ソフトウェアに関するライセンス監査では、実施企業の60%以上で追加費用が発生するという結果が出た。監査の実態に迫る。
海老名 剛(Tsuyoshi Ebina):ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ソーシング&ITマネジメント リサーチディレクター
ガートナー ジャパンにおいて、ITサービスに関する市場調査およびアドバイザリ業務を担当。企業向けITシステムの企画、設計から導入、運用まで、ITサービス全般にわたる動向分析と、その結果に基づく提言を行っている。ガートナー ジャパン入社以前は、大手ERPベンダーおよびコンサルティングファームで、製品マーケティング、業務アプリケーションの導入コンサルティングに従事。一橋大学大学院国際企業戦略研究科卒。
多くの企業が日々の業務に活用しているパッケージソフトウェア。そのライセンス監査は、海外に本社を持つソフトウェアベンダーを中心に、世界中の企業に対して実施されている。これは日本企業に対しても例外ではなく、近年はそのライセンス監査の動きが活発化している傾向にあるようだ。
今回は、ソフトウェアライセンス監査に関するアンケート調査の結果について概観しながら、日本におけるソフトウェアライセンス監査の実態や企業が取り組むべき監査の在り方、組織における取り組み方について考えていきたい。
そもそもソフトウェアライセンス監査(以下、ライセンス監査)とは、ソフトウェアベンダーがユーザー企業に対して行う、ライセンス違反の有無を確認するための取り組みのことで、監査を行うために直接ユーザー企業に出向いてオンサイトにて行う場合もあれば、監査用のプログラムを実環境に適用したうえでそのログの提出を求める場合もあるなど、ソフトウェアベンダーによってその手法は異なっている。
海外製品の場合は、海外本社から直接監査が依頼されるケースはもちろん、ソフトウェアベンダーの日本法人が営業窓口を通じて行うケース、外部の監査法人に委託して調査するケースなど、そのアプローチもさまざまだ。
ここで、ライセンス監査に対する日本企業の実態について詳しく見ていこう。ガートナージャパンが実施したアンケート調査(調査は2018年4月に行われたもの、有効回答数209、インターネットを利用した調査)では、SAPやOracle、Microsoftをはじめとするパッケージソフトウェアを提供するソフトウェアベンダーがユーザーに対して実施するライセンス監査について、ユーザー企業の50.2%が「ライセンス監査に対応したことがある」と回答している。
また、「対応経験はないが、将来、対応することを想定している」と回答したユーザー企業を合わせると66.8%となり、70%弱のユーザー企業がライセンス監査を経験する可能性があることが分かった。既に50%を超えるユーザー企業がライセンス監査を経験していることからも、国内においてライセンス監査が一般化していることが明らかだろう。
なお今回の調査では、ユーザー数の増減など定期的なソフトウェアベンダーとのやりとりをライセンス監査と勘違いしてしまうケースを排除すべく、ソフトウェアベンダー自身がオファーしたうえで、ライセンス違反の有無を確認するための監査がどうかについて尋ねている。
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