メディア

企業におけるSaaSアプリの利用状況(2019年)/後編

不満の声も聞こえるSaaS利用企業の現場からは使い勝手などに不満の声も聞こえる。では実際のところ、現場に定着できているのだろうか。意外にも業務効率化とは無縁の回答者の存在も。既存SaaS活用の戦略も聞いた。

» 2020年01月16日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2019年12月6〜20日にわたり、「業務でのSaaSアプリ利用状況」に関するアンケートを実施した。全回答者数110人のうち、スタッフ職相当が39.1%、係長・主任職相当が22.7%、課長職相当が18.2%、部長職相当が9.1%、経営者・役員相当が4.5%といった内訳であった。

 今回は業務で利用するSaaSの「定着率」や「業務効率の改善状況」「他アプリやシステムとの連携状況」などのを紹介する。なお、グラフ内で使用する合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

不満噴出のSaaS、現場の定着度合いは? 現場の意外なホンネ

 前編では、社外でPCを使った業務を中心にSaaSを利用する企業が53.6%と過半数まで広がっていることなどを紹介した。後編の今回はSaaSの導入効果や今後の利用展開などについてSaaS利用者を中心に調査を行ったので紹介していこう。

 はじめに、利用しているSaaSについて現場でどのくらい定着しているのかを尋ねたところ69.4%が「ほぼ定着している」と回答した。これに「十分に定着している」12.9%を合わせると82.3%となり、SaaS導入企業では8割を超える定着率であることが分かった(図1)。

1 社内のSaaSは現場に定着しているか

 前編では「オフラインで使えない」「ライセンスが高い」「機能を使い切れない」といった利用者からの不満も聞かれたため導入するまでの不安や抵抗感、定着に課題を抱える企業も少なくないと推察されるが、実際のところは、その壁を乗り越えて導入してみると継続利用に至る企業が意外にも多いといった実態が見えてくる。

導入企業に聞く、SaaS導入効果の本当のところと「無風」の人々

 SaaSの採用で利用者が期待する効果は「業務効率の改善」だろう。そこでSaaSの導入で業務効率が改善されたのかどうか聞いた。以降では回答者別に業務効率の実際を見ていく。

2 SaaSの導入で業務効率は改善したか

 「効率がやや良くなった」61.3%、「変わらない」32.3%、「効率が非常に良くなった」3.2%と続いた(図2)。まとめると64.5%が業務効率の改善を実感しているということになる。そこで、次にその理由を自由回答で聞いた。

 「効率が改善された」とした回答者からは「社外で利用できるようになった点は間違いなく効率が上がった」「電話や会議の代わりにSkypeを使うことで移動が減り、事前の在籍確認で取り次ぎが少なくなった」といった「場所に捉われない働き方」にメリットを感じているとの意見が多く挙げられた。

 システム管理者の立場からは「自社で機器管理の必要がなくなった」「サーバーのメンテナンスがほとんどいらなくなったので業務が効率化された」など、SaaS利用によりシステム管理の負荷軽減に繋がっているとの回答が目立った。

 その他に注目すべきは「一種のBPO(Business Process Outsourcing)として機能させている」「専門家を必要としなくなった」などの声で、運用や保守、営業支援、経理業務などをSaaS側の機能やサービスで補う側面を評価する声が挙がった点だろう。

SaaSだからといって全てが良くなったわけではない

 一方で約3割の回答者はSaaS利用について以前と「変わらない」と回答した。その詳細を見ていくと、「(場所を問わずに)アクセスしやすくなったが、ページ遷移で時間を取られる」「仕事量自体は減らない」などが挙げられた。

 通信環境やセッション数にもよるが、ページ遷移で待ち時間が生じてしまう問題は、帯域が細い環境で業務を進める必要がある場合、大きな問題となるだろう。特に、Wi-Fiやキャリア回線が十分に届かないフィールドで業務を進める可能性がある従業員がいる場合は、SaaSを全社展開する前にオフラインでの作業効率も検証する必要があるだろう。

 社外作業がない従業員にとってはSaaSであれオンプレミスの業務アプリであれ、業務そのものの負荷が軽減されないケースも考えられる。こうした方々にとってSaaS導入に納得感を持ってもらうには、自動化などのSaaSならではの業務効率化機能を盛り込むことも検討できるのではないだろうか。

利用中SaaS、今後さらに改善するには?

 複数のアプリケーション連携が容易に実現できる点もSaaS利用のメリットの1つだろう。Web APIを利用したアプリ連携によりSaaSが活用できる業務範囲は広がり、よりコアな業務に経営資源を集中させることができるようになる。そこでSaaS利用者に対し他のアプリや業務システムとの連携有無を尋ねたところ「特に連携はしていない」が62.9%と過半数で、次いで「社内の業務システムとSaaSを連携して使っている」24.2%、「SaaS同士で連携して使っている」12.9%となった。

 具体的にはどのようなアプリ連携があるのだろうか。参考に今後SaaSと組み合わせて利用したいツールやサービスを聞いたところ「RPAを使った操作の自動化」40.3%、「申請などの社内ワークフローツール」29.0%、「AI音声認識による音声のテキストデータ化」27.4%が上位に挙がる結果となった(図3)。

3 SaaSと組み合わせて利用したいツールやサービス

 SaaS連携により定型業務の工数軽減に有効な仕組みを構築したいといったニーズが多いようだ。例えば勤怠や経費精算のSaaSと社内ワークフローシステムとを連携させれば、社外からでも申請業務が完了し多くの企業で毎月直面しているであろう経費精算業務の工数を軽減できる。AIによる音声のテキストデータ化もコンタクトセンターを中心とした顧客対応業務などで、膨大なお問い合わせをAIで分析しFAQの精度を向上させることで、お問い合わせへの自動対応やお問い合わせ自体を削減することに繋げられるだろう。今はまだ全体の4割ほどであるSaaS利用者の他アプリ連携だが、前述したケースを含め成功事例が多く広まっていくことで、社内業務システムとの連携はもちろんSaaS間での連携は今後より進んでいくものと見られる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。