2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
移管に関する FAQ やお問い合わせは RPA BANKをご利用いただいていた方へのお知らせ をご覧ください。
ガートナーが2019年10月に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル」によると、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は幻滅期に入ったという。背景には、RPAを導入した企業が十分に運用・スケールできていない現状がある。
「現在の日本では、RPAの導入自体が目的となっている企業が多い。しかし、RPAは働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として捉えるべきだ。適切な運用やスケールはその延長線上にある」と語るのは、日立ソリューションズのエバンジェリスト、松本匡孝氏だ。
日本におけるRPA運用やスケールの課題は何か。また、今後RPAの位置付けはどのように変化していくのか。松本氏に話を聞いた。
―日本におけるRPAの現状について、見解をお聞かせください。
日本では2016年から2017年の頭にかけてRPA導入の流れが一気に加速しました。背景にはRPA特有の手軽さがあったと思います。従来のシステム開発ではコスト面・技術面で難しかったことがRPAであれば比較的簡単に実現できることや、非ITエンジニアのユーザーでもロボットを開発できることが注目を集めました。
しかし、いざ蓋を開けてみると、思い描いたような効果を実感できている企業の割合は決して多くはありません。複雑な業務や基幹システム、クラウドサービスを操作するなど様々な業務を自動化しようとしてうまくいかず、何とか自動化に漕ぎつけてもロボットが頻繁に止まってしまうなどの問題があり、限られた部署のみで導入していたり、PoCの段階で足踏み状態が続いている企業が多いと感じます。結果的にExcelやWebシステムに関連した、一部の業務のみの自動化でとどまっている企業がほとんどです。
一方でスケール化に成功し、大きな成果を上げている企業もあります。例えば500台のロボットを稼働して20万時間の業務時間を削減したなどの事例を聞くことがありますが、そういった場合は大抵ロボット開発者の数が数百人規模だったり、運用専用の部署を持っていたりします。しかし、人海戦術で大量のロボットを開発し運用することは、RPA導入の本来の目的である業務改善と矛盾するのではないでしょうか。
―業務改善ではなくRPA導入が目的化してしまっているのですね。逆に業務改善のためにRPAを活用するには、どういったことが必要だと思いますか。
RPAを働き方改革やDX推進の一環として位置付けることです。そうすれば仕事を楽にするために無駄な業務をやめましょう、コストを下げるためにRPAを使いましょうという流れになると思います。推進においても経営層や主管部署のサポートを受けることにもなります。RPAを使えば業務が自動実行されるため業務担当者が体調の悪い時に無理に出社しなくても業務が滞ることもなく、またロボット開発を通じて業務の属人化も解消されますので、ロボットが動かなくても別の人が業務を実行することもできるようになります。RPAによる業務の自動化は総労働時間の削減や繁忙期の平準化にも貢献でき、働き方改革としての成果を出せるようになります。
このようにRPAを働き方改革や業務改善の一環として使うためには、様々な情報を提供してくれるパートナーを探すべきだと思います。自社の目的に合ったRPA製品を導入し、正しく運用することや、より多様な業務への適用や利用部門を拡大することで発生する問題を解決するために、他のソリューションを活用することも視野に入れるとよいのではないでしょうか。
―スケールに向けてRPAを運用する上での課題には、どういったことがあるのでしょうか。
RPAがユーザー部門にあまり活用されないことです。RPAを導入することが目的化している場合、情報システム部門が使いやすいという基準でRPAツールを選定してしまいます。最初の段階では導入がうまくいっているように見えるかもしれませんが、運用・スケールの段階になると、ユーザー部門にもロボットを開発してもらう。または情報システム部門がロボットを開発するにしても現場に業務の詳細を確認しなくてはなりません。しかし情報システム部門が選んだRPAツールをユーザーが使いこなすのが難しいだけでなく、RPAに仕事を奪われるのではないかといった危機感から、業務の詳細についてのヒアリングに応じてもらえないといったことも起こりえます。その結果、現場との調整作業など情報システム部門に過剰な負担がかかり、なかなかスケールしないといった事態に陥ってしまいます。
