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» 2021年04月05日 07時00分 公開

クラウドRPAとは? テレワークの生産性をアップする方法を解説

RPA活用を進めた企業と進めきれなかった企業の差が、コロナ禍でさらに広がった。コロナ禍をきっかけに働き方が大きく変わる中で、どのように業務自動化を進めるべきか。テレワークの生産性をアップするクラウドRPAの選び方とは。

[吉村哲樹キーマンズネット]

 クラウドRPAとは、ベンダーが提供するクラウド上で動作するRPA(Robotic Process Automation)を指す。デスクトップ型やオンプレミス型との違いは「インターネットを経由してクラウドサービスにログインし、Webブラウザで実行する処理を自動化する」点にある。サーバの構築を自社でする必要がないこと、ごく小規模な試用からのスタートができること、セキュリティ対策の一部をベンダーが確保していることなどの利点がある一方、インターネットを経由しないシステムや既存のレガシーシステムとの連携が難しいといった弱点もあった。

 しかし昨今、テレワークやリモートビジネスの普及によってクラウドRPAが活躍する機会が増えている。コロナ禍における企業のRPA導入状況やニューノーマル時代ならではの強み、陥りがちな課題などから、クラウドRPAの可能性と業務自動化を成功させるコツを解説する。

コロナ禍において企業の「RPAリテラシー」に大きな差が

 ルーティンワークを自動化して企業の生産性向上に寄与するツールとして「RPA(Robotic Process Automation)」が注目されている。しかし、RPAを導入して一定の効果を上げる企業の事例が目立つ一方でなかなか導入に踏み出せない企業や、導入してみたものの当初想定していたような効果が得られずに利用をやめてしまうケースも少なくない。

 2020年にキーマンズネットが実施したアンケート調査では、27.6%の企業が「本格展開完了」もしくは「本格展開中」と回答した一方で、およそ23%が「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」と「導入の検討やトライアルの後に取りやめた」と回答し、RPAを活用している企業と導入を取りやめた企業の数が拮抗していることが分かった。

2020年実施、勤務先におけるRPAの導入状況(n=895)

 また同調査では、RPAによる自動化に適しているとされる「繰り返し作業、単純な確認作業、定型的なデータ入力」が「業務の半分以上を占める」と回答した割合が42.5%に上った。RPAを展開している企業は27.6%であることから「RPA向きの作業があっても、3社に1社は自動化していない」と推測できる。

 RPAの導入メリットをうまく享受できている企業と享受できていない企業とに二極化されている状況に、コロナ禍が拍車を掛けた。

 コロナ禍中におけるテレワークで重要なのは「出社しなくては実施できない業務の削減」だ。コロナ禍以前からUiPathのRPA製品を導入していた食品メーカーは社内業務の自動化・省力化を進めていたため、コロナ禍において比較的スムーズにテレワーク移行ができた。

 しかし「FAXで得意先へ出荷案内を送達する業務」だけは紙の帳票と手作業に頼っていたため、出社を余儀なくされていたという。そこで同社は紙ベースの帳票をPDF化し、PCからFAXを送信する仕組みを採用した。

 このように、もともとRPAによる業務自動化のノウハウを有していた企業は、コロナ禍においても新しい業務自動化の仕組みを確立できたようだ。一方でRPAの活用ノウハウを蓄積できなかった企業は、テレワークのために業務を自動化しようとしても、「どの業務を自動化すべきか」「どうやって自動化できるのか」「どのような体制やスキルが必要か」といった知見がないため、RPAを活用してきた企業との差がさらに開くことになってしまった。

 2020年は、コロナ禍への緊急対応に追われた年といえる。それでは2021年はといえば、これから訪れるニューノーマル(新常態)時代にふさわしい働き方を実現する年といえるだろう。ビジネスがリモート化する中で、どのように業務自動化を進めるべきか。それを模索する企業の取り組みをサポートするため、RPAベンダーはRPAをより使いやすくするクラウド型管理ツールを提供している。

 クラウドRPAには、オンプレミス環境で利用していたRPAの仕組みをそのまま専用クラウド環境で再現するものもあれば、RPAのロボット機能をSaaSサービスとして提供するものもある。本稿では、特にテレワーク環境において役立つと思われるクラウド活用に的を絞って紹介してみたい。

「テレワーク×RPA」の課題はクラウドで対応できる

 テレワークにおけるRPAの活用で最も大きな課題になると思われるのが、ロボットの「稼働状況の管理」だ。オフィスに出社していれば、ロボットの苦手とする例外的な判断や異常時の対応を人間が引き受ける「二人三脚」でRPAの仕組みを回せた。しかしテレワーク環境においては、ロボットが稼働している端末の状態を目視で確認できない例が増え、管理の目が行き届きにくくなってしまう。こういった課題をカバーするためには、社内で稼働するロボットの状況を一元的に管理できる仕組みの導入が望ましい。

 ただし、そうした仕組みをオンプレミス環境内に導入するには、別途管理ソフトウェアを稼働させるためのサーバを導入し、管理する必要がある。その作業のために出社が必要となれば、本末転倒だ。また、社外から管理ツールを操作するにはVPNなどを経由して社内ネットワークに接続するため、認証や通信環境の整備も必要になる。

