Wi-Fiの技術を使って、壁の向こう側にいる人を検知できる技術が発表された。その驚きの方法と役立つ利用方法を紹介する。
最新のWi-Fi規格「Wi-Fi 6」が2019年9月に正式策定されてから1年。最大9.6Gbpsの高速で安定した無線通信環境が魅力で、対応する製品も次々と登場している。そんな中、Wi-Fiに関する新たな技術が登場した。なんでも、Wi-Fi技術を使って壁の向こう側にいる人の動きを認識するという。いったい、どういうことなのだろうか。
Wi-Fi関連の新技術とは「WiPose」だ。WiPoseは、テック系サイト「Gigazine」が紹介し話題を呼んでいる。「WiPose」はニューヨーク州立大学バッファロー校の情報工学者である蒋文俊(Wenjun Jiang)氏らが論文「Towards 3D Human Pose Construction Using WiFi」として発表したもの。
WiPoseは、Wi-Fiに使われる電波を使って、壁など遮蔽(しゃへい)物の向こう側にいる人間がどんな姿勢をしているか把握する技術だ。対象の動きはディスプレイの3DCGモデルにリアルタイムで反映される。
論文によるとWiPoseは「Data Collection(データ収集)」「Data Preprocessing(データ前処理)」「Skeleton Construction(骨格モデル構築)」の3段階のプロセスを経て、見えない人の動きを3Dモデルとして表示するという。
閉鎖空間内ではWi-Fiトランスミッター(親機)からレシーバー(子機)へ電波が発射されている。そこに人間が入ると、電波が反射したり減衰したりなど、何らかの変化が生じる。その変化を、閉鎖空間の周りに配置されたビーコンで検知し「チャネル状態情報(CSI)」を入手する。これが「データ収集」だ。
次に収集したCSIのデータを分析し、AI(人工知能)へ受け渡せる形式に整える。これが「データ前処理」だ。そしてAIに送られたデータはディープラーニングによって人間の動きに変換され、このデータを人体の3Dモデルに当てはめる。これが「骨格モデル構築」だ。こうしてリアルな人間の動きを再現する。なお、骨格モデルの元となるデータはあらかじめカメラを使ったモーションキャプチャーで作成しておく。
ジャン氏が作成した動画もYouTubeに公開されているので興味のある読者は参照してほしい。カメラのない閉鎖空間でモーションキャプチャーをリアルタイム処理しているかのように、人体に合わせて3Dモデルが動く。
WiPoseはWi-Fiの電波さえあれば利用できるため、不可能とされてきた真っ暗闇でのカメラを使ったモーションキャプチャーが可能だ。WiPose以前にも、Wi-Fiを使って室外から室内に人が何人いるか、どこに何があるかを推定する“探知システム”が研究されたこともあるが、そこから大きく発展したといえるだろう。
研究チームは今後、WiPoseが、高齢者の見守りやショッピングモールでの窃盗防止の監視システムなどに応用できるしている。カメラを使用しない技術であり、対象者のプライバシーも守れるという利点も挙げている。
Wi-Fiの通信の高速化にも期待したいが、Wi-Fiの新たな活用方法のさらなる出現にも期待したいものだ。
Wi-Fiを応用して視認できない対象者の動きをすっかり感知できる技術が登場した、という話だよ。
「WiPose」っていうんですね。遮蔽物もお構いなしと。へー。これは面白い。
今やWi-Fiなんてどこにでもあるしデバイスだって安いからね。……まあデータを集めたり分析したりディープラーニングしたりと素人にはハードルは多々ありそうだが。
まあ個人じゃ無理でしょうね。
でもいつか、そういう機能がWi-Fiルーターに標準搭載されるようなことになるかもしれないよ。
そうなったら自室にいてもうかうか動けませんね! ……なんてことはないんでしょうけど。確かにお年寄りの見守りなんかにはいい機能かもしれませんね。
だろ? それにしてもこういう、ある技術をちょっと違ったベクトルで使いこなすのって面白いよな。
ですねえ。僕も自分の持つあの技術を、他の何かに使いこなしたいですよ。え? どんな技術かって? それは言えませんが……。
何を言っているんだキミは。ともかくWi-Fi技術を使った最先端はどんどん進化しているということだ。速度は上がって壁の向こうはお見通し、この先も楽しみだな。
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昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
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