メディア

人とロボットが協働する社会へ。日立ソリューションズのエバンジェリストに聞く、RPA運用の最適化【後編】

» 2020年04月01日 10時00分 公開
[RPA BANK]

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
移管に関する FAQ やお問い合わせは RPA BANKをご利用いただいていた方へのお知らせ をご覧ください。

RPA BANK
株式会社日立ソリューションズ エバンジェリスト 松本匡孝氏

日立ソリューションズエバンジェリスト松本匡孝氏に、RPAについての見解を聞く記事の後編である。前編では、日本におけるRPAの現状と適切に運用しスケールさせるために必要なこと、RPA運用の課題と解決策について伝えた。後編となる本記事では、RPA運用の課題とその解決策のほか、日本におけるRPAの今後について紹介する。

■記事内目次

  • 1.ロボットが頻繁に止まる課題は、十分な機能を備えた管理ツールで解決できる
  • 2.全社展開できない背景にあるのが人材不足とノウハウ不足
  • 3.人とロボットの協働で、これまで自動化が困難であった業務も対象に

ロボットが頻繁に止まる課題は、十分な機能を備えた管理ツールで解決できる

―RPAをスケールするための運用上の課題として、ユーザー部門にあまり活用されないことを挙げていましたが、他にはどういった課題がありますか。

ロボットがエラーを起こして頻繁に止まりがちなことです。背景にあるのはWindows Updateやセキュリティソフトの動作の影響、PCディスプレイ解像度の設定変更、またアプリケーション画面が突然ロックされ認証を求めてきたり、Webサイトの応答遅延、管理サーバと実行環境のセッション切れなどです。

これらは運用する側への負担として「ロボット稼働中は常に人が監視する必要がある」「予定時間を過ぎてもロボットの処理が終わらないが、状況が分からない」、さらに「ロボットの実行スケジュールや処理結果のレポート化に人手がかかる」「別システムが処理したデータを活用するため処理が終わらないとロボットを実行できない」といった課題となって現れます。

当社は、自社でRPAを運用している立場から、RPAの管理があまりにも大変なため、ロボットを適切に管理する十分な機能を備えた管理ツールを探しました。そこで検討したのが株式会社日立製作所の統合システム運用管理ツールである「JP1」です。ただし「JP1」はRPAの管理ツールではなくITシステムの運用・実行を行うためのジョブ管理を目的とした製品であったため、RPAへの適用に向けて「JP1」開発部隊に、RPA管理に必要なモジュール開発を要望しました。そして当社内で評価利用しながら必要な機能を実装していった結果、ロボットを適切に管理する十分な機能を備えたツールができました。

2019年6月には「JP1連携ソリューション for Robotic Process Automation」として販売を開始しています。

「JP1連携ソリューション for Robotic Process Automation」を使えば、複数のロボットの実行状態を状態別に色分けし、ガントチャートで表示・確認することができます。また、休業日の自動実行振り分けなど、業務カレンダーに合わせた柔軟なスケジュール実行が可能です。ロボット業務を継続させたままロボットの実行遅延を検知して通知することや、空いている実行環境にロボットを振り分けることにより、ロボットの稼働率を向上させることもできます。

―クラウドサービスを利用していて、ロボットが止まってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。

クラウドサービスを利用している場合、クラウドサービス側の都合によるバージョンアップや画面の変更、不意なポップアップ表示やネットワークエラーなどの影響でロボットが止まってしまうことがあります。

その場合は「Workato」(ワーカート)が便利です。「Workato」は複数の作業を含む一連の業務フロー全体の自動化を実現するiPaaS(integration Platform-as-a-Service)です。著名なクラウドサービスのコネクタを標準提供しておりAPI接続が可能なため、クラウドサービスの画面上で変更が発生しても業務フローが影響を受けることはありません。また、当社にてオプション提供している各RPAツール専用のコネクタを使用することでRPAと簡単に接続できるため、稼働中のロボットをそのまま業務フローに組み込むことができます。