 そこで有効なのが、クラウド型のRPA管理ツールだ。管理ツールが当初からクラウドサービスとして提供されていれば、オンプレミス環境の管理サーバもVPNも不要になり、インターネットを通じてさまざまな環境からRPAをリモート利用できるようになる。

 こうしたメリットに着目し、現在多くのRPAベンダーがロボットの管理ツールをクラウドサービスとして提供し始めている。例えば前出したUiPathは2020年5月から、同社の管理ツール「Orchestrator」のクラウド提供を始めた。同社の担当者によれば「従来はまずスタンドアロンのロボットを導入し、規模の拡大とともにOrchestratorの導入を検討する例が多かった。クラウド版の提供開始からは、新規導入と同時にOrchestratorでロボットを集中管理する仕組みを取り入れるユーザーが増えている」という。

ロボットの稼働環境を仮想化してクラウド上に配置する

 RPAの管理機能をクラウド化するとその他のクラウドサービスとの連携性も向上し、より高度な業務自動化/省力化が可能になる。例えばUiPathのクラウド版Orchestratorは機能をAPIとして外部に公開しているため、他のクラウドアプリケーションやワークフローツールと連携して、既存の業務やワークフローと連動したより高度な自動化が可能になるという。

 また、管理機能だけでなく、ロボット本体もクラウド環境に配置できれば、さらに大きなメリットを享受できる。

 テレワーク環境でオンプレミスやデスクトップ型のRPAを運用する際の課題に「ロボットを稼働する端末の起動/再起動」がある。社内環境で稼働するロボットを社内環境に置くと、そのPCを起動したり、ハングアップしてしまった際に強制シャットダウンしたりといった操作が必要になる。それらは基本的にPCに直接触って操作する必要があるため、テレワーク環境においての対応が難しい。

 しかしロボットをクラウドで稼働させられれば、これらの課題に対応できる。例えば、UiPathが近くリリースを予定している機能「Elastic Robot Orchestration」では、ロボットをクラウド上の仮想マシンとして実装した上で、前出のクラウド版Orchestratorを通じて必要なときだけ動的に仮想マシンを生成し、ロボットを動かせるようになるという。

 具体的には、AWS(Amazon Web Services)もしくはMicrosoft Azureのサブスクリプション情報と仮想マシンのイメージ情報をあらかじめOrchestratorに登録しておけば、ロボットが動作するときだけ動的に仮想マシンを自動的に生成する。これによってクラウドの利用コストを最小限に抑えられるとともに「重いタスクを複数のロボットに分散して短時間でタスクを完了させる」といった、高度な処理も可能になる。

クラウド型のノーコード開発ツールでさらに便利に

 ここまで、ロボットの「管理」および「実行」におけるクラウド活用について紹介してきたが、RPAのもう1つの主要構成要素である「ロボットの開発」についても、クラウド活用が進んでいる。これまでロボットの開発作業は、専用の開発ツールをPCのローカル環境に導入して行うやり方が主流だった。高機能なRPAほど設計や開発に高度なスキルが要求されるため、企業のIT部門が一括して開発を担当することが多かった。

 しかし近年、RPAに限らずさまざまなITの分野において、ITの専門家ではない現場の業務担当者でも簡単にプログラムが開発できる「ノーコード開発ツール」「ローコード開発ツール」が注目を集めている。その背景には、企業全体でデジタル技術を積極的に活用して、ビジネスモデルや企業カルチャーを変革させる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の潮流がある。RPAもDXの流れを受けて、より簡単にロボットを開発できるクラウド型のノーコード開発ツールやローコード開発ツールが提供されるようになってきた。

 例えば前出のUiPathは、従来は「高度なスキルを持った技術者が専用開発ツールを使って入念にロボットを設計/開発する」という、中央集権型の志向が主流だった。しかし同社は現在、プログラミング知識がなくても開発ができるデスクトップ型のツール「StudioX」や、ブラウザ画面にアイコンをドラッグ&ドロップするだけでRPAのプログラムを開発できるクラウド型のノーコード開発ツール「Apps」を提供している。

 RPAベンダーの提供するツールには、中央集権的な開発/運用が強みの製品と、現場のユーザーが容易に開発/運用に参加できることが強みの製品が存在する。これからクラウドRPA製品の導入を検討する際には、まず「誰がRPAを開発するのか」と「誰がRPAを使うのか」という観点から、自社のニーズを洗い出してみたい。

 その上で、「そもそもRPAで何を自動化するのか」という点もあらかじめクリアにしておきたい。RPAは決して「どんな業務でも自動化してくれる“魔法の杖”」ではない。自動化に適した業務にうまく適用しないと、十分な効果を発揮できない。導入に成功した事例や失敗のパターンでケーススタディーを重ね、その上で自社の業務がどのように自動化できるかを見極めた上で、より効果が出やすいものから段階的に適用して効果を評価していくべきだろう。

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