新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の自宅待機要請が出た春先、企業の集合研修やOJTは中止や延期せざるを得なかった。Web会議システムで代用するところもあったが、実習やワークショップが実践できない、効率や効果が不十分であるなど課題が残っている。また一見問題なさそうなeラーニングにも落とし穴がある。初期のシステムだと企業内ネットワークでの実施を想定していて、社外でテレワーク中の受講生に配信できないシステムもある。場所や時間の制限を越えて企業の研修効果を高めるための教育理論やテクノロジーについて、ITRの平井明夫氏(リサーチ・フェロー)が解説した。
日本企業の多数が4月に年度始まりを迎える。そのような企業にとってCOVID-19の襲来は、次年度の予算が確定し、執行に移るという矢先だった。ITRが2020年4月に緊急調査を実施したところ、約半数の企業でIT予算の仕切り直しを迫られたことが分かった。もともと予定されていたプロジェクトが停止や延期に追い込まれる一方、COVID-19対応となる特別予算を計上したのだ。
企業が緊急措置として実施したIT施策の上位にはテレワーク制度の導入、リモートアクセス環境やコミュニケーションツールの新規・追加導入が並んだ。新規または追加導入の対象で突出しているのがWeb会議/ウェビナーで、次いでグループチャット/社内SNS、オンラインファイル共有が並ぶ。
平井氏は「COVID-19感染拡大を契機にコミュニケーションやコラボレーションの高度化、ワークスタイルの変革など従業員エンパワーメントの領域で優先度が高まった」と指摘する。コロナ禍以前はRPAなど業務の自動化や意思決定の迅速化・高度化などオペレーション最適化の領域で優先度が高かったところ、従業員エンパワーメントにシフトしたことになる。
企業内研修はオンライン化を余儀なくされているのが実情だ。当面は感染症対策を念頭におかなくてはならないことを考えると、オンライン研修の課題解決に取り組む必要がある。
企業内コミュニケーション同様、企業内研修も場所やデバイスに制限されることなく、受講できることが望まれる。オンラインでは困難とされる実習やOJTも、可能なものからオンライン化する必要があるだろう。実施形態の多様化に伴い、受講者の管理も効率化する必要がある。
これまでの集合研修ならば、受講履歴を研修管理者が「Microsoft Excel」などで手作業で集計することも可能だったが、オンデマンド配信の研修において手動で履歴管理をするのは難しい。受講履歴や進捗(しんちょく)などを効率的に管理する機能が求められる。
こうした課題解決のコアとなるのがLMS(Learning Management System)だ。eラーニングの管理システムは既に存在するが、ここ5〜6年で様変わりしつつある。eラーニングのコンテンツ配信とその管理を主とした従来型のLMSはオンプレミス環境への導入を前提としたものが一般的で、コンテンツは買い切るか、自社でオリジナルコンテンツを作成して配信していた。
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