全社展開できない背景にあるのが人材不足とノウハウ不足

―これまでのお話で、RPAがユーザー部門にあまり活用されていなかったり、ロボットが頻繁に止まる現状があるために、スケールに至らないことが分かりました。他にスケールできない理由にはどのようなことがあるのでしょうか。

ロボット管理や運用を行う技術者が足りないことがあると思います。2016年に経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2030年には最大で79万人もの人材不足が生じるとされています。こういった状況の中で、RPAの開発や運用に注力してくれる人材を見つけるのは簡単ではありません。

この点では、先ほども触れた「JP1連携ソリューション for Robotic Process Automation」が役に立つのではないかと思います。エンタープライズでRPAを使う場合にも対応できるレベルの豊富なロボット管理機能が、人材不足を補ってくれると考えられます。

―人材だけでなく、スケールするための情報も不足している気がします。

当社は顧客企業から、RPAを導入したもののうまく運用できない、スケールできないという相談をよく受けるため、自社での運用経験も参考にしながら何かよい方法はないだろうかと社内で検討を重ねました。その結果、スケールするにはコストをかけるのでも人海戦術を取るのでもなく、ノウハウが大事だという結論に達したのです。

RPA導入企業では、ユーザー部門へのRPAの展開の仕方やロボット開発・運用プロセスを標準化するための方法、ルールやガイドラインなどの準備すべきことや、どのような体制でどの組織がロボットを管理すべきかといったような様々な情報が求められています。こういったノウハウを集めて提供しているのが、前回説明した「RPA運用支援クラウドサービス」です。現場をサポートするためのロボットの共有・管理機能や、各種ガイドラインやFAQなどのロボット開発に役立つコンテンツがすべて網羅されているので、これさえあればロボット開発と全社展開をすぐに始めることができます。

「RPA運用支援クラウドサービス」は、ユーザーがロボットを自分で開発するために必要なコンテンツを充実させることにこだわりました。当社はAutomation Anywhereの販売を行っているので、ライセンスをご提供している企業にはこの「RPA運用支援クラウドサービス」にAutomation Anywhereの開発・運用に必要な部品やテンプレートなどのコンテンツを実装して提供しています。将来的にはUiPathのコンテンツも実装予定なので、UiPathユーザーにも機能だけでなくコンテンツも使ってもらえるようになると思います。

RPAを有効活用することで、人とロボットの協働が可能に

―RPAの現状やRPA運用の課題を踏まえた上で、今後日本におけるRPAはどうなっていくかについての見解をお聞かせください。

今後は人とロボットが協働するようになることが予想されます。RPA単体で一連の業務すべてを自動化することは不可能ですが、他のソリューションをうまく組み合わせながら人とのコラボレーションを行うことで、今よりもさらにRPAを有効活用できるようになると思います。

そういった意味で注目してもらいたいのが今日紹介した「Workato」です。「Workato」はRPAの導入が進むにつれて顕在化する問題を解決してくれるソリューションです。「人の判断や確認が入る業務では、RPAでの自動化が困難である」、「利用手順が煩雑でRPAを使える人が限られてしまう」「クラウドサービスの予期せぬ画面変更でロボットが停止してしまう」などの課題を解決し、RPAの効果をさらに引き出して人との協働作業を可能にします。

欧米では、RPAですべての業務を自動化しようとするのではなく、RPAはレガシーシステムやExcelなどRPAに適した業務に利用し、APIを実装しているシステムやクラウドサービスなどはAPI連携で自動化し、業務プロセス全体の中で行うコラボレーションはビジネスチャットを活用するなど、適材適所でツールを使い分けることで自動化と効率化を実現しています。日本でも、「RPAに適さない業務には別の手段を使う」、「業務プロセス全体をコラボレーションも含めて改善する」、「クラウドアプリケーションは必要な機能のみを利用する」、の3点を実現することで業務効率化が飛躍的に進むだろうと思います。

前編を読む

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。