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Webベースとクラウド対応で何が変わる?──「オートメーションの未来を拓く」新・Automation Anywhereの全貌に迫る

» 2019年12月19日 10時00分 公開
[加藤学宏RPA BANK]

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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)製品においては、その特徴として「Web」「クラウド」といったキーワードを目にする。だが、Webブラウザで利用できるものの機能が制限されているなど、価値を引き出しきれない不完全な印象の製品があるのも事実だ。

広くITサービスにおいて主張される「Web」「クラウド」の特徴を再確認しよう。システム環境構築やメンテナンスが不要であり、エコシステムによって他社の機能を簡単に取り入れられる柔軟性がある。また、ユーザーはWebブラウザさえあれば、どこからでもすぐ利用できる。ハードウェアからシステムを丸抱えする従来のアーキテクチャに比べて、総保有コスト(TCO)を抑えられるケースが多いとされ、立ち上がりも早いことから、ここ数年で急成長しているサービス形態だ。

本来あるべきITの常識と、RPAのギャップを指摘しているのだろう。このたび、「真のWebベースで、クラウドに対応」と強調するRPAの新製品が発表された。Webであること、クラウドであることにより、RPAの何が変わりどのような恩恵を受けることになるのだろうか。

発表したのは、グローバルで3,100社を超える顧客を持ち、そこには世界に名だたる企業も多く名を連ねるAutomation Anywhereだ。これにあわせて「遂にベールを脱いだ!次世代RPA x AI Automation Anywhere『Enterprise A2019』でオートメーションの新時代を拓く」と題したセミナーが、10月28日に都内で開催された。新機能で何が変わるのか、そしてどのような手法がよりよい成果につながるのか。セミナーの模様をお伝えする。

前半では、デジタルトランスフォーメーションを支援するジェンパクトによる基調講演、コニカミノルタジャパンの取り組み事例を紹介する特別講演が行われた。後半にはAutomation Anywhereの最新製品「Enterprise A2019」の機能が紹介され、続いてソフトバンクグループの主要企業SB C&Sが自社におけるRPA導入の過程を明らかにした。

<目次>

  • 1.導入後「拡大しない」3つの理由と、その対策
  • 2.「自走する」取り組みを実現したコニカミノルタのアプローチ
  • 3.月間4,000時間削減も目前のSB C&Sが明かす「導入初期の課題」と乗り越え方
  • 4.「Webベース」「クラウド対応」でRPAの課題に対応

導入後「拡大しない」3つの理由と「対策」

すでにRPAの導入は進み、7割以上の企業がRPAを利用しているが、50以上のロボットを導入済の企業はわずか4%にとどまっている。ジェンパクト株式会社 代表取締役社長 グローバルシニアバイスプレジデントの田中淳一氏は、企業の変革をサポートしてきた経験をもとに、導入拡大が進まない3つの理由と、その対策を次のように説明した。

1.業務標準化が進まず大きな案件(業務)がない

  • 「業務をトップダウンで分析し、対象業務を特定する」

田中氏は「多くの場合、現場にヒアリングを実施します。数百の業務が出てくるものの、『ルーチンワークかつ最初から最後まで意思入れがない業務』は、全体の数パーセントしか抽出できず、かつ小粒のものが大半になる-」と指摘。現場リーダーを集めて行うワークショップ型での業務選定や、トップダウンで段階的にRPA化の余地を探るアプローチが有効だという。

  • 「さらに業務に踏み込んで標準化」

これまではROIが見込める大きな単位での標準化を目指していたが、ボットストアなどで部品が提供されるようになり、状況は変わった。「フロー全体でなく、パーツ単位であっても十分ROIがでるようになったため、自動化できることは自動化します」(田中氏)

同氏は合わせて、このほかの課題と対策として

2.RPAが部分的な取り組みになっている十分ROIがでるようになったため、

3.RPAだけでできる改善効果が限られていることに対して、他のデジタル技術との連携

というものを挙げた。

RPAの活用を中心としたノンコア業務の自動化は、ジェンパクトが定義するデジタルトランスフォーメーションの第1段階だ。財務部門であれば、実務型業務領域を徹底的に効率化した後には、戦略型業務領域を強化していくことが求められる。それにともない業務スキルも変化するが、スキルチェンジの道筋をつけるのも組織の責務だ。

