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課題山積みのまま増大する投資、企業のDX意欲は高いが実態は?

企業のDX投資への意識は高水準を保つ。特に業務改革を進めるDX先進企業は、従業員の「報酬以外」に対するモチベーションが後進企業よりも高いという。DX後進企業との違いは。

» 2021年08月24日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 コロナ禍は世界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を早めたと言われる。企業のDX推進意欲は高く、DXへの投資を継続かつ拡大させる企業も多い。

 一方でDXを企業戦略と全体的、長期的に連携させている「DX先進企業」と、部分的、短期的にのみ連携している「DX後進企業」には、取り組みの方向性に差があった。

DX投資”大幅増額”の内訳は? 先進企業と後進企業の違い

 IDC Japanは2021年8月10日、国内企業のDXに関する動向調査の結果を発表した。同調査は、DXを実施している国内企業でDXに関わっているマネジャー以上の150人を対象に、DX戦略や戦術、予算、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)、課題、組織/文化、IT基盤などを聞いたもので、2019年と2020年に続いて実施したものだ。

 2021年の調査では、DXへの支出/投資を「継続する」とした企業が9割強を占め、そのうち「増加させる」と回答した割合は67%あった。DXへの支出や投資金額を聞いたところ、対前年増加率は平均で24.6%だった。

企業のDX支出や投資は増額トレンドにある(出典:IDCのプレスリリース)

 DXの取り組み状況を見ると、DX先進企業の割合は、対前年調査比4.5ポイント増の56.0%だった。IDCは「ビジネス戦略とDX戦略を一致させることを『当然』とする企業が増えている」と述べる。

 DX先進企業に「DXを実現する際の重要な組織文化」について聞くと、DX後進企業よりも「組織全体にわたる新規技術への親しみ」や「従業員に全ての権限を与える」といった”動機付け要因”に関する回答率が高かった。また「心理的安全性」の醸成に取り組んでいる割合もDX後進企業と比べて15ポイント高く、56%に上る。IDCは、心理的安全性の醸成によって「既存事業の改革や新規事業の創出などが期待できる」としており、今後もDX先進企業において同比率が高まると予想する。

 DX後進企業に「DXを実現する際の重要な組織文化」を聞いたところ、DX先進企業よりも「適切な報酬」と回答した割合が高かった。IDCはこれを”満足度要因”と解説する。

 DX推進上の課題については「必要な技術を持った人材の不足」や「リーダーシップの不足」「長期的なロードマップや計画が描けない」「保守的な組織文化」などの項目が上位に挙がった。IDCは、DX推進における本質的な課題を「社内のビジネスと組織文化に精通した技術人材の不足」と推察する。

 IDC JapanでITサービスのリサーチマネージャーを務める山口平八郎氏は「国内企業は、既存事業に余力がある今、全社が一丸となってデジタルを駆使し、様変わりする消費者や顧客企業、パートナー、エコシステム、自然環境、地政学的要因などの『外部環境の変化』に意識を向け、新しい現実を洞察し、次の柱となる事業を生み出さなければならない」と述べている。

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