都市空間を3Dモデルで表現する「デジタルツイン」構築の試みが各国で進められている。日本で21年の3月にオープンデータとして公開された国土交通省都市局が進める「Project PLATEAU」の3D都市モデルは、公共および産業への応用が期待される計画だ。
数ある都市3Dモデルと同様に地形や建造物の幾何形状を精密に表現し、その上に建物などの役割や耐災害性など、都市構造の意味(セマンティクス)も合わせてモデリングする。データの標準仕様が複数のガイドブックとともに公開され、国内44のユースケースも紹介された。
3D地図に意味を付加するとはどういうことなのだろう。仕組みの紹介の前に、同プロジェクトでのユースケースをみてみよう(図1)。
図1右では名古屋市の地形と地表面の画像、建物などの3次元形状が鮮やかに描かれている。3Dマップは例えばNTTデータやゼンリンなどの国内ベンダーから有償提供されているものや、無償で一部公開されている国土地理院のオープンデータなどがある。
しかしProject PLATEAUの3Dモデルには他にはない特徴がある。ただ物理的な形状を再現するだけでなく、さまざま情報が地図空間に組み込まれているのだ。
図1左は2次元の土地利用現況図を用いた利用現況ごとの色分けがされているのだが、そのデータに加えて、都市計画基礎調査における建物利用現況の情報を重ね合わせることで、同図右のような描画が可能になった。土地利用現況とは、用途別の土地利用面積などを指し、建物利用現況は建物用途(棟数、建築面積、延床面積)、階数(地下、地上)、構造、建築面積、延床面積、建築年、耐火構造種別の各情報が含まれる。
それらの属性を3Dマップ上で表示/非表示、色分けして表示できる。フィルター機能によって、注目する属性をもつ建物だけを表示できるので、例えば「鉄筋コンクリート造で3階建て以上の高さ、屋上テラスがあるビル」と属性指定すれば、洪水災害などの際に垂直避難可能な建物