キーマンズネット会員866人を対象に「勤務先のSaaS導入状況」を調査した。コロナ禍中に提供されたSaaSの無償プランを、企業はどのように扱ったのか。その結果から見えた注目のSaaSとは。
キーマンズネット編集部は2021年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「テレワークインフラとデバイス管理」「従業員コミュニケーション」「オフィス」「デジタルスキル」「人事制度」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2020年11月10日〜12月11日、有効回答数866件)。企業における2021年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。
第2回は「SaaS型業務アプリケーション」の調査結果を見ていく。
現在利用しているSaaSに満足しているかどうかを聞いたところ、最も多かった回答が「おおむね満足している」(44.7%)だった(「SaaSは使っていない」は25.6%)。
「おおむね満足している」「全体的に満足している(5.1%)」とした回答者からは「過不足なくコストパフォーマンスがいい」や「オンプレミスよりも管理の負担が減り、障害時も復旧までのめどが立てやすくなった」などの声が寄せられた。複数の回答者から「テレワークへの移行がしやすかった」という回答があり、SaaSが働き方改革に寄与したことが見て取れた。
「一部に不満がある(19.3%)」「不満が多い(5.3%)」とした回答者からは、SaaSそのものへの不満と組織に対する不満の声が上がった。
SaaSに対する不満には「動作が重い」や「複数のSaaSに重複する機能があり、二重投資になっている」「思っていたよりもコストがかさむ」といった声があった。組織に対する不満としては「自社製品の営業活動のつきあいで導入したため、業務内容に合わない」「使いこなせる人材がおらず、導入したSaaSが有効に活用されていない」などの声が上がった。
2020年のコロナ禍では企業支援を目的として、さまざまなソフトウェアベンダーが自社の製品やサービスの一部を無償で提供した。それらはどの程度企業に定着したか。
コロナ禍中に提供された多種多様な無料プランを企業がどう利用したかについて聞くと、「無償プランは使わなかった」(74.9%)と回答した割合が最も高かった。
一方で、12.1%が「無償プランを利用し、有償版を契約した」と回答している。「無償プランの利用を継続している」(6.6%)と「無償プランを利用したが、現在は利用していない」(6.4%)を足すと13.0%となり、無償プランを利用した企業の半数近くが有償プランを契約していたことが分かった。
具体的にどのようなSaaSを検討したかやどのような理由で有償版の契約を判断したかをフリーコメントで聞くと、以下のような経験談が寄せられた。
また、無償プランの捉え方についてもさまざまな意見が集まった。
最後に、直近1年間で導入されたSaaSが何で、どのような経緯で導入されることが多いかを聞いた。
全ての分野において最も多かった回答は「この1年で新規に導入していない」だった。最も導入されたSaaSは「グループウェア」で、26.9%の企業が新しく導入していた。その他には「Eメール(23.3%)」と「クラウドストレージ(24.1%)」の新規導入率が高かった。
導入の経緯を見てみると、前述の3サービスは「経営者がトップダウンでサービスを指名した」と回答した割合が高く、Eメールは5.3%、グループウェアは5.4%、クラウドストレージは4.6%がトップダウン指示に基づく導入だった。この3サービスは「経営者の指示に従ってIT部門が探した」と回答した割合も高い。
財務会計と人材管理、人事給与、勤怠管理、営業支援、SFA、顧客接点支援、CRMでは、経営者からのトップダウン指示の割合が低い。これらのサービスが新機導入された割合は前述した3サービスよりも低く、いずれも2割を切っている。
以上から、業務部門が「SaaSが必要だ」と考えていても、経営者の判断がないと新規導入は難しいことが見て取れる。
コロナ禍の影響は当分続くことが予想される。グループウェアを中心に、テレワークの生産性を高めるSaaSは今後も重要性を増していくだろう。2021年は、有用なSaaSを経営トップがキャッチアップできる組織とそうでない組織の差が開く年となるかもしれない。
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