田中氏は「集まったデータを分析する能力が求められるようになりますが、急に上げられない能力であり、先を見据えて会社として上げていくことが必要です」と締めくくった。

ジェンパクト株式会社 代表取締役社長 グローバルシニアバイスプレジデント 田中 淳一 氏

「自走する」取り組みを実現したコニカミノルタのアプローチ

オフィスソリューションなどB to B領域で事業を展開するコニカミノルタジャパンは、2018年度からRPAの本格展開を進め、年間2万時間以上の業務効率化を実現しているという。

よく導入時の課題として「ツールが難しい」が挙げられるが、実際は「業務をどうアウトプットしていいか分からない」「ショートカットキーが分からない」など、RPA以外のスキル不足が多いそうだ。同社では相談できる「よろず屋」やコミュニティなどユーザーとのタッチポイントを増やし、離脱させない仕組みを構築することで自走できるようになった。

組織の課題は「文化(思想)」にあるという。トップダウンとボトムアップ両方のアプローチが必要で、不安を取り除くことや、業績評価につなげることも大切だ。

同社では、こうした経験をもとに導入支援サービスも提供している。コニカミノルタジャパン株式会社 Digital Workforce事務局の武藤崇志氏は、「『業務改革』よりも、『RPA』と言うほうが受け入れられやすい」と経験を紹介した。

コニカミノルタジャパン株式会社 Digital Workforce事務局 武藤 崇志 氏

月間4,000時間削減も目前のSB C&Sが明かす「導入初期の課題」と乗り越え方

SB C&S株式会社はソフトバンクグループの流通事業を担い、40万種類にも及ぶアイテムを扱う。それだけにオペレーションも複雑だが、売上高は年々増加する一方で販管費率は右肩下がり。業務見直しや在宅勤務の推進に加えて、ツールとしてAIとRPAの活用を推進した結果だ。FY18末では月間4,000時間超の工数削減を見込む。

同社の先端技術推進統括部 統括部長 竹田吉樹氏は、当初3カ月程度で課題に直面したといい、「取り組むかどうかを議論していたなら、それだけで3カ月が経ってしまったでしょう」と前向きに振り返る。それよりも体験を得た価値のほうが大きいという。

課題と対策は、こうだ。「統制」はIT部門の管理下で全社統制を行い、優先順位の先頭に業務見直しを位置づけた。「技術」はサーバー管理型RPAで集中管理を実施し、開発や管理が容易なツールを選定。「人」の課題は、新たな仕事への挑戦につなげることや、現場の成功体験といった動機付けで克服していった。

SB C&S株式会社 先端技術推進統括部 統括部長 竹田 吉樹 氏

「Webベース」「クラウド対応」でRPAの課題に対応

オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社の岩名健二氏は冒頭、「RPAは内製化が可能でなければ広がりませんが、実際には困難な製品が多いものです。結果的に外注することになり、『いいベンダーを探さなければ』『費用がかかる』『メンテナンスが大変』という悩みの声が市場から聞こえます。それを大きく改善するのがAutomation Anywhere『Enterprise A2019』(以下、A2019)であり、オートメーションの新時代を拓く製品です」と新製品について自信を見せた。内製化でRPAを普及させるためにAutomation Anywhereが設計で重視しているという『ビジネスユーザー』『開発者(開発スペシャリスト)』『IT(RPA管理者)』の視点から、詳しく見ていく。

ビジネスユーザーの視点

A2019ではBotの開発から実行、管理まですべての機能がWeb化されており、プラットフォームを意識することなく、いつでも、どこでも利用可能だ。開発の一部だけをWebで行うものではなく、終始一貫Webで開発できる。「真のWebベース」を強調する最たる理由である。

