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「2020年のRPA」事業を支える定型業務 自動化対策、各社の判断

RPAは定型作業の自動化によって業務効率を上げる「魔法の杖」だったのか。コロナ禍によって世界中の企業がイレギュラー対応に追われる中で、ビジネスを支える定型作業への対策は割れていた。各企業の判断とその理由を追う。

» 2020年11月27日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 RPA(Robotic Process Automation)は、定型的な入力作業などを自動化することで業務の生産性向上や省力化を実現する技術として注目を集めてきた。2020年、コロナ禍によって世界中の企業がイレギュラー対応に追われた中で、RPAの活用はどこまで進んだのか。

 本連載(全5回)では、キーマンズネット編集部とITmedia エンタープライズ編集部が合同で実施したアンケート調査(実施期間:2020年9月16日〜10月8日、有効回答数913件)を基に、RPAの導入率や導入の進み具合、得られた成果、導入しない理由など、企業におけるRPAの活用実態を解説する。

 回答者の業種は「情報・通信・IT」が36.9%、「製造業」が33.8%、「サービス業」が16.1%、「商社・小売り」が7.3%、「金融」が1.3%であった。企業規模は、従業員数「500人未満」の中小企業が43.8%、「500人以上1000人未満」の中堅企業が12.6%、「1000人以上」の大企業が39.9%という内訳だった。なお、グラフで使用している数値は、丸め誤差によって合計が100%にならない場合があるため、ご了承いただきたい。

定型業務にRPAを「使わない」という判断、明暗は?

図1.勤務先におけるRPAの導入状況(n=895)

 まず、RPAの導入状況を問う項目では、4件中1件以上が「本格展開完了」もしくは「本格展開中」と回答した。また、トライアルの実施や導入を検討しているという回答も合わせると、回答者の約半数が何らかの形でRPAの活用に取り組んでいることが分かった。

 「現在は導入していない」としつつも、「導入していないものの興味はある」と回答した割合は27.2%だった。一方で「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」と「導入の検討やトライアルの後に取りやめた」の回答割合を合わせると23.1%になり、895件のうち200件で「RPAを導入しない」と判断していることが分かった。

RPA向きの作業があっても、3社に1社は自動化していない

 RPA導入のメリットは、定型的な入力作業を自動化して業務効率を上げられる点にある。導入の予定がない企業や導入をやめた企業は、RPAが真価を発揮する定型作業の自動化が不要なのか。そこで業務の中にどの程度「繰り返し作業」や「単純な確認作業」「定型的なデータ入力」があるのかを聞いたところ、「ほとんどない」と回答したのは8.4%にすぎなかった。

図2.業務内での「繰り返し作業」「単純な確認作業」「定型的なデータ入力」の頻度(n=895)

 定型業務が「業務の大半を占める」という回答と「業務の半分くらいを占める」の回答割合を合わせると42.5%になるが、これは図1でRPAを「本格展開完了」もしくは「本格展開中」とした回答割合(27.6%)よりも高い。

 さらに「ごく一部に存在する」の回答も合わせると、91.7%で業務で何らかの定型作業がある。一方で本格導入やトライアル、検討などでRPAに取り組んでいると回答したのは全体の49.7%だった(図1)。つまり回答895件のうち、少なくとも300件以上がRPAを使わずに定型業務を処理していると推測できる。

それでもRPAを「導入しない」のはなぜ?

 調査結果によれば、回答者のうち247件がRPAを本格展開している。これは、前述した「RPAを使わずに定型業務を処理している件数」よりも少ない。定型業務があってもRPAで自動化しない理由をフリーコメントで募ったところ、以下のような声が寄せられた。

「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」とした理由

  • メリットになる業務が少ない
  • コストパフォーマンスが悪い
  • 経営層が必要性を理解していない
  • よく分からない
  • 参考となる成功事例が少ない

「導入または導入を検討したが、取りやめた」とした理由

  • 紙伝票の処理が多く、RPAでの自動化に向いていなかった
  • 検討してみたところ、自動化できる単純作業が意外に少なかった
  • ベンダーから売り切りで購入した後に社内業務の仕様変更に対応できなくなった
  • 社内からの抵抗

 上記からは、RPAに関する知識や理解不足、業務フローの整備、社内開発体制などがボトルネックとなって、業務の自動化が難しくなっている現状が見える。一方で「システム改修のほうが効率的」という意見もあり、RPAを万能の「魔法の杖」とせずに、従来手法と比較した上で採用/不採用を判断している企業があることも分かった。

 次回の第2回 「RPA安定稼働まで8カ月」に悶絶する企業も……トライアル企業、導入企業の超えられない“RPAの壁”とは?では、業種や企業規模ごとの導入状況を詳しく解説する。

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