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オンライン面接で応募者の心をつかむには? Web面接ツールでできること、起こりがちなトラブルとは

企業にも“3密回避”の行動が求められる中、そろそろ本格的に採用活動のオンラインシフトを考えなければならない。オンライン面接で応募者を引き付けるにはどうすればいいか。起こりがちなトラブルとは。本特集で詳細を解説する。

» 2020年11月09日 07時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 コロナ禍で企業の採用活動は大きく様変わりした。緊急事態宣言中は、ZoomなどのWeb会議ツールで対応するなど、急ごしらえの体制でオンライン面接を実施した企業もあったというが、今は2022年の新卒採用や不定期の中途採用に向けて、本格的に面接のオンライン化が急がれるところだ。

 しかし、採用フローは多岐にわたり、中には選考にグループディスカッションなどを組み込む企業もある。これからオンラインを前提とした採用活動が常態化する可能性もある中で、まだ“手探り状態”の企業も少なくないだろう。そこで、本特集では、オンライン面接ツールを活用した面接とそのフロー、応募者に印象の良い面接の在り方、オンライン面接で起こりがちなトラブルと注意ポイントなどについて解説する。

本格運用フェーズに入ったオンライン面接

 COVID-19以前は、オンライン面接は主に遠方に住む求職者に対する面接手段として考えられていたが、COVID-19の流行により、オンライン面接は当たり前のものになりつつある。オンライン面接ツール「インタビューメーカー」を提供するスタジアムが顧客企業に対して実施した調査によれば、2020年期におけるオンライン面接の実施件数は、2020年1〜3月期は2019年同期の約6倍、2020年4〜6月は約40倍と、急増したという。しかもオンライン面接の実施が「今回初めて」という企業が約7割を占めたという。また、「次年度の面接開催意向」についてのアンケート調査によれば、回答者のおよそ89%の企業が次年度も「対面面接/Web面接を併用」する意向だと回答したという。

図1 次年度以降の面接の開催意向(調査対象:1269社、有効回答数:110件)(資料提供:スタジアム)

 オンライン面接は、対面の面接とは勝手が異なり「求職者の表情が画面越しでは正確に読み取れない」「求職者の雰囲気や人となりが分かりにくい」と不安に感じる採用担当者もいるだろう。しかし、採用業務の負荷やコストの軽減効果、面接時の録画データの活用などといったメリットも期待できる。

 オンライン面接ツールは具体的にどういったことができるのか。スタジアムが提供、開発する「インタビューメーカー」を例に、主な機能を以下に挙げる。

  • カレンダーによる面接スケジュール予約、管理機能
  • 応募者の基本情報(履歴書情報・写真など)の管理、出力機能
  • 面接スケジュールにのっとったオンライン面接実施機能(開始コール、自動接続など)
  • 面接結果のメール通知機能
  • 自動録画機能、録画データ保存・管理機能
  • 採用管理機能(応募者ごとの採用活動ステータス管理、面接実施数や採用率管理、広告管理など)
  • 主要採用管理ツール(ATS)との連携機能
図2 オンライン面接ツールの画面例(「インタビューメーカー」の例)(資料提供:スタジアム)

会社説明会、グループ面接も「フルオンライン」で

 このようなツールは面接の実施だけでなく、オンライン会社説明会や採用関連セミナーなども実施できる。またグループディスカッションなどを含む限定された人数でのグループ面接にも活用可能だ。3密回避や人の移動抑制のため、大勢が集まる会合が開催しにくい状態が今後も続くことが予想されるため、こうしたツールを活用して、できるだけ対面を避けながら採用活動を進めることが当面は求められるだろう。

 さらには、SPIのテスト結果や各種の評価基準(企業独自の評価シートなど)、履歴書データなどを応募者別に参照することもでき、採用管理ツール(ATS)と連携することで情報の参照が可能となる。

 オンライン面接ツールを応募利用することによって、応募受付から面接のスケジューリング、面接、結果通知といった一連のプロセス全てがオンラインで対応可能になる。スタジアムによれば、コロナ禍を契機に、全面的にオンライン面接に切り替えた大企業もあるという。

オンライン面接で「イケてる面接」「イケてない面接」の特徴

 オンライン面接ツールの多くは録画データを残すこともできるため、複数の面接担当者や人事部門のベテラン社員、現業部門の管理者などが応募者の面接状況を子細に確認でき、複数人の視点から評価でき、より正確に面接評価を下せるようになるだろう。また、それを基に面接官の対応を分析できるのもメリットの一つだ。面接内容と応募者の反応や結果(評価、内定受諾/辞退なども含め)を分析すれば、面接実施側の改善ポイントが明確になる。

 さらに録画データと採用結果を照らし合わせながら面接を分析することで、「どのような会話が応募者の心に響くのか」「面接担当者や応募者の言葉や態度が内定辞退にどう影響するのか」なども、データを基にした仮説を立てやすくなるだろう。

 オンライン面接ツールベンダーの中には、録画データを分析して面接担当者の会話の定量分析レポートを作成するオプションサービスを提供するベンダーもある。オンライン面接ツール「インタビューメーカー」を開発、提供するスタジアムは、オプションサービスとしてそうした分析サービスを提供しているベンダーの一つだ。以下は、スタジアムの傾向分析を基に、応募者に対して「応募者に響く面接」と「応募者に響かない面接」の特徴をまとめたものだ。

応募者に響く面接

・笑顔の量が多い

・照明などが適切に当たっている

・面接官の目線が上向き

・十分なアイスブレークの時間を設けている

・面接官のジェスチャーが大きい

・応募者に適切なタイミングで発言を促している


応募者に響かない面接

・面接官の声量が小さい

・発話に抑揚がない

・面接官の目線が下向きになっている

・アイスブレークの時間が取られていない

・面接官のジェスチャーが小さい

・面接官ばかり話している


オンライン面接ツールを使った一連の流れを解説

 では、実際にオンライン面接ツールを使ったフローはどうなるのだろうか。ここからは、一例としてインタビューメーカーを用いた場合のフローを紹介する。

1.応募者の登録

 応募者にエントリー用URLを送信。応募者はエントリー画面に氏名などの基本情報を入力して登録する。企業側で採用管理ツール(ATS)を運用している場合は、ATS側の登録情報をオンライン面接ツールと連携することもできる。

 また、面接の前にあらかじめ用意した質問項目を応募者に送り、動画での回答を求めることもできる。それをエントリーの条件や一次面接とすることも可能だ。応募者は、回答の様子をスマホなどで撮影し、動画を面接ツールにアップロードするだけだ。

2.面接実施の連絡、面接日程決定

 応募者にメールで面接実施を連絡。応募者は希望面接日をカレンダーから選択する。決定した日時は応募者に自動メール送信される。

3.面接

 応募者は面接前に、ツールの使い方をテストするプレ面接(ベンダーによる付帯サービス。インタビューメーカーの場合)を利用して、利用環境が十分かどうかを確認したり、ツールの使い勝手を試したりできる。

 応募者がメールで事前に告知された面接室(面接担当者含めて11人まで利用可能)にアクセスすると、面接担当者(複数可)に自動コールされ、面接が開始される。

 面接担当者が複数人の場合は、応募者情報(SPIテストの結果やプロフィール、履歴書など)を共有し、担当者間でチャットなどでコミュニケーションをとりながら面接を進められる。

4.面接終了後の動画共有、評価

 面接状況は動画データとして保存されるため、事後に採用担当者間や関係者間で共有、閲覧して応募者を評価できる。また、複数の面接担当者間で動画を共有し、振り返りを実施、質問項目や面接態度、口調などさまざまな角度から面接を振り返り、次の面接に生かせる。

5.面接結果の通知

 次のステップへの案内なども含め、面接結果を応募者にメールで送信する。

 面接ツールの機能を効果的に活用すれば、こうした一連の採用プロセスを全てオンライン化することも可能になる。

図3 オンライン面接ツールを利用した採用フローの例(資料提供:スタジアム)

オンライン面接で起こりがちなトラブルと対処法

 オンライン面接で起こりがちな問題として、「つながらない」「途中で途切れる」「応募者がどう操作すればいいか分からない」といったことが挙げられる。

 これらの問題は、事前に利用環境(OSバージョン、ブラウザバージョン、ネット接続スピードなど)を応募者に確認することで回避できる。しかし、中にはこれだけでは解決できない問題もある。例えば、応募者側で利用環境が準備できないといった場合だ。そうした場合は、対面面接に切り替えるか、それが間に合わなければ電話で今後の対応を相談するなど、例外措置をあらかじめ決めておくことでカバーできる。また、事前に面接と同様の環境でテスト通話ができるサービスもあるため、そうした付帯サービスの有無も面接ツール導入時に確認したい。

 最後に ツールの企業選び方のポイントを補足しておくと、企業側では、ファイアウォールの設定変更が必要かなど、面接ツールがセキュリティ面で自社のポリシーに合致するかどうかも含めてベンダーと相談の上、事前に確認しておくことが必要だ。また、同時刻に複数のオンライン面接を実施する場合は、社内ネットワークやインターネットへのアクセス環境が十分かどうかも検証するといいだろう。

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