先行してビジネスチャットツールを活用している企業が感じるメリットや課題、未導入企業が「なぜ使っていないのか」を調べたところ、導入した企業が新たな課題に取り組みつつある一方で、未導入企業の出遅れが深刻化している様子が見えた。
キーマンズネットは2021年12月7日〜12月17日にわたり「コミュニケーションツールの利用状況」に関する調査を実施した。
後編では、新しいコミュニケーションツールによって現場のビジネスがどのように変化したかや企業の課題、導入していない企業の実態などを調査した。チャットツールを「導入して満足している」企業と「導入できていない」企業にある差や、導入した企業が何を実現しようとしているのかなどが明らかになった。
前編では、チャットツールの利用率がコロナ禍の中で急増していることが分かった。コロナ禍をきっかけにコミュニケーションにおける新たな課題が顕在化し、チャットツールの導入が進んでいる大企業ほど課題の背景に「ツールやシステムの仕様に問題がある」と感じる割合が上がる。企業のコミュニケーション課題は、チャットツールでは解決できないのか。
そこで、チャットツールの利用者に対して現在利用しているツールの満足度を聞いた(図1)。
結果は「とても満足」(6.5%)と「まあ満足」(52.3%)を合わせて、58.8%が「満足している」と回答した。「不満」と回答した割合は8.5%にすぎず、チャットツールを導入した企業の9割超が「不満には思っていない」ことが分かる。
チャットツールに「満足している」と回答した理由には、以下のようなものがあった。
おおむね、メールよりも気軽にメッセージを送りあえる仕様を歓迎している様子が見える。メールには「紙の手紙」を踏襲するようなビジネスマナーが残っているため、ユーザーは煩わしさを感じている様子だ。口頭のコミュニケーションのように「業務に必要な要件をピンポイントで伝えられる」点と、メールのように「文章が記録として保存される」点は、まさにビジネスチャットツールの強みと言える。
一方、少数派ながら「不満」と回答した理由には、以下のような声が寄せられた。
情報の分散や通知の割り込みは、チャットツールの利点である「気軽さ」が裏目に出ている点と言える。ツールを使わない/使いこなせていないメンバーがいると、全体の利便性も下がってしまう様子が見えた。
なお、「どちらとも言えない」と回答した理由には「可もなく不可もない」や「何となく使っているが、もっと良いものがある気がする」といった声が目立った。チャットツールを複数種類使うのは情報の分散やセキュリティの面からも避けたいため、どうしても事実上のロックインが発生する。「不満までは行かないが、大満足しているかと言えば返答に困る」というユーザーの本音が見える。
満足度調査からは、課題はありつつも、チャットツールを導入した企業がしっかりと利便性を感じていることが分かった。それでは、チャットツールを導入していない企業の実情はどうか。
そこで、チャットツールを使っていない(ビジネスコミュニケーションは電話やメールのみ)を選択した回答者に導入しない理由を聞いたところ、最も多い回答は「理由は分からないが、導入の検討もされていない」(40.0%)だった(図2)。
8割超の企業が導入し、その9割超が「使ってみれば不満はない」と感じている中で「導入未検討」の企業は、回答全体のおよそ7%となる。既に少数派であり、経営者層がチャットツールの存在や必要性、自社の「出遅れ」を認識できていない可能性がある。それを裏付けるように、「その他」(16.4%)の回答には「経営者がチャットやSNSを嫌っている」というコメントが寄せられた。
ただし、セキュリティに関する理由には「派遣先に端末を持ち込めない」といったコメントもあり、業界や業種によってはチャットツールの活用が必ずしも適切ではないことが分かる。
また、「予算不足」(27.3%)や「従業員のリテラシー不足」(27.3%)「管理者のリソース不足」(12.7%)は、企業がなかなかデジタル推進を進められない理由の“定番”と言える。チャットツールの導入は先述の通り8割超の企業が済ませており、デジタルツールの中では比較的導入のハードルが低いと言えるが「必要性を感じない」といったコメントも複数あった。
ここまでの調査から、メールと電話では補いきれないコミュニケーションをビジネスチャットツールが担い、未導入企業の「出遅れ」が深刻化していること、導入企業はチャットツールありきで次なるコミュニケーションの課題に取り組んでいることが分かる。
最後に、チャットツールに期待する効果や懸念する課題についてもフリーコメントで意見を募った。目立ったのはチャットツールの弱みに対する機能強化で、以下のようなものがあった。
「データがあちこちに分散してしまい、情報の集約に時間がかかる」という課題に対する具体的な要望が多く寄せられ、利用頻度が高いからこそのニーズの高さが伺える。一部にはツールの見直しや作り込み、運用によって実現できるものもある。今後、運用事例が出そろえばこれらも解決に向かうかもしれない。
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