の機会を失うだろうと分析する。
では、先行企業のIT活用は何が違うのか。調査では、先行企業は人間とマシンの協働によって新たな価値を生み出すための次世代システムを構築しているとする。このシステムは「境界線がない」「適応力に長ける」「人間と調和する」という特徴を持つ。
先行企業は、ITシステム間や企業間の境界線を取り払い、自律的な学習と改善、環境変化への順応が可能なシステムを構築することで従業員が迅速かつ的確な意思決定に貢献できるようにしている。
具体的には先行企業の98%がAIを導入しているが、出遅れ企業は42%まで下がる。先行企業はデータやインフラ、アプリケーションなどを機能ごとに切り分けるソリューションを導入する割合も高い。
AIやアナリティクスを効果的に利用するために、先行企業はクラウド活用を積極的に進めている。先行企業の95%が「イノベーションの源泉としてクラウドを捉えている」と回答するが、出遅れ企業は30%だ。先行企業は取り扱うデータの信ぴょう性や公平性にも留意して、94%がデータ品質を確保するための対策を講じている。
人材育成の面でも先行企業と出遅れ企業の間に約3倍の差がある。先行企業の73%は従業員に対して体験型学習プログラムを提供するが、出遅れ企業は24%にとどまる。先行企業は従業員のスキルに応じた学習プログラムを提供し、スキル向上に対するニーズ予測やトレーニング内容のマッチングなどにもAIやアナリティクスを活用する。
アクセンチュアでテクノロジーサービスの最高責任者を務めるバスカー・ゴーシュ氏は以下のように分析する。
「企業は、単に個々のソリューションとしてテクノロジーを導入するのではなく、自社が構築すべきシステムの全体像を描くことで、収益と利益それぞれにおいて他社をしのぐ成長を遂げることが可能になる。そのためには境界線がなく、適応力を持ち、人間と調和が可能なシステムの全体像を描くことから始める必要がある」
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