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国内データセンター市場予測、IDC Japanと富士キメラ総研を比べてみた

国内データセンター市場の成長が続いている。IDCと富士キメラ総研がそれぞれ発表した予測を比較した。2社の見通しから見えるデータセンターの実態と未来とは。

» 2021年06月24日 11時00分 公開
[キーマンズネット]

 クラウドサービスの普及に伴い、国内データセンターの市場は好調が続いていた。そこにコロナ禍が拍車をかけ、2020年の同市場は対前年比で大きな伸びを見せた。

 2021年6月15日にIDC Japanが、同月18日に富士キメラ総研がそれぞれ発表した同市場に関する予測を比較する。成長分野と目される同市場には、2025年までに何が起きるのか。

IDCは「データセンター事業者の投資は一段落」と予測

 IDC Japanは、国内データセンター事業者のデータセンター投資予測を発表した。これはデータセンターの建物や電気設備、冷却システムなどの新設や増設にかかる投資額を調査するもので、同社の予測によれば、2021年の投資額は2020年に急増した反動によって微増にとどまる。

 国内事業者によるデータセンターの新設や増設投資は、2020年に前年比64.1%増と急増した。この反動によって、2021年は4.3%増と小規模な増加となり、投資規模は1712億円となる見込みだ。ただし、クラウドサービス向けハイパースケールデータセンターの建築が続くため、2022年以降も増加傾向は継続し、2025年の投資規模は3000億円に近づくと予測する。

 ハイパースケールデータセンターの建築投資は以前から増加傾向にあったが、コロナ禍がクラウドサービスの需要に拍車をかけた。IDC Japan の伊藤未明氏(ITサービス リサーチマネージャー)は「不動産投資の成長分野としてデータセンター建設が注目され、投資マネーが流入している」と分析する。

2020〜2025年の国内事業者データセンター新設/増設投資の実績値(2020年)と予測値(それ以降)(出典:IDCの発表資料)

富士キメラ総研の予測する「絶好調市場」と「縮小市場」

 一方、富士キメラ総研の予測によれば、2020年の国内データセンター市場規模は対前年比8.9%増の2兆4462億円だった。2025年には3兆3367億円に拡大すると予測する。

XaaSがけん引、ホスティングとハウジングは明暗

 市場拡大をけん引したのは、外資系クラウドベンダーのIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)だ。IaaS/PaaSの市場規模は、対前年比26.3%増の7621億円だった。同市場は2021年以降もIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などへの投資によって拡大が続き、2025年の市場規模は2019年比2.4倍の1兆4472億円になると富士キメラ総研は予測する。

 SaaS(Software as a Service)やDaaS(Desktop as a Service)、通信回線サービスもテレワーク需要の拡大に伴い成長した。富士キメラ総研は2020年の通信回線サービスの市場規模を、2019年比9.4%増の1447億円と見込む。今後はハイパースケールデータセンターの新設が続いて回線数や通信量が増加すると想定され、2025年の市場規模は2019年比58.0%増の2090億円を見込む。

 クラウド移行に伴ってホスティング市場は需要が減少する。2020年の市場規模は、対前年比2.4%減の2988億円となる見込みだ。一方でハウジングは、既存システムの拡張やIaaS/PaaSに移行できないシステムの運用、IaaS/PaaSとのハイブリッド利用などで需要が底堅い。2025年の市場規模は、2019年比14.4%増の6260億円と予測する。

データセンター特化型サービスがSIer系を超える

 事業者別に見ると、2020年の伸びが最も大きかったのはデータセンター特化系(サービス)で、市場規模は対前年比30.4%増の8481億円だった。クラウドサービスの需要増加に伴って今後も成長が続き、2025年には2019年比2.7倍の1兆7400億円に拡大する見込みだ。

 SIer系の2020年市場規模は、対前年比0.5%減の1兆3120億円だった。ハウジングからIaaS/PaaSへの移行や外資系クラウドベンダーによるIaaS/PaaSの展開強化、共同利用市場の成熟などによってSIer系市場は微減が続く。同市場は2023年にはデータセンター特化型サービスよりも規模が縮小し、2025年の市場規模は2019年比4.2%減の1兆2637億円になると予想する。

金融で需要増、製造や流通などでも堅調に伸び

 ユーザー業種別に見ると、2020年の伸びが最も大きかったのは金融業だった。FinTech関連や証券業界を中心とした基幹系業務システムのバックアップ整備などで利用が増え、市場規模は対前年比9.6%増の7583億円だった。外資系金融企業がアジア圏の主要システムを日本に移行させるケースも増えており、新規需要の増加も期待される。金融向けのデータセンター市場は2025年に2019年比54.4%増の1兆677億円に拡大すると予想する。

 製造業においてはコロナ禍の影響で一部に設備投資を抑制する動きがある。ただし営業業務の改革やフロントシステムのクラウド化、いわゆる「2025年の崖」対策としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)関連向けは順調な伸びを見せる。2020年の市場規模は対前年比8.0%増の4599億円だった。2025年は、2019年比42.6%増の6073億円と予測する。

 流通/サービス業は、非対面や非接触への取り組みに向けてクラウドサービスを利用するケースが増加している。特に物流やスーパーなどの小売業での需要が増え、2020年の市場規模は対前年比9.3%増の6091億円。2025年は、2019年比40.7%増の7841億円となる見込みだ。

2社の予測から見えること

 富士キメラ総研の予測によれば、国内データセンターはさまざまな業界で需要が伸びる。クラウドやデジタル化の需要に基づいて2025年まで順調に市場拡大が続く見込みだ。IDC Japanも同様の予測に基づき、データセンター事業者の投資も伸びると見ている。ただし不動産投資としての注目度が高く、2021年は前年度の急伸の反動で一時的な落ち着きを見せる。2社の予測からは、需要の拡大を見越した投資が進んだことから、当面の需要増に対応する投資は2020年でおおおむね完了した様子が見える。

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