数年来のブームが落ち着き「期待外れ」の声もささやかれたRPAだが、メディアで取り上げられるような一部の企業でしか効果を出せないものなのか。導入ユーザーのコメントなどを基に、RPAが期待はずれと言われる“本当の理由”と、RPAをより賢く使うためのヒントを探る。
2020年には幻滅期の底を脱して普及期に移ったとされるRPA(Robotic Process Automation)。今後はAI(人工知能)などのテクノロジーを組み合わせた「ハイパーオートメーション」分野でのさらなる需要拡大が期待される。
本連載(全5回)では“RPA活用の現在地”を探るため、キーマンズネット編集部が実施したアンケート調査(2021年9月16日〜10月8日、有効回答数378件)を基に、RPAの導入状況と社内各部署への展開状況、問題点や得られた成果など、RPA活用の実態を分析する。
数年来のブームが落ち着き「期待外れ」の声もささやかれたRPAだが、メディアで取り上げられるような一部の企業でしか効果を出せないものなのか。第2回となる本稿では、RPAを本格展開する際の課題や弱点を基に、RPAが期待はずれと言われる“本当の理由”と、期待RPAをより賢く使うためのヒントを探る。
RPAの導入率を紹介した第1回では、2020年に実施した前回調査で12.6%だった「トライアル実施中」が今回は11.6%に、「本格展開中」は21.3%から30.2%に、「本格展開完了」は6.3%から9.8%となり、トライアルで展開イメージをつかんだ企業が展開に移り、展開中だった企業が展開完了に進んだ割合が増えたと考察した。だが、RPAの導入に足踏みする企業も一定数存在する(図1)。
RPA導入の障壁は幾つも考えられるが、調査結果からは開発スキル人材の不足や業務の棚卸しなどの負荷、投資対効果を算出する難しさなどが特に深刻な課題であると明らかになった。投資対効果の課題は「一度は導入したが取りやめた」とした回答者からも挙がっており、「導入時に手間が掛かり、適応範囲が思ったよりも少なく工数削減にならなかった」「RPAによって自動化できる業務が少なかった」「対象業務が見つけられなかった」などの声が寄せられた。
以上は第1回で考察した導入フェーズの障壁だが、RPAを本格展開する際もこうした問題は付いて回る。RPAの導入プロジェクトは一部門あるいは任意の業務で成果を出した後に横展開することが定石だが、ライセンス費用やサポート費用だけでなく、開発したRPAを保守、運用する工数も鑑みて利益を算出しなければならない。こうしたハードルが期待外れという意見につながっているようだ。
以下は、「RPAを本格展開中」の企業の読者から寄せられたコメントだ。
弊社のデータ整備作業は煩雑なのでRPAで自動化するには向いていない。向いていない旨を上司には知らせているが会社側の意向でRPA化を進めざる得ない状態にある。現状は、かなり無理をしてRPA化を行っているが、開発工数がシステム開発をした場合の開発工数と比べてもメリットが出ない状態になっている。また、掛けた工数のわりに削減工数が小さい場合が増えてきており、現場からの要求に対して自動化不可の返事をするケースが増えてきた。RPA化が工数削減の金字塔のように思われている節があるが適応業務を選ばないと効果は上がらない。RPA化してメリットがある作業がどこの企業にも大量にあるわけではない事を考えると、導入するにしても対象業務がどの程度あるのかを正確に把握しておくことが必要だと思う。対象業務が少ない場合はRPAの導入はしないという判断も当然必要だろう。
RPAを導入済みとした企業に本格展開時の課題を聞いた質問でも「業務の一部しか自動化できない」(43.7%)という項目は2番目に多い回答を集め、費用や工数を回収するだけの効果がある業務を継続的に抽出する難しさが伺えた。他にも、「ロボットのスキルを持った人がいない」(46.1%)、「ロボットが停止する」(37.4%)、「ロボットの管理が煩雑」(28.2%)など、“RPA幻滅期”に指摘された課題が上位に挙がっている。
RPAブームの初期と言われる2016〜2017年頃は、「業務部門でも扱えるシンプルさ」が注目を集め、エンドユーザーが主体となってPC操作の置き換えを中心に自動化を進めるボトムアップ的なアプローチが主流だった。しかし、こうした小規模なRPA導入を経験した企業が次のフェーズを見据えた際に、自動化できる範囲の限界や人材不足、機能的な制限、運用の負荷といった課題に直面し、全社的な展開の難しさを感じているという見方もある。
こうした状況に対し各RPAベンダーやSIerは、組織横断的に自動化を進めるノウハウとして、業務プロセス改革を含めたロードマップの作り方や、CoE(Center of Excellence)のような体制の整備の仕方を発信している。さらに、「ハイパーオートメーション」という新たな概念の下、RPAだけでなくAI(人工知能)や他のサービスとの連携機能を拡充し、総合的なオートメーション機能を実現するとしてアピールしている。
このような風潮の中で、RPAを自動化の一つの手段として賢く活用するためには、RPAの特性を正確に知ることが重要だ。アンケートでは、RPAを導入しているユーザーを対象にRPAのメリットとデメリットを聞いた。寄せられた意見はあくまで個人の所感であり、特定のツール固有の問題について言及したものも含まれているので、RPAの特性として一概にまとめることはできないが、使ってみなければ分からないような“臨場感のある”感想が多く寄せられた。特にデメリットとして挙げられた課題は、RPA導入の可否や選定するツールを検討する際に留意しておきたいポイントして参考になる。以下で紹介する。
<保守性>
<機能的な限界や利便性>
<コスト>
<開発工数>
<業務自動化による工数削減>
<コスト>
<ツールに依存した利便性>
<開発工数、スキルの教育>
これらはあくまで個人の意見ということに留意いただきたいが、RPAやベンダーごとの強みを理解し、全社的な業務プロセス改革という命題の中でRPAをどう生かせるのかを検討することが、導入の成否を分けると言えそうだ。
なお回答者の所属部門は「情報システム部門」(33.9%)、「製造・生産部門」(13.2%)、「営業販売部門」(11.1%)、「総務・人事部門」(5.6%)と続く内訳であった。なお、グラフで使用している数値は、丸め誤差によって合計が100%にならない場合があるため、ご了承いただきたい。
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