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才能にお金を出したい企業、ただし「欲しい人材」に限る

コスト削減によって浮いた資金をどうするか。投資先を間違えなかった企業の業績をガートナーが公開した。

» 2021年10月26日 07時00分 公開
[Caroline ColvinHR Dive]
HR Dive

 Gartnerのレポートによると、2020年に「ターゲットを絞った人材投資」に注力したS&P 500企業の業績は、コスト削減に注力した企業を上回った。

「才能への投資」は報われる、ただし……

 GartnerのHRプラクティス調査チームは2021年7月に、S&P500企業の業績発表をレビューした結果を公表した(注1)。それによると、2020年の第1四半期にコスト削減を実施し、人材へ投資した企業は、第4四半期の平均収益が8.2%増加し、業績が回復した。

  • 人材に投資した企業の8.2%の上昇は、5億ドル以上の収益増加に相当する。
  • S&P 500企業の48%が、従業員の福利厚生とウェルビーイング(well-being)に重点を置いて、2020年にかけて少なくとも1つの人材投資機会に資金を投じている。

 Gartnerのセイダ・バーガー・ベッカー氏(HRプラクティス ディレクターアナリスト)は、発表の中で「コスト削減と大胆な人材投資機会のバランスは、組織の継続的な成長能力を保護するために不可欠だ」と語る。

 米国の人材紹介企業Allegis Partnersのジョン・アンダーソン氏(HRプラクティス マネジングディレクター)は、特にエグゼクティブサーチの領域で、新たな活況が見られるという。「2021年の最初の6カ月で、2020年よりも多くの採用実績を挙げた」とアンダーソン氏はメールで述べ、2020年末に検索速度が向上したことを指摘している。

 アンダーソン氏はベッカー氏の所感に同意し「クライアントがこれまでよりもはるかに迅速に意思決定を行っている」と語る。「経済は堅調だ。多くの新興企業やベンチャーキャピタリスト、プライベートエクイティマネー、そしてイノベーションが存在する。これら全ての要因が人材採用の必要性を生み出している」(同氏)。

 本発表の中でも、従業員のウェルビーイングに関するデータは注目に値する。Gartnerのレポートによると、2020年にはパンデミック前の業績発表よりも「従業員の福利厚生」が約5倍の頻度で言及された。同様に、「従業員のウェルビーイング」については6倍の頻度で言及された。

 「企業は、パンデミックの長引く影響に対処し続ける中で、従業員のウェルビーイングを支援することがビジネス全体に良い影響を及ぼすと認識しなければならない」とGartnerのマティアス・グラフ氏(HRシニアディレクターアナリスト)はプレスリリースで述べている。アンダーソン氏は、人材を戦略的なビジネスの優先事項に組み込むことが「最優先事項」であり、現在の従業員への投資が「中核」だと付け加えた。

 「これにより、多額の採用投資コストをかけずとも、従業員の生産性や満足度、ロイヤルティーを高められる」(アンダーソン氏)。Gartnerの調査によれば「全体的なウェルビーイングサポート」によって従業員の自発的努力が21%向上するが、この割合は、物理的および財務的プログラムのみを提供する企業の2倍に当たる(注2)。

 フレッシュ人材を獲得したい企業に朗報がある。ネットワーキングプラットフォームのTalloによる調査では、Z世代(1996年から2015年ので生まれた世代)にとって「容易にアクセスできる従業員向けのメンタルヘルスリソース」が魅力であると示されている。同調査では20%が「雇用主がニューロダイバーシティ(神経学的多様性)を伴う従業員のためのリソースを欠いたため応募を見送った」と回答した。同様に、回答者の80%は「ニューロダイバーシティを伴う従業員向けの資料を持っている会社に応募する傾向がある」と述べる。

 これらの洞察を合わせると「人材への投資」はビジネスに恩恵をもたらすと期待されることが分かる。

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