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RPAの効果は無料で実感できる! 無料でも理解が進む用途別ツールを紹介<2020年度版>

» 2020年01月17日 10時00分 公開
[大森新也RPA BANK]

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANK

 大手企業を中心にRPA(ロボティック・プロセスオートメーション)の導入が本格的に進み始めている。従来は人間しかできないと考えられていた作業を、ソフトウェアに代行させる業務改革手法である。

 三井住友FGはRPA導入によって年間200万時間以上の作業を削減した。ソフトバンクグループも人工知能(AI)を絡めることで、年70万時間以上減らしたという。(※1)しかし、RPAの導入を検討したいものの、自社にとっての効果がイメージできないという意見があるのも理解できる。そこで、最初は無料ツールで試験導入し、ある程度の手応えを得てから、高度な活用へとステップアップするという方法をとるのが現実的な進め方ではないだろうか。

 この記事では、企業のRPA導入への挑戦をサポートするために、目的と連携ツールのキーワードごとに、無料でトライアルできるRPA導入ツールを紹介する。さらに、OCR(光学的文字認識)やAIを組み合わせたものなど、導入目的ごとに発展系への足がかりとなる活用方法にも踏み込んで解説していく。

■記事内目次

  • 目的別で無料トライアルできるRPA
    • 業務の可視化/分析
    • トライアル/PoC
    • 開発サポート
    • 運用サポート
    • ワンストップ
    • 働き方改革
  • 連携ツール別で無料トライアルできるRPA
    • RPAプラスOCR
    • BPM
    • RPAプラスAI
    • エクセル連携

目的別で無料トライアルできるRPA

 RPAを導入する背景には、効率の悪い業務を可視化し、分析することで改善したい、新しい取り組みを実践するためにPoCを実施したいなど、企業ごとにさまざまな事情がある。RPAはこれまでになかった解決策として、注目されている。

業務の可視化/分析

 RPA活用の典型的な活用方法と言えるのが、業務の可視化や分析と言える。たとえば、新規顧客などを審査する次のような作業があったとする。店舗から送られてきた申請書から、複数のアプリケーションを用いて顧客情報や審査に必要となる情報を照会する。担当者が照会結果を見ながらアプリケーションにコメントを入力し、最終承認者はそれを確認して、審査内容を確定するといった作業だ。

 この一連の作業をRPAツールに記憶させることで、業務が可視化されるだけでなく、ロボットによって自動化されるのである。ただし、この例では、RPAを導入する作業と人が確認する作業のつながりを上手に組み込めなかったことで、かえって作業効率が悪化するといった事態も考えられる。ツールの導入は決して単純ではないことは理解しておく必要がある。

 こうした業務の可視化を実施するツールの1つとして「BizRobo」がある。RPAテクノロジーズが提供するサーバー型RPAの代表的なツールである。BizRoboには、無料トライアルとして3つのパターンが用意されている。サーバー型のBizRobo! Basicのほか、クライアント型のBizRobo! Mini、情報入力プラットフォームのBizRobo! Paper-freeをいずれも1カ月間無料で利用できるようになっている。

業務の可視化/分析で無料トライアルできるツール例

  • BizRobo
  • myInvenio

トライアル/PoC

 トライアルやPoC(概念実証)でRPAを使う例も多い。PoCとは、新たな技術を利用したり、商品として販売する前に、そのコンセプトに効果があることや実現可能性などを検証したりすることである。たとえば、医薬品業界では、臨床試験の一環として、少数の患者に投薬し、データを収集して効果や安全性を確認するというPoCを実施する。

 RPA導入でも、このPoCが重要になってくる。RPA導入は大きく準備フェーズと本格導入フェーズに分かれる。準備フェーズでは、全体計画策定、机上検証、PoC、評価修正というプロセスを踏むのが一般的だ。RPAは、目的となる課題を解決するための手段としてふさわしいのかを判断しなくてはならないからである。この際も、入り口としてRPAの無料ツール導入が選択肢になる。

 トライアルやPoCで注目されるツールの1つがD-Analyzer(業務自動分析ツール)である。社内の全業務ログを自動収集後、ログを分析して業務フローを自動抽出し、RPA導入前後の業務効率化の効果を測定するという機能が特徴だ。こちらも、無料の製品デモやトライアルプログラムを、メーカーなどが用意しているので確認しておきたい。

