テレワーク全盛時代に移り、顔を合わせて感謝を伝え合う機会が少なくなった。従業員が互いに離れた場所で働き、特に何のリアクションもなく、個人の担当業務をただ淡々とこなすだけでは、モチベーションも上がらないだろう。
従業員のモチベーション低下を防ぎ、仕事に対するモチベーションアップに貢献する人事施策の一つとして「ピアボーナス」(注)がある。「ボーナス」と言っても、給与や成果報酬とは異なるものだ。本特集では、海外を中心に広まりつつあるピアボーナスの基礎解説と期待できる導入メリット、自組織で運用する際の注意点などを解説する。
ピアボーナスとは、「手伝ってくれてありがとう」「困った時にアドバイスをくれて助かったよ」など、感謝の気持ちとして少額の金銭を従業員間で贈り合う仕組みのことをいう。「Peer to Peer Bonus」が語源だ。
これまでにも会社への貢献に対する報奨制度として、会社側が従業員に「インセンティブポイント」や「社内通貨」などを贈る仕組みがあったが、ピアボーナスは会社側が従業員を評価するものとは異なり、従業員同士がささやかな金額もしくは換金できるポイントを気軽に贈り合い、互いを奨励し合うものだ(図1)。
例えば、毎週400ポイント、毎月1600ポイントなどといった単位で会社からピアボーナスポイントが支給され、「この人には30ポイント」「あの人には大変助けられたから100ポイント」といったように、個人の裁量でメッセージとともに感謝の気持ちとして従業員間でポイントを贈り合う。
ピアボーナス運用を可能にするWebサービス「Unipos」(ユニポス)では、贈られるメッセージやポイントのやりとりは公開され、それを見て共感、賛同した他のユーザーは「拍手」を送ることができる。1拍手でメッセージを送った人と送られた相手の双方にポイントを贈ることが可能だ。
蓄積された保有ポイントは、「1ポイント=1円」として換算して給与に加算したり、社内での購買(社食など)や社員旅行の自己負担金への充当、社会貢献団体への寄付などに利用したりもできる。ポイントの原資は会社が負担し、支給ポイント量やポイントの金額換算レートは利用企業の制度設計によって柔軟に決めることができる。
ピアボーナスはもともとGoogleが組織強化のために考え出したもので、GoogleのOKR(Objectives and Key Results:目標と評価指標)型業績評価手法を補完する社内制度として生まれた。
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