仮想空間上に現実世界を再現する。国主導プロジェクトでのユースケース創出や、製造現場への導入が進んでいる。
デジタルツインとは、調査対象をデジタル空間に再現する技術や再現したコンテンツそのものを指す。現実における検証が難しい状況のシミュレーションや分析をデジタル空間で実施してその結果を現実のアクションにフィードバックするために用いられ、官民のさまざまな分野で活用が進む。
デジタルツインは2002年に米ミシガン大学のマイケル・グリーブス氏によって提唱された。製造業の製品管理におけるPLM(Product Lifecycle Management)から発展した概念である。
通信技術や演算能力の向上、センサーの小型化などを背景に高精度のシミュレーションが可能になったことから、製造業を中心に導入が進む。日本では災害時の避難先シミュレーションなどの観点からも研究が進んでいる。
企業においては製品の劣化を予測してメンテナンスコストを最適化する効果や、バーチャルプロトタイプにより製品開発のリードタイムを縮小する効果がある。例えば三井海洋開発は洋上プラントに設置した1万個以上のセンサーで情報を収集して予測モデルで異常を検出し、故障前のメンテナンスを可能とした。ブラジルのプラントで1年間の稼働停止期間が従来比65%削減できたという。
災害対策の観点からも注目されており、オープンデータ化の促進戦略と連携してデジタルツイン構築プロジェクトが政府主導で進んでいる。2020年4月に開始した「Project PLATEAU」は、3D都市モデル整備の全国波及と活用拡大を目指すプロジェクトだ。IoTを活用したリアルタイムデータ収集によりデジタルツインを構築して人流解析や混雑状況のモニタリング、垂直避難が可能な建物の可視化といったユースケースを公開してARやVR、ロボットなど各種分野へのフィードバックを目指している。
仮想空間ビジネスは公共向け、企業向け、コンシューマ向けにさまざまな形態で進化している。共通の技術を使っていても、用途によって用語が異なる場合も多い。
メタバースは現実とつながるデジタル仮想空間にユーザーが訪れることで新たな体験や経済圏を構築する。デジタルツインは現実世界を複製して現象を分析するものであるため、目的と用途が異なる。
デジタルツインで得た成果を現実のアクションに活用することも含めた、仮想空間と現実空間との緊密な連携サイクルをCPSと呼ぶ。
デジタルミーは「人のデジタルツイン」とも言われる。デジタルデータで個人を表現する技術の総称で、認証情報の共有やWebマーケティングの改善などでの活用が期待されている。
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