テレワークの普及によって電話やFAXといった「オフィスに出勤することを前提とした情報機器」の利用状況が変化している。廃止を望む一方で「信じられないほどのレガシー資産」が未だに使われ続けている現状が見えた。
キーマンズネットは2020年10月5〜16日にわたり、「レガシー情報機器の利用状況」に関する調査を実施した。本調査では、コロナ禍以降に利用が減少すると想定される電話やFAXなどを“レガシー情報機器”と定義し、それらの現状での利用状況や課題、今後の継続利用意向などについて調査した。
今回はFAXやその他のレガシー情報機器がどの程度利用され、どのように変化しつつあるかを調査した。全回答者は136人で、内訳は情報システム部門が27.9%、製造・生産部門が26.5%、経営・経営企画部門が8.1%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が7.2%となった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前編ではコロナ禍による働き方の変化などによって、FAXや固定電話、TV会議システムといった”レガシー情報機器“の利用傾向が変わりつつある状況を紹介した。後編では、最も多くの回答者が「廃止予定」と答えた”FAX“の実態を紹介する。
まず、調査時点でFAXを「利用している」と答えたのは、回答者の89.7%であった。用途としては「顧客や取引先への問い合わせ」や「受発注の連絡(数値、文章)」が32.0%と最も高く、主に顧客対応業務で利用されていることが分かった。(図1)
その他、フリーコメントでは以下のような意見が寄せられた。
以上から、利用シーンが減少しても「ないと困る場合」を想定して廃止していない例や、業務フローにおいて必要不可欠な要素になっている例があると分かった。
回答者のプライベートにおけるFAXの利用機会を調査したところ、52.4%が自宅にFAXを「持っている」と回答した。一方で、そのうち42.1%(全体の22.1%)は「使わない」と回答している。46.7%は自宅にFAXを「持っていない」と回答しており、メールやスマートフォンなどの台頭によってFAXの利用機会は限定的になっている様子が見て取れる。(図2)
また、電話やTV会議システム、FAX以外で残り続けている「その他のレガシー機器」についてもフリーコメントで回答を募ったところ「ビジネスフォン」や「フィーチャーフォン」「PBX(内線交換機)」などの電話関連資産が多く、その他には以下のような例が挙げられた。
今回の調査はコロナ禍において企業を取り巻く環境が変容し、レガシー情報機器の利用が減ったのではないかという仮説を立てて実施した。結果としては電話やFAXなどを中心に多くの企業でいまだに多くのレガシー資産が残っていること、多くのケースでそれらの利用機会は“限定的”になっていることが分かった。
前に述べたレガシー情報機器群は、利用機会が減少しても完全な廃止が難しい。例えばFAXの利用を継続している理由では「メールでのやりとりができない業者とのやりとりのため」というコメントが目立った。その他は以下のようなコメントが寄せられた。
など、万が一のために残している例や、どうしても廃止できない例があった。
一方で「できれば廃止したい」という意見が多い。新政府が設立したデジタル庁や行政改革担当が取り組み意向を表明する行政手続きのデジタル化では印鑑の廃止が検討されているが、レガシー情報機器についても「FAXは押印よりも業務に支障がある。早めに法整備して禁止してもらいたい」や「できれば印鑑と共に、FAXも社会的に廃止されてほしい」といった期待の声が寄せられた。
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