ディズニーやMicrosoft、Facebookの事業展開によって一層注目されるメタバース。従来の仮想空間との違いとは。
メタバースとは、アバターを介してアクセスするデジタル仮想空間サービスや仮想空間そのものを指す。ユーザーは自由な風貌に設定したアバターで仮想世界に入り、その中で提供されるサービスを利用したり、他のユーザーとコミュニケーションを取ったりできる。
仮想空間をプラットフォームとして新規ビジネスを開拓するニュアンスを持つが定義は流動的で、コンシューマ視点では「あつまれ どうぶつの森」のようなユーザーが交流するゲームを広義にメタバースに含める動きもある。
2021年10月にFacebookはMetaに社名を変更し、メタバース分野への投資を発表した。同年11月にMicrosoftやディズニーも参入を発表するなど、仮想空間における新規ビジネスの勃興を期待して取り組みが進む。
「メタバース」という言葉の初出は1992年で、いわゆる「IT革命」の始まりとほぼ同時期だ。「meta」(超)と「universe」(宇宙)を合わせた造語として、SF小説「スノウ・クラッシュ」の中で提唱された。
仮想空間ビジネスはIT革命によってさまざまなサービスがインターネットから提供され、それに伴って社会の構造が大きく変わった当初から注目されており、2000年代には「Second Life」が話題となった。
Second Lifeはゲーム内の通貨を現実の貨幣に換金できる仕組みを持ち、仮想空間におけるビジネスの勃興を推奨するものだった。新規の商業機会を狙って多くの企業が参入したがユーザーが定着せずに撤退が相次ぎ、その後は個人ユーザーが交流する場となった。
2020年代に至って通信回線やCGの品質向上、モバイルデバイスの普及などによって仮想空間への参加がしやすくなったこと、コロナ禍によってビジネスの非対面化が進んだことなどを背景に再びメタバースが注目を集める。
国内外の企業が、メタバースビジネスへの取り組みを進めている。
2021年10月にFacebookが社名をMetaへと変更してメタバースの開発に注力する方針を明確にし、先駆けのサービスとしてVR(Virtual Reality)を利用するビジネス向け会議用ソフト「Horizon Workrooms」をリリースした。同年11月にはMicrosoftが「Microsoft Teams」をメタバースに対応させ、3Dアバターと仮想空間のミーティングルーム機能を追加する「Mesh for Teams」を発表した。同月11日にディズニーも同社サービスのメタバース参入を表明した。「消費者がどこにいても、製品やプラットフォームの垣根を超えて、ディズニーの提供するすべてを体験できる」(ディズニーCEO ボブ・チャペック氏)と述べる。
国内ではグリーが2021年8月にメタバース事業への参入を発表した。仮想空間を実装済みのバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」を拡張してクリエイターエコノミーの形成を目指すとしている。
仮想空間サービスに関わる用語は多く、定義も流動的になりやすい。以下では主にビジネスに関わる用語を解説する。
デジタルツインとは、現実世界の設備や建造物などを仮想空間内に再現してビジネスや災害などのシミュレーションに生かす技術を指す。現実の再現を目的とし、メタバースの「仮想空間でユーザーにサービスを提供する」というビジネスモデルとは異なる。
オンラインゲームではベンダーの提供する世界の中で設定されたミッションをクリアするためにプレイヤーが協力し合ったり競い合ったりする。メタバースはビジネスなど現実の目的を達成する手段として仮想空間のサービスを利用する。
ブロックチェーンの実用化によって情報の正確性や仮想空間内の通貨の信頼性が上がり、仮想空間の取引が現実の経済活動と同等に扱えるようになった。
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