前バージョンのAutomation AnywhereではBot開発時には専用のクライアントでリストコマンド型の画面だったが、A2019では全てがWebブラウザベースになり、新たにフロービューが追加された。実務を行うビジネスユーザーにとってドラッグ&ドロップでコマンドをフロービューに追加していけることでビジネスロジックを確認しながらのロボット開発が行えるという点も大きな進化だと言える。

さらにレコーディング機能も強化された。Web、SAP、Citrixなど、タスクを実施したい環境が異なっても、1つのレコーダーで記録が可能だ。こちらももちろんWebブラウザから利用できる。

開発スペシャリストの視点

インラインスクリプトをネイティブサポートし、開発の幅が広がった。すでにあるPythonのコードをそのまま貼り付けて活用することも可能だ。

コマンドはプラグイン可能なアーキテクチャになっており、サードパーティによるコマンドの拡張性を持つ。Office 365やG Suite、自然言語処理(NLP)などのコマンドが用意される。A2019リリース後の半年はアクションを随時追加して機能を強化していき、その後は3カ月ごとに増やしていく考えだ。

「社内のプラグインも追加できるほか、Bot Storeにアクションを追加して販売することもできます。エコシステムでプラットフォームを充実させていく予定です」(岩名氏)

そのほか、WindowsやLinuxなど異なる実行環境でも追加コーディングなしで対応が可能になった。Excelがインストールされていない環境でも実行可能な機能が増えるなど、その他の自動化コマンドも大幅に強化されている。

RPA管理者の視点

RPAを企業内に浸透させていくために、課題になるのは「展開、拡張の容易さ」「セキュリティの確保」「総保有コスト(TCO)」だ。次の機能で解決が図られている。

まずは「展開、拡張の容易さ」だが、すべての機能がブラウザで利用できるため飛躍的に展開、拡張されるというのは容易に想像がつく。しかもBotの実行用インストーラーは、前バージョンに比べて7分の1になったとのこと。さらにクラウド版によりバージョンアップや追加のモジュールのインストールの必要がない、という点は、メンテナンスにかける時間を大幅に下げることができる。総保有コスト(TCO)を劇的に下げることが可能だ。

クラウドになることにより懸念される「プライバシー」、「セキュリティ」についても万全だ。A2019では「プライバシーファースト」をキーワードに、Botに対し、データを外に出すように指示しない限り、お客様の環境の外に個人データが出ることはない仕様になっている。IT管理者の下できちんと管理されるということだ。

前バージョンでも評価の高かったセキュリティについては、A2019は、データ保護のために暗号化を使用するのと同様に、法的なセキュリティに関するコンプライアンス規定順守の要件をさらに上回るように設計されている。SOC2環境, PCI, GLBA, GDPR, FISMA(フィスマ), OWASPなど現状考えうる様々な要件に対応している。

また、クレジット、金融など業界団体や政府が定めた主要な規制要件に対応している。もちろん、ネットワークと保存データには強固な暗号化を施す。「ISO20001についても、年内に取得予定です」(岩名氏)

全体を見ると、新機能によって開発や管理・運用がしやすくなり、ビジネスユーザー、開発スペシャリスト、RPA管理者と、企業全体で総保有コストを削減できる仕組みであることがわかる。Bot StoreやAIを利用できるエコシステムの充実は、基調講演でジェンパクトの田中氏が挙げた、RPA利用拡大のための解決策に合致するものでもある。

最後に岩名氏が強調したのはアナリティクス機能「Bot Insight」だ。統計を取る機能だけでなく、管理者が見たい数字を見やすく分析。ビジュアル的にわかりやすいグラフ表示で、さまざまなグラフで切り口を変えて見ることができる。コニカミノルタの武藤氏が業績評価の重要さに触れていたが、「成果をアピールしづらい状況がある場合にも役立てられる」(岩名氏)とのことで、RPAで変え続ける風土づくりにも生かせそうだ。

無償利用できるコミュニティエディションも同機能でリリースされるということなので、この進化をまずは触って確認してみたいと思わせる発表であった。

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