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言語AIのCOTOHAが「会議」の非効率を解決――NTTコミュニケーションズが考える一歩先の働き方改革

» 2020年03月12日 10時00分 公開
[加藤学宏RPA BANK]

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人のアシスタントとして、ソフトウェアのロボット「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」が活躍する場面が広がり、業務効率化が進んでいる。だが、RPAでは解決できない効率化領域は多く残っている。その一つが、人間同士のコミュニケーションだ。

特に会議は「無駄」や「非効率」が指摘されてきた。パーソル総合研究所などによる調査では、1,500人規模の企業における無駄な社内会議時間は年間9万2000時間、約2億円の損失に上るという。効果が高い対策としては、時間制限を設けることのほか、決定事項と次に行うタスクを明確化することを挙げる。

AIをはじめとする「データの活用を推進するサービス」を提供するNTTコミュニケーションズ株式会社では、およそ500社のアンケートを実施。中堅中小企業において特に負担となっているのは「議事録」の作成と共有、そしてタスクやアクションへとつなぐことだった。

こうした会議の課題は、AIによってどこまで解決できるようになっているのだろうか。議事録作成支援サービスを手がける担当者2人に、現在地と展望を聞いた。

■記事内目次

  • 「手軽」に「低コスト」でAIを活用して会議効率を向上
  • 単なる文字起こしではない、議事録作成の価値とは
  • 議事録作成にかかっていた手間を1/4に削減
  • 言語AIを活用するサービスで、働き方改革をもっと身近に

「手軽」に「低コスト」でAIを活用して会議の効率を向上

写真右からエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 AI推進室 白江麻菜氏、森口俊幸氏

―「働き方改革」を実現するために、企業のオフィスでは様々なテクノロジーの利用が進んでいます。同時に、人の働き方も場所や時間に縛られない働き方へと変わってきているようです。情報通信技術を活用した様々なサービスやソリューションを提供する企業として、どのような悩みやニーズを把握していますか。

白江麻菜氏(アプリケーション&コンテンツサービス部 AI推進室): 業務効率化に貢献するツールはたくさん登場していますが、最先端のテクノロジーはまだまだ価格が高いことや、導入時に工数を要してしまうなどの理由で、思うように導入が進まない企業が多いのが現状だと認識しています。特に、中堅中小企業は効率化のために取り組んでいますが、コストも人も、大企業に比べると改善のために割けるリソースは少ないのが実情だと考えています。

森口俊幸氏(アプリケーション&コンテンツサービス部 AI推進室): もし仮にそういった最先端のツールを導入できたとしても、業務フローが変わることでこれまでなかった作業が生まれてしまうと、かえって心理的な負担が大きくなってしまい結局は利用されなくなってしまいます。新たな仕事が必要となるサービスではなく、業務はそのままに作業を単純化することが求められていると考えています。

―確かに、最先端で高度なソフトウェアやシステムは、馴染むまで時間がかかる気がします。

森口氏: 働き方改革が注目を集めるなか、私たちは、こういったITツールの導入がなかなか進んでいない中堅中小企業の方々にも活用していただけるように、AIを使って「手軽」に「低コスト」で便利になるためのサービスを考えてきました。

―「手軽」に「低コスト」でAIを使えるのは嬉しいです。

白江氏: ありがとうございます。その為にも利用者や利用場所が制限されるようなものではなく、なるべく汎用的な普段業務に近い課題で、特に弊社が注力しているクラウドを活用して、低コストで解決させることができる領域を探してきました。そこで中堅中小企業のお客様を中心に約500社へのアンケート調査を実施しました。そのアンケート結果から、多くの企業が「会議中に議事録を書く」ことに悩んでいることが分かってきました。実際、議事録担当者になってしまうと議論よりも記録に注力するため、会議への参加が出来ていないことが少なくありません。会議後に録音から起こす場合でも、多くの場合は会議時間と同等以上の時間を必要とし、他の業務の妨げになっているようです。

―RPAの手も借りたい時代です。従業員の貴重な時間と工数を単純な作業に費やすのはもったいないですね。

白江氏: ビデオ会議などのコミュニケーションツールは多くのサービスが登場し、リモートワークなどを実現し、働き方改革に貢献しています。一方で、会議の内容の記録や共有については、効率化から取り残されてしまっています。AIで発言をリアルタイムにテキスト化するだけでなく、できるだけ手間なく議事録を作成できるようになれば、本来の業務により時間を使うことが出来るようになります。

単なる文字起こしではない、議事録作成の価値とは

―スマートフォンなどでは、AIでの音声認識機能が無料で利用できるようになりました。それでは不十分なのでしょうか。

白江氏: 音声からリアルタイムにテキスト化するという点だけに注目すると、そう思われるかもしれませんね。ただ、議事録の作成となるとちょっと変わってきます。既存のサービスではテキスト化が自動でできたとしてもボリュームが多く、読み返すだけでも大変な作業です。議事録では正確な記録が必要なだけでなく、そこから要点を抜き出して、決定事項や次回の会議に向けた宿題を誰がいつまでに行うのか、といった情報をまとめる作業も必要となります。

また、議事録を素早く共有できれば、参加者が次のアクションを起こしやすくなったり、意思決定までの時間が短くなったりと、議事録担当者だけでなくチームメンバーにも良い影響を与えることが期待できます。

このように、より広い観点で効率化するためには、単なる文字起こしだけではなく、議事録作成支援までできるサービスが必要なんです。

森口氏: すでに議事録作成用に会話の記録をサポートするクラウドサービスは存在しますが、価格や環境などの面で日常的に利用できる手軽さや、議事録の編集や管理・共有といった必要な機能がそろっていないのが現状です。

そこで弊社が提供するのが、インターネット接続端末とマイクがあれば月額5万円から利用できるサービス「COTOHA Meeting Assist」(以下、Meeting Assist)です。

−COTOHA(コトハ)の名前はきいたことがあります。

森口氏: COTOHAはNTTコミュニケーションズの自然言語に関するAIサービスの総称です。長年の研究によって、NTTグループでは日本語での高精度な自然言語処理や音声認識を実現する数多くのAI技術を持っています。これらの核となる技術を組み合わせ、発展させたのが当サービスです。

−「COTOHA Meeting Assist」特徴を詳しく教えてください。

森口氏: リアルタイムに発言音声をAIがテキスト化し、誰がどの順番で発言したかといった会話内容を自動で記録することができます。

さらにAIによるラベル付け機能によって膨大な会話記録の中から必要な情報を探しやすくなります。また、会議で決まった宿題事項はタスク管理機能をつかって担当者や期限を割り当てて進捗を管理することもできます。

−会議しっぱなしで終わることなく、ネクストアクションにつなげられるわけですね。

森口氏: そうなんです。議事録作成だけではく、会議の運営までしっかりサポートすることが大切です。このほかにも、翻訳機能を搭載しているので自動翻訳ツールとしても活用できます。グローバル化するなかで、さまざまな言語の参加者と会話する機会が増えていきますが、AIがリアルタイムに変換するので、言葉の壁を越えるのにも役立ちます。

−そこに通訳者がいるような使い方もできるのは便利ですね。

森口氏: 通信状況にもよりますが、人間が通訳するよりも速く変換できるので、より「同時通訳」ができます。実際に、私たちが出展した展示会でも海外からのお客様に対して、私が日本語で話した内容を各言語で表示するといった使い方もしていました。

議事録作成にかかっていた手間を1/4に削減

―他にも実際の利用シーンを教えてください。

森口氏: 

まず、私たちアプリケーション&コンテンツサービス部では、7人程度が集まるマネージャーMTG で利用しています。「議事録ではなく会議に集中できるようになった」という声が寄せられています。実際、これまではマネージャーの中から持ち回りで議事録作成を担当しており、場合によっては1時間以上かかることもあったため大きな稼働損失になっていたようです。

▼稼働削減イメージ▼

同じ場所に集まる会議だけではありません。本社オフィスと各拠点の保守担当者とをつないだ定例ミーティングでは、電話会議システムで話し合いながら、同時にMeeting Assistで記録しています。

また、私たちのチームでは毎日チームミーティングで情報共有しているのですが、時短勤務やフレックス勤務により時間があわないこともありました。しかし、Meeting Assistを利用することで自宅や電車の中にいても内容をリアルタイムに把握できるようになりました。

白江氏:このときMeeting Assist上に仮想会議室「ルーム」を作って参加するのですが、参加者は自分で情報を取得できるので、議事録担当者が共有する手間も不要になります。定例会議であればルームを消さない限り過去の会議もたどれますし、ログインすればトップページに直近のタスクが表示されるので、継続的なプロジェクトやチーム運営に役立ちます。

−顧客は、どのような利用シーンに興味を持たれているのでしょうか。

白江氏: やはり一番多いのは日常的な打ち合わせや役員会議などでの利用です。そのほかにも、人事面談の会話をまとめ、評価者や人事担当者で共有しておきたいといったニーズもありました。人事評価が集中する期間に合わせた大きなリソースを通年で使い続けるサービスだとコストがかかりすぎてしまいますが、当サービスでは利用にあわせてスペックの拡大縮小が可能なのでコストを抑えられます。また、センシティブな情報を扱うことになりますが、ルームは関係者だけが確認できる状態に権限設定できます。

−セキュリティといえば、重要な情報をクラウド上にアップロードすることに対して懸念する声も多く、勝手にAIを育てるために流用されているのではないかと心配されています。

森口氏: クラウドサービスではありますが、VPS(バーチャル・プライベート・サーバ)で契約ごとに個別環境を提供しており、データもそれぞれに分けて保存しているため、他の顧客からアクセスされる恐れはありません。また、特定のオフィスからのみ利用できるように、アクセス可能なIPアドレスをサーバーに設定することもできます。

発言内容などのサーバーに記録された情報はAIの学習のために使うことはないので、安心して利用いただけます。

言語AIを活用するサービスで、働き方改革をもっと身近に

―今後、どのような効率化がAIによってもたらされるとお考えでしょうか。

白江氏: 現時点のMeeting Assistは議事録が軸になっていますが、もっと幅広くコミュニケーションをサポートすることで、より働き方改革に貢献するサービスにしたいと考えています。

直近では、社内用語などを辞書に登録できる機能や、要約機能などを考えているところです。いずれは会話を深く分析して、感情や発言内容から会議をファシリテートすることも可能だと考えています。そうすれば会議そのものの効率を上げられますし、成果を意識した会議ができるようになるのではないでしょうか。

森口氏: Meeting Assistのサービスには、2つの目的があります。自動化できなかったことを自動化すること、そして障壁があって働けなかった人が働けるようにすることです。

人手不足のなかでRPAは非常に重要な役割をはたしていますが、それだけではどうしても解決できない領域があります。外国人などの言葉の壁がある人や、育児や介護といった理由によって働くことに制限がある人を手助けできる幅を広げて、あらゆる人々が活躍できる社会にしていきたいですね。

―ありがとうございました。

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