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テレワークの利用ツール状況(2020年)/前編

「テレワークの利用ツール」に関する調査では、テレワークに取り組んだ回答者の3割が生産性の低下を感じていることが分かった。テレワークで使いたくないツールを聞いたところ、働きづらさを感じる理由も見えてきた。

» 2020年05月07日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部は、2020年4月3〜17日にわたり「テレワークの利用ツール」に関する調査を実施した。

 今回はテレワークの「実施経験」をはじめ「実施後の感想」「使いにくかったツール」に「使いたいツール」など、企業のテレワークの実態を調査した。調査期間中に緊急事態宣言が発令されるたこともあり、全体回答者205人の80%がテレワークを「実施したことがある」と回答した。しかし、実施済み企業の30.5%は「業務が捗らなかった」と回答し、課題も少なくない現状が見て取れる結果となった。

8割テレワーク経験有りだが「業務が捗らなかった」声も

 2020年4月、新型コロナウイルス感染症対策のため、政府がテレワークなどを要請する緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大した。企業は感染拡大防止、従業員の安全確保を最優先に考えながらも事業継続の計画や実行に追われ、テレワークへの取り組みが急務となった。本調査では、はじめにテレワーク実施経験の有無を聞いたところ、80%が「ある」と回答する結果となった(図1)。

図1 テレワーク実施経験の有無

 テレワークに取り組んでみた感想を尋ねたところ、全体の29.8%が「出社時と比べ特に変わらなかった」、26.3%が「出社時と比べ業務が捗った」、24.4%が「出社時と比べ業務が捗らなかった」と回答した(図2)。テレワーク実施済み企業のみを対象に見ると「出社時と比べ特に変わらなかった」が37.2%、「出社時と比べ業務が捗った」が32.3%、「出社時と比べ業務が捗らなかった」が30.5%となった。実施済み企業の約7割がテレワークでも通常通りまたは通常以上の業務生産性を発揮できたことになる。一方で、約3割は「出社時と比べ業務が捗らなかった」と感じていることが明らかとなった。リモートワーク環境や業務内容、役職などによっても差異が出てくるのだろうと推察できる。

図2 テレワークに取り組んでみた感想

テレワークの生産性低下……何が原因?

 出社時と比べリモートワークで業務が捗らないという回答の背景に、使用するツールが影響している可能性もありそうだ。そこで、テレワークで「使いにくかった」または「使わなかった」ツールについて聞いたところ、1位は「業務端末の稼働監視ツール」26.3%、2位は「クラウド型のプロジェクト管理ツール」18.5%、3位は「仮想デスクトップ」「Web会議ツール」が同率で17.1%と続いた(図3)。その理由はなぜだろうか?

 具体的な理由としては、業務端末の稼働監視ツールは「行動を監視されているので抵抗がある。もともと裁量業務であり成果で評価されるのでテレワーク中は業務の開始、終了程度の報告で十分」「オフィス勤務時以上に監視されている。日本企業の悪癖だ」といった、リモート環境で過剰な監視を受ける抵抗感に加えて「稼働監視をしたところで業績を上げることにはつながらない。業績に関係ない管理業務やコストを増やすことには賛成できない」といった指摘もあり、費用対効果の面を疑問視する声が少なくなかった。

 プロジェクト管理ツールは「メールやチャット、SNSに情報共有ツール、各システムなど多方面で通知や確認すべきところが多過ぎてプロジェクト管理ツールの確認や更新に時間を掛けていられない」「プロジェクト管理ツールを導入したが、書き込む内容が多く管理が煩雑になった(結局やめた)」など、リモート環境下で過剰となるコミュニケーションへのストレスもあらわとなった。ツールが多くなり過ぎた結果、せっかく導入したのに使わなくなるケースも見られた。

 その他にも、仮想デスクトップは「データ通信量によってスループットが悪くなること」への不安、Web会議ツールについても「ネットワークによる音声品質が不安定」な点などに不満の声が寄せられた。

図3 テレワークで使いにくかった/使わなかったツール【複数選択可】

実は使いたかったあのツール……1位は?

 テレワーク実施に当たり、会社から使用許可が下りたら“使いたい”ツールについても聞いた。調査結果によると、1位は「ビジネスチャットツール」で27.3%、2位は「Web会議ツール」で25.9%、3位は「クラウドストレージ」で24.9%と続いた(図4)。

 ビジネスチャットは「ちょっとした確認を含め、円滑に業務を進められそう」「チャットツールがあれば移動中でもちょっとした会話ができる」などメールや電話にない“気軽さ”に期待する声が多かった。また、同僚がオンラインかどうか把握できるという特性も「孤独感を緩和できる」など、リモートワークならではのストレス解消に一役買っているようだ。Web会議ツールも同様に「対面に近い状況でコミュニケーションできるため」といった意見が寄せられ、リモートワークではコミュニケーションの不自由さを解消したいという意識が強いことが伺える。

 他にも「職場のファイルサーバにアクセスできないと必要な資料の閲覧に支障があるため、VPN接続で入りたい」「メールに添付できるファイルのサイズに制限があるので、執務環境へのVPN接続でファイルサーバにアクセスするか、クラウドストレージにファイルをアップロードできれば便利」など、大容量ファイルや取り扱いに注意が必要なデータの使用をリモート環境下でも安全に実現できる環境整備を求める声が集まった。

図4 テレワークで使いたいツール【複数選択可】

 ここまでの意見をまとめると、出社勤務と同等かそれ以上に情報へのアクセスやコミュニケーションの量やスピードを上げるような施策が求められているようだ。

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