あしたのチームの調査によれば、若手の従業員ほど「テレワークをやめたい」と考える傾向にあるが、その具体的な理由は何か。一方、部下を持つ管理職も“顔が見えない”中での人事評価に戸惑う傾向にあったが、各企業はどのような工夫をしているのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でテレワーク時代に突入したが、オフィスに出社していた時と比較して不便があったり、ときには不安を感じるケースもあるだろう。また部下を持つ管理職であれば、テレワークによって人事評価に影響が出ていると考える場合もあるかもしれない。
あしたのチームが300人の管理職および一般職員を対象にした調査結果からもそうした企業の状況が伺えた。調査によれば、若手の従業員ほど「テレワークをやめたい」と考える傾向にあるが、その具体的な理由は何か。一方、部下を持つ管理職も“顔が見えない”中での人事評価に戸惑いを感じている。各企業はどのような工夫をしているのか。
あしたのチームは5月18日、「コロナ禍のテレワークと人事の課題に関する調査」(調査期間:2021年4月23日〜26日)の結果を発表した。同調査は、全国の20〜50歳代の会社員で2020年3月〜2021年3月に平均週2日以上テレワークをした一般社員と平均週2日テレワークをした部下がいる管理職を対象とし、実施したものだ。一般社員と管理職それぞれ150人から有効回答を得た。
まず、テレワーク時における、上司と部下のコミュニケーションに関する項目から見ていこう。コミュニケーション手段は、「オンライン会議」と回答した人の割合が最も高く82.7%(複数回答)だった。次いで「メール」が75.7%、「電話」が63.7%。2020年3月に実施した同様の調査では、「メール」(87.3%)、「電話」(70.0%)、「オンライン会議」(67.3%)の順で、この1年で「オンライン会議」が大きく増えた。
こうした手段でコミュニケーションをとるようになり、若手の従業員を中心に「やりにくさ」や「孤独」を感じることもあるようだ。調査でも、テレワークをやめたいと思ったことがあったと回答した割合は、20歳代が最も高い(図1)。具体的には、テレワークをやめたいと思ったことが「よくあった」と回答した割合は19.6%で、「時々あった」は47.8%で、合わせて67.4%が「テレワークをやめたい」と感じていた。年代が上がるほどテレワークをやめたいと思う割合は減る傾向にあり、50歳代では、「よくあった」は10.4%、「時々あった」は39.6%だった。
20歳代の人がテレワークをやめたいとした理由としては、「業務上の不便が多い」(45.2%、複数回答)、「気軽に相談しにくい」(35.5%)、「仕事が単調になりがち」(32.3%)「孤独だから」(29.0%)、「上司、部下、同僚とお互いに仕事ぶりが見える方が安心だから」(29.0%)などが挙がった(図2)。
2020年3月の調査では、36.7%の従業員がテレワークについて「人間関係のストレスがなく気楽」と感じていたことを考えると意外な結果とも見れる。あしたのチームでは、最初は気楽と感じていたテレワークだが、上司や先輩に気軽に相談できないことや、近くで仕事ぶりを見てアドバイスをもらえないことに不安や焦りを感じ「テレワークをやめたい」と思うようになったと見ている。
一方、管理職もテレワークによって部下の働きぶりが見えないことで、人事評価がしにくくなったと感じているようだ。
管理職を対象にテレワーク時の人事評価について聞いた質問では、「オフィス出社時と比べて難しい」と回答した人の割合は61.1%に上った(図3)。その理由のトップ3は、「勤務態度が見えない」(62.1%、複数回答)、「成果につながる行動を細かく把握しづらい」(58.6%)、「勤務時間を正確に把握しづらい」(41.4%)だった(図4)。
だがあしたのチームは、2020年3月に実施した同様の調査と比べると、「オフィス出社時と比べて難しい」と回答した割合は12.6ポイント減少し、各理由の回答割合も減ったとしている。同社は、この1年間でテレワーク業務に慣れ、人事評価の運用方法を見直したことで、テレワークでもオフィス出社時と同じように人事評価を実施できるようになってきたのではないかと見ている。
テレワーク時の人事評価が難しい理由としてトップに挙がった「勤務態度が見えない」ことについて、企業はどのような対策を講じているのか。この理由を挙げた人を対象に、実施した対策を聞いたところ、「チームでのミーティング(オンライン含む)の回数を増やした」が最も多く34.6%(複数回答)だった。その次に「毎日スケジュールやタスクを共有するようにした」(30.0%)、「1つの業務の開始・終了など、細かく業務を報告するようにした」(25.4%)などが続いた(図5)。こうした対策によって、約8割の人が、お互いの勤務状況が見えやすくなったと答えている。
だが、各自の取り組みだけでなく人事評価制度そのものの変革も必要とされている。人事評価制度について、テレワークに合わせた改訂の必要性では、改定が必要だと考えている人が82.9%を占めた。だが、実際にテレワークに合わせて人事評価制度が改定されたと回答した人の割合は14.4%だ(図6)。「まだ改定していないが検討中・準備中」と回答した25.5%を考慮しても、人事評価制度の改定が遅れている実態が明らかになった。
あしたのチームでは、テレワークによって管理職が部下の近況を知る機会が少なくなり、部下の表情や雰囲気などからの情報も得られなくなることで、部下のSOSの気配や変化を見逃してしまうことがあると指摘し、若手従業員のテレワーク継続期間が長くなっている企業では、若手従業員を支えるケアが重要だとしている。
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