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TeamsがあればYammerはいらない? Microsoft 365の情報共有ツール使い分けのコツ教えて「Microsoft 365」先生!

「Microsoft 365」のツールや運用にまつわる悩みは各社それぞれで、IT部門の担当者や現場がWebサイトなどを調べながら手探りで解決策を模索していることだろう。本連載では、「Microsoft 365先生」がユーザー企業が抱きがちな疑問、質問に答える。

» 2022年07月28日 07時00分 公開
[太田浩史内田洋行]

 「Microsoft 365」のツールマニュアルはあっても個社ごとの「活用マニュアル」はなく、導入後の運用は組織に託される。管理担当者や現場は、手探りで自社に合った使い方やツールの効果的な活用法を模索していることだろう。

 本連載では、Microsoft 365を活用する中で生まれる疑問に対して、“Microsoft 365先生”ことMicrosoft MVPの太田浩史氏が一問一答形式で答える。扱うテーマは、太田氏が毎月開催するMicrosoft 365セミナーの参加者などから多く寄せられる疑問やお悩みごとだ。第1回のテーマは「『Microsoft Teams』と『Yammer』の使い分け問題」だ。

著者プロフィール:太田浩史(内田洋行 ネットワークビジネス推進事業部)

2010年に内田洋行でMicrosoft 365(当時はBPOS)の導入に携わり、以後は自社、他社問わず、Microsoft 365の導入から活用を支援し、Microsoft 365の魅力に憑りつかれる。自称Microsoft 365ギーク。多くの経験で得られたナレッジを各種イベントでの登壇や書籍、ブログ、SNSなどを通じて広く共有し、2013年にはMicrosoftから「Microsoft MVP Award」を受賞。

「Microsoft 365」には「Microsoft Teams」(以下、Teams)に加えて「Yammer」という2つのコミュニケーションツールがあります。どちらもグループでチャットライクにコミュニケーションが取れ、それぞれの機能は大差がないように思えます。TeamsがあればYammerは不要ではないでしょうか?

内田洋行 太田浩史氏

 まず、TeamsとYammerでは「グループ」の呼び方が異なります。Teamsでは「チーム」、Yammerでは「コミュニティ」と呼んでいます。この言葉の違いに、それぞれのサービスが意図する使い方が現れていると考えられます。

 では、チームとコミュニティは何がどう違うのでしょうか。野球で考えてみましょう。「野球チーム」と呼んだ場合、そこには選手が所属し、試合に向けて練習して勝利を目指す姿を思い浮かべます。一方で、「野球コミュニティ」というと、野球やチームのファンなどが集い、交流を目的にワイワイと情報交換のために会話する姿を想像します。このイメージの違いが、TeamsとYammerの違いを表すものなのです。

「チーム」と「コミュニティ」の違いを整理(出典:内田洋行の太田氏作成の資料)

実用を重視する「Teams」、つながりを重視する「Yammer」

 これを仕事に当てはめて考えてみましょう。Teamsのチームではメンバーが協力し合って資料を作成し、プロジェクトの目的を達成するために情報を共有し合ったり助け合ったりします。一方、Yammerのコミュニティでは取り扱う製品などに関連する市場動向や疑問点を共有し合います。

 チームとコミュニティの違いは機能からも読み取れます。TeamsとYammerには「パブリックチーム」と「パブリックコミュニティ」という誰もが自由に参加できるグループを作成できます。その機能の振る舞いにはそれぞれに違いがあります。

 Teamsのパブリックチームは、社内の誰もがチームを検索して探すことができ、興味があれば自由に参加できます。しかし、チーム内の会話はメンバーとして参加しなければ見ることができません。一方、Yammerのコミュニティは、社内の誰もがコミュニティを検索でき、メンバーでなくてもコミュニティ内の会話を閲覧し、投稿やコメントを残すこともできます。継続して関わりたい場合には、自由にコミュニティに参加できます。

「パブリックチーム」と「パブリックコミュニティ」の違い(出典:内田洋行の太田氏作成の資料)

 Teamsのチームは、入り口は開かれているものの、各部屋は壁で区切られた会議室のようなイメージです。Yammerのコミュニティは、立食パーティ会場にあるテーブルのようなイメージでしょう。Teamsでは参加を許されたメンバーが集中して議論を進められ、対してYammerは気軽にさまざまなユーザーが会話に参加できるのです。

 TeamsとYammerでは、コミュニケーションのスピードも異なります。Teamsでは、少人数でスピーディーなコミュニケーションが多いのに対し、Yammerは比較的ゆったりとしています。投稿したメッセージに対して「数日以内に返信があればいいな」というレベルです。YammerにはTeamsのようなスピード感はありませんが、投稿がより多くのユーザーの目に止まるというメリットがあり、多方面のユーザーからの返信も期待できます。他の従業員とのつながりを作るきっかけづくりにもなるでしょう。Teamsは実用的なコミュニケーションで用いられるのに対し、Yammerは人とのつながりを重視したソーシャルなコミュニケーションに用いられる傾向があります。