トライアル/PoCで無料トライアルできるツール例

  • D-Analyzer
  • UiPath Community Edition

開発サポート

 キリンホールディングスではRPA導入により、システム開発コストを8割削減したケースがあったという。社員の手作業をRPAが代行するという典型的な使い方に加えて、システム稼働後の追加開発をRPAで置き換えるという新たな発想を導入したのである。(※2)

 具体的には、社内システムからデータをダウンロードし、帳票を作成するロボットを作成した。RPAとエクセルマクロを連携させたものだ。この取り組みで、開発コストを8割減らし、期間を半分に抑えることに成功したケースもあったという。

 こうした開発サポートについては、RPAの基本的な機能と重なるため、多くのツールで実現が可能である。国内で最も有力なツールの1つであるWinActorは、開発サポートを実施する際に2カ月にわたって無料で使えるサービスを提供している。WinActorは、エクセルのほか、ワークフロー、ERP(基幹業務システム)、OCRさらには個別のアプリケーションまで、操作手順を学習し、シナリオに沿って自動化できるのが特徴である。

開発サポートで無料トライアルできるツール例

  • WinActor
  • Automation Anywhere

運用サポート

 開発だけでなく、運用フェーズでもRPAが活躍するフィールドは広がっている。住友商事は2020年初に85の部署がRPAを導入しているという。RPAのロボットは360に上るとのこと。例えば、営業関連の与信管理業務をRPAで自動化した。ERP(統合基幹業務システム)であるドイツのSAP製ソフトウェアで手続きしていた業務をRPA化することで、所要時間を減らし、確認サイクルを短縮できたという。

 このあたりもRPAの典型的な活用法だが、得意とするRPAツールとして、米NICEがある。世界のRPAツールベンダーとして主要企業の一角を占めるNICEは、アナリティクス、ワークフォース最適化、ケースマネジメントなどの自社アプリケーションとうまく連携している。イタリアでクレジットカード、デビッドカードのコンタクトセンターを持つ企業の運用を支援するなど、幅広い企業が導入しているツールだ。

運用サポートで無料トライアルできるツール例

  • NICE
  • Coopel

ワンストップ

 RPAでは、導入にあたって計画・トライアル、シナリオ開発、ロボット運用、標準化といった流れの中で、PDCAを回す必要があるため、信頼のおけるパートナー企業にワンストップで支援してもらうことが、良い結果につなげるための1つの方法論になっている。

 システムインテグレーターのCACは有力なRPAツールであるUiPathの導入をワンストップで支援する「RPAワンストップサービス(※3) 」を提供している。UiPathの公式認定制度を取得した技術者が多数在籍しており、導入から実装、導入後の運用までを一括して任せられるサービスだ。

ワンストップで無料トライアルできるツール例

  • RPAワンストップサービス
  • akaBot

働き方改革

 昨今の働き方改革でも、RPAは注目されている。人がやっていた単純作業を自動化するという意味で、もともと働き方改革とは相性が良い。また、経理作業など単純でありながら、ミスが許されないといった精神的なプレッシャーから解放する特徴をRPAが持っているため、時間だけでなく仕事の質を良い方向に促すという意味からも注目されているのである。

 RPAという言葉の発祥元ともいわれるイギリス企業、Blue Prism(※4)もさまざまな企業の働き方改革を支援してきた。複数ロボットを制御し、複数の部門を横断してビジネスの効率を高めたり、監査証跡や権限の設定、内部統制の機能が充実していたりなど、高機能路線でのツールとして世界で広く受け入れられている。

働き改革で無料トライアルできるツール例

  • Blue Prism
  • COTOHA Meeting Assist

連携ツール別で無料トライアルできるRPA

 RPAは連携ツールを活用することで、より複雑な処理を実施することが可能になる。OCRと連携することで、紙ベースの大量データをデジタル化し、分析することで新たな知見を得られる。ここでは、AI、BPM、OCR、古典的案活用法とも言えるエクセルとの連携によるビジネス課題の解決策を紹介する。

RPAプラスOCR

 今最も注目されているのが、RPAとOCRの組み合わせである。膨大な紙資料を人が読み解くのは難しい中で、OCRであれば一定の精度を持ってデジタルの文字に変換してくれる。この作業をRPAが機械的に実施すれば、過去の大事な蓄積データを掘り起こし、分析し、現在のビジネスに役立つ情報へと変換できるのである。既に、LIXILやJ.フロントリテイリング、アフラックなどの企業が成功させている。(※5)

 導入成功のポイントはなんといってもOCRの読み取り精度である。OCRの領域では、Sikulix(※6 )Light PDF、OCR.Space、i2OCRなどフリーソフトウェアが提供されているのが特徴となっている。商用ソフトもCogent LabsのTegakiやPanasonicの帳票OCR Ver.8、ABBYYのFlexiCaptureなどさまざまな選択肢が用意されている。

RPAプラスOCRで無料トライアルできるツール例

  • Sikulix
  • OCR.Space

BPM

 BPMもRPAで劇的に改善する余地のある分野だ。NTT東日本の埼玉事業部は、RPAを実行する「埼玉ロボットオペレーションセンタ」を本格的に運用すると2020年の2月に発表した。同事業部では、RPAとBPM(業務プロセスマネジメント)を利用して、年12万時間に相当する回線開通業務の作業を削減するという。

 BPM分野のRPAで知られるのがクラウド型の業務プロセス管理システム (SaaS BPMS)「Questetra BPM Suite(※7)」である。ワークフロー図を描画することで業務システムを開発でき、コーディングは不要という。日常業務のデジタル化にとどまらず、無人化、自動化の推進を可能にする点を特徴として掲げている。こちらも60日間の無料トライアルプランが用意されている。クレジットカードの入力も不要だ。

BPMで無料トライアルできるツール例

  • Questetra BPM Suite

RPAプラスAI

 RPAプラスOCRと並んで、今後の大きな流れになりそうなのが、AIの活用であろう。RPAの期待は、従来の単純作業の置き換えから、デジタルトランスフォーメーションの実現を担うツールへと移り始めているからである。ロジックに従う単純作業が得意なRPAと、RPAが集めてきたデータをAIが分析して新たな付加価値を生み出すという流れを作れれば、適用範囲は業種を問わず幅広くなってくる。

 自動機械学習ツール「AMATERAS RAY(※8) 」は、為替レートや取引、投資プロジェクトなど、さまざまな分野で、専門的な予測をわずかな期間で実行できるようにするツールだ。これにより、意思決定の速度が上がり、仮説・検証のサイクルを何度でも繰り返せるようになるという。高度な分析をするためのデータの準備というフェーズで、RPAが力を発揮するのである。AMATERAS RAYは、無料トライアルはできないが、資料を無料で取り寄せられる。資料とともに、担当者に詳しく話を聞きながら、機能を把握してみたいところである。

RPAプラスAIで無料で資料取り寄せをできるツール例

  • AMATERAS RAY

エクセル連携

 RPAとエクセル連携はRPAの典型的な活用法の1つである。企業のPCやファイルサーバには膨大な数のエクセルが散在している。エクセルはその自由度ゆえに、個人が乱立させる傾向にあり、情報の分散という非効率を招いている側面もある。それらをソフトウェアロボットの力で掘り起こし、集計し、整理することのメリットは計り知れない。ERPなど、より体系的なソフトウェア導入の前段階としての役割も担うと考えられる。

 そんなRPAとエクセル連携を得意とするツールの1つがコピロボ(※9)である。入力帳票の品質向上、単純作業の負荷を軽減、エクセル業務の自動化で時間を創出するなど、RPAのメリットを最大化するツールとなっている。

 自社の課題や使用用途によって様々な運用が見込めるRPA。まずは無料で試してスモールスタートしてみることで、最適なツールを見つけてもらいたい。

(取材・文/大森新也 デザイン/lifebook 構成/RPA BANK編集部)

参考文献

日経クロステック『成功と失敗で学ぶRPA』、日経BP、2020年。

参考URL

  • CAC「RPAワンストップサービス」,https://cacrpa.com/,(2021/08/16)
  • Bule Prism「Blue Prism」,https://www.blueprism.com/japan/,(2021/08/16)
  • AutoWorker〜Google Apps Script(GAS)とSikuliで始める業務改善入門「【2020年最新版】Sikulixインストール・セットアップ方法!入門者向けに図説」,https://auto-worker.com/blog/?p=61,(2021/08/16)
  • QUESTETRA BPM SUITE「Questetra(クエステトラ)とは?」,https://questetra.com/ja/,(2021/08/16)
  • NSD ソフトウェアプロダクト「コピロボ」,https://www.products.nsd.co.jp/service/copirobo/,(2021/08/16)
  • aiforce solutions「AMATERAS RAY」,https://www.aiforce.solutions/amateras_ray/,(2021/08/16)

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