「テレワークの利用ツール」に関する調査では、テレワークで使い始めたツールの中でもWeb会議やビジネスチャットといったコミュニケーションツールが新規導入、利用で人気を集めていることが分かった。
キーマンズネット編集部は、2020年4月3〜17日にわたり「テレワークの利用ツール」に関する調査を実施した。
今回はテレワークに当たって「日常的に使用したツール」「新たに使用を開始したツール」などを調査した。調査結果では、テレワークになってから新たに導入したツールの継続利用意向が約7割に及ぶことが分かった。
前編では、全体の8割でテレワーク経験があることと、テレワーク実施済み企業の3割が生産性の低下を感じていることといった課題観を取り上げた。後編となる本稿では、テレワーク環境でのツールの利用実態についてより深堀りし、長期化するテレワークで何が求められているのかを推察したい。
はじめに、テレワークに当たり“日常的にストレスなく”使用しているツールは何かを聞いたところ「web会議ツール」が69.8%、「ビジネスチャットツール」が60.0%、「執務環境へのVPN接続」が52.2%、「クラウドストレージ」が48.8%と続く結果となった(図1)。
これら上位の項目は、前編で紹介した「テレワークに当たり会社から使用許可が下りたら使いたいツール」で上位に挙がった項目と同様だ。この結果からテレワーク環境ではこの4項目が有効なツールとして認知されていることが分かる。対面でのコミュニケーションができない中で、チームメンバーや社外の人とどう適切なコミュニケーションをとるか、オフィスでの勤務と同等レベルに情報へのアクセスが確保できているかなどがテレワークを“成功”させる条件となっているようだ。
次に、これまで使用していなかったがテレワーク実施に伴い“新たに使用を開始したツール”を聞いたところ、1位は「web会議ツール」26.2%、2位は「ビジネスチャットツール」17.1%、3位は「執務環境へのVPN接続」11.0%、4位は「リモートデスクトップ」8.5%と続いた。先述した通り、テレワーク環境では「コミュニケーション」と「アクセスできる情報量」「情報へのアクセススピード」が重視されており、これらのニーズと相性の良いIT製品・サービスの活用が進んでいるようだ。では、実際に新しく導入したツールへの評価はどうなっているのだろうか。
1つの指標として、ツールの継続利用意向を聞いたところ、69.5%が継続を希望していることが分かった(図2)。
しかし、回答の詳細では「同じツールを使い続けたい」という回答はリモートデスクトップがより多く、これまでの質問で利用している回答が集まったビジネスチャットツール、Web会議ツールは「機能としては必要だが別ツールを使いたい」という回答が多い傾向となった。
ビジネスチャットツールやWeb会議ツールは比較的利用頻度が高く、利用者数も多い。多くのユーザーの目に触れるため、使い勝手をより厳しく見られていることが分かる。また、市場に展開されているサービスも多いため、ユーザー側が乗り換えを検討しやすくもある。
「機能としては必要だが別ツールを使いたい」とした回答者にフリーコメントでその理由を伺ったところ「(Web会議ツールの)セキュリティレベルがベンダーによって違いすぎる」「複数のメールやチャットにコミュニケーションツールが分散している。使いやすいものに統一したい」「会社指定のWeb会議ツールはいつも回線が混雑しており使い勝手が悪い。別のWeb会議ツールを導入したらスムーズに会議ができた」「無料で使えるものがいくつもあるので性能を比較しているところだ」という声が寄せられた。
現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止策として実施されているテレワークだが、今後も日常的にテレワークを継続したいか、現在取り組んでいない回答者には日常的に取り組んでみたいかを聞いたところ、83.4%が継続したいと回答した(図3)。
前編でも触れた通り、テレワーク実施企業の業務生産性については、実施済み企業の約7割がテレワークによって通常通りまたは通常以上に業務に取り組めているという評価を下していた。
生産性に悪影響がないのであれば、従業員の通勤コストやオフィスなどインフラ整備に掛かるコストの軽減に加え、働き方改革による従業員満足度の向上など複数の側面から、テレワークの継続はメリットが大きい。
一方、テレワークの体制構築にはそれなりにコストと時間が掛かることも事実だ。先述した「コミュニケーション」「アクセスできる情報量」「情報へのアクセススピード」をオフィスでの業務時と同様に確保するためには、ネットワークインフラや業務用端末、セキュリティの整備は最低限必要だ。加えて、テレワークが可能な部門とそうでない部門の不公平感が生じてしまう“部門格差”問題の解消や、労務管理や人事評価の新たなルール制定など制度面での変革も進めなくてはならない。
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