利用シーン別で分かる「Yammer」の活用法

 それでは、チームとコミュニティの使い分けを利用シーン別に見てみましょう。

 例えば、人事情報などの公式なお知らせは「Microsoft SharePoint」で掲示し、従業員が発信する情報はより多くの人の目に止まるようにTeamsではなくYammerを使う、といった使い分けが考えられます。緩やかなコミュニケーション向きのYammerによってより広範囲の人に情報を発信でき、また投稿に返信することで発信者と会話できるなどカジュアルなコミュニケーションを生みます。

 次は、業務とは直接関係ないものの、従業員同士が悩みを共有したり相談し合ったりする場合の活用例です。

 例えば、出産や育児に向けて社内制度の上手な利用方法や自治体などで利用できる制度、復職に向けて準備しておくことなど、先輩社員からのアドバイスや意見を求める場合にもYammerは有効です。こうしたコミュニケーションによって従業員同士のつながりが生まれ、他の従業員を交えた子育てに関する懇談会を開くなど、交流をさらに発展させます。その他、「フォロー機能」によって役立つ情報を発信する人をフォローしておけば、情報収集も効率化できます。

Yammerの活用例(出典:内田洋行の太田氏作成の資料)

 Yammerならではの機能を生かした例として、営業などから寄せられる自社製品に関する質問を製品担当者や開発者がYammerで回答するといった使い方があります。Yammerには質問形式で投稿できる機能があり、質問に対する返信で最も役に立つものには「ベストアンサーマーク」を付けることができます。YammerではQAフォーラムを運営するための機能が強化され、こうした利用も増えています。さらには、トピックスの機能を利用して投稿にタグ付けして分類するなど、情報を後から参照しやすくする工夫もなされています。

Yammerの質問形式での投稿画面(出典:内田洋行の太田氏作成の資料)

 すぐに回答を得たいのであればTeams、自分と同じような疑問を持つ従業員と情報や回答を共有したいのであればYammerと考えると、使い分けのイメージが付きやすいでしょう。

TeamsとYammerがつながる「Microsoft Viva Engage」

 TeamsとYammerはそれぞれを置き換えるものではなく、それぞれでコミュニケーションを補完するものです。TeamsでYammerを利用できる「コミュニティアプリ」が提供されています。そして2022年7月19日(米国時間)に、Teamsのコミュニティアプリが「Microsoft Viva Engage」としてさらに進化することが発表されました。

 「Microsoft Viva」は従業員体験をより良いものにすることを目的とした、Teamsで動作するソリューション群です。これまでに「Viva Insights」「Viva Learning」「Viva Connections」「Viva Topics」「Viva Goals」がリリースされてきましたが、ここに来て新たにViva Engageが追加される格好です。Viva EngageはベースとなるYammerの特徴を生かし、個人間やコミュニティでの会話などを通じて従業員同士のつながりを強め、エンゲージメントを高めることを目的としています。

 また今後、Viva Engageのリリースに合わせた新機能として「Storyline」や「Stories」が提供される予定です。Storylineは個人が発信する投稿として、リンクやファイル、写真、画像を利用した投稿を作成可能で、Storiesは、短編動画や写真を共有できる機能です。テキストに加えて画像や動画を利用することで、より効率的に相手に情報を伝えることができ、そうしてコミュニケーションを楽しむことができます。コミュニティだけではなく、個人の情報もViva Engageを通じて発信できるようになります。これらの新機能はYammerにも追加される予定です。

Microsoft Viva Engageの「Storyline」と「Stories」でできること(出典:内田洋行の太田氏作成の資料)

 今回はTeamsとYammerの違い、Yammerの特徴を中心に解説しました。こうしたコミュニケーションツールは、業務効率化やビジネスなどに直接的なメリットをもたらすものではないのかもしれませんが、組織に情報を循環させるという重要な役割を担っています。また、リモートで働く機会がさらに増えることが予想される今後の働き方において、対面機会が減少し従業員同士のつながりが薄れてしまうことが課題として挙がっています。そもそも従業員数の多い組織では、オフィスベースの働き方であっても全ての従業員が物理的に会うことは困難です。従業員同士の溝を狭める手段としてコミュニケーションツールがあり、働き方の多様化が進む中で、その重要性はさらに増していくことでしょう。

 こうしたコミュニケーションの話をすると、イノベーティブなアイデアの創出などといったキーワードが出てきます。しかしながら、コミュニケーションの役目はそれだけでなく、雑談などカジュアルな会話によって互いの警戒心を緩め、意見を自由に言い合える関係性を作る効果もあります。それによって、個人の働き方や行動が変わっていくのではないでしょうか。

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