当たり前となっている商習慣や社会のルールもよく考えてみると、「これはムダじゃないか」と疑問に感じるものもある。「PPAP」もそのうちの一つだというが、どういった関係があるのか。
アドビは2020年12月10日、企業に勤めるビジネスパーソンを対象に実施した、社内ルールや商習慣に関する実態調査の結果を発表した。それによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で業務のデジタル化が進む一方、非効率的なビジネス慣習が多く残っている実態が明らかになった。
政府は、COVID-19の感染拡大をきっかけにテレワークの導入を推進し、それに伴い、印鑑の廃止(脱ハンコ)にも動き出した。このように業務の効率化が求められる中、非効率だと分かっていながらも商習慣として続いていることが社内にあるかどうかを聞いた。すると、「多く存在する」と回答した割合は40.8%、「少し存在する」は39.8%で、合計80.6%の人がムダな商習慣があると感じていた。
社内のムダな商習慣をなくすためには何が必要かを聞いたところ、「経営陣の意識改革」と答えた人の割合が最も高く、47.0%(複数回答)だった。次いで、「社内ルールの抜本的見直し」(41.4%)、「自分自身のITリテラシー向上」(26.0%)と続いた。回答者の中には「自分以外の社員のITリテラシー向上」(22.4%)を挙げる人もいた。
次に、具体的にムダだと感じている商習慣を聞くと、「書類への押印、捺印」を挙げた割合が最も高く、58.1%(複数回答)だった。次いで、「紙資料の印刷・配布」が52.9%、「手書きでの記載が必要な書類の作成」が46.7%。「Eメールを送ったことを伝えるためだけの確認電話」(34.7%)や、「パスワード付き添付ファイルの送受信(パスワードを別途送付)」(34.5%)といった電子メール関係の習慣も挙がった。
次にメールでのやりとりにおける無駄な慣習について尋ねた結果を紹介する。
パスワード付ZIPファイルについては、セキュリティの観点から、政府が使用を廃止する動きに出た。なお、パスワード付き添付ファイルとパスワードをそれぞれメールで送る行為を「PPAP (P)パスワード付きZIP暗号化ファイルを送り、(P)パスワードを送る、(A)暗号化 (P)プロトコル」」と呼び、JIPDEC(日本情報経済社会推進協会)の大泰司 章氏が命名した。セキュリティ上廃止すべきであると言われている。
こうしたパスワード付きファイルを、過去1年以内に受け取ったことがあると回答した人の割合は82.0%。自ら送付したという人も56.6%を占めた。
パスワード付きファイルをメールで送信しているという回答者に理由を尋ねると、「会社の規則やルールで指定されているから」とした人の割合が最も高く、56.2%(複数回答)を占めた。PPAPは多くの会社で商習慣になっているようだ。「セキュリティ上有意義だと思うから」も41.3%に上った。
パスワード付き添付ファイルとパスワードをそれぞれ別のメールで送る行為は、専門家からセキュリティ上廃止すべきだと言われている。このような行為が、セキュリティ上意味のない行為だと言われていることを知っているかどうかを聞いたところ、「明確に知っていた」と答えた人の割合は23.2%だった。
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