また、ユーザー部門に協力してもらえるようになったとしても、対象業務の選定や開発をユーザー部門だけで行うのが難しいことや、RPAによる自動化が困難な業務が存在し、シナリオ作成の工夫やロボットを動かすためのチューニング作業等が発生することからユーザー部門のみで開発を進めることは簡単ではありません。
―対象業務の選定や開発を、ユーザー部門だけで行うのは確かに難しそうです。
ユーザー部門の担当者はITエンジニアではないので、自分の力だけでは解決できないことが頻繁に発生します。そうするとロボットを管理している情報システム部門に問い合わせが頻繁に発生し、情報システム部門側は回答するための時間を取られてしまって、本来やらなければならない他の業務が進まないといった事態に陥りかねません。
私たちも企業にRPAをご提案する中で、ユーザー部門のロボット開発を支援するにはどうすればよいかを考えました。そういった経緯でリリースされたのが「RPA運用支援クラウドサービス」です。
「RPA運用支援クラウドサービス」には、ユーザー部門が開発するために必要なコンテンツが豊富に用意されています。初めてロボットを開発する場合でも「開発ガイドライン」を参照することで、対象業務がRPAによる自動化に向いているかを判断したり、また、実習形式のトレーニング資料や開発手法のデモ動画などの「教育コンテンツ」により、RPAツールの操作方法を習得することが可能です。開発途中で分からないことが出てきたら「FAQ」や「ヘルプデスク」が便利です。「FAQ」は当社がこれまでに携わってきた現場で実際に問い合わせがあった事項がノウハウやTips集としてストックされているので、実践的で役立つ方法を見つけられると好評です。そしてもう一つ、便利な機能は「フォーラム」です。これはユーザー間でコミュニケーションを行いながら課題を解決していく場で、インターネット上の“知恵袋”の社内版といったところです。ユーザー同士であるため同じ悩みを抱えていることが多く、ユーザー目線ならではの解決方法や裏技など、投稿されるコンテンツはまさに宝の山です。
―RPAによる自動化が困難な業務の存在も、ユーザー部門がRPAを活用することを妨げているのですか。
RPAはすべての業務を自動化できる訳ではありません。しかし運用フェーズになると、より複雑な業務や基幹システムなど、より高度な認識技術を要するもの、さらにはクラウドサービスなどを対象に自動化したいと考えがちです。そういった業務を一時的に自動化できたとしても、複雑な業務は途中の業務フローが変更になる可能性がありますし、特にクラウドサービスに至ってはサービスベンダー側の都合でバージョンアップや画面デザインの変更などがあります。そういったことが原因でRPAがエラーで止まりやすくなり、ユーザー部門がメンテナンスの大変さから業務の自動化に躊躇するようになってしまいます。
この課題を解決するのが「Workato」(ワーカート)です。「Workato」は複数の作業を含む一連の業務フロー全体の自動化を実現するiPaaS(integration Platform-as-a-Service)で、RPAが苦手とするクラウドサービスなどが関わる複雑な業務の自動化に最適です。また、Microsoft TeamsやSlackと連携可能な「チャットボット(Workbot)」を提供し、人の判断が必要な業務も、チャットボットを介して人に確認することで一連の業務全体を自動化できます。
標準で実装しているコネクタ(API連携機能)や社内システム向けに個別提供可能なコネクタを活用して業務を自動化しますので、クラウドサービスをはじめ社内システムの画面デザインが変更になっても影響を受けることはありません。
また、例えばファイル更新をトリガーに作業を実行する場合も、RPAは特定のフォルダをロボットが巡回して更新を監視する方式なので実行環境を占有してしまいますが、WorkatoはAPI連携でアプリケーション側の更新情報をリアルタイムに検知するので、実行環境の占有は起こりません。RPAでいろいろ試してみたけれどうまくいかなかった、人の判断が入るため全体の業務プロセスの中で部分的にしか自動化できなかった業務がある、という企業にぜひ使ってもらいたい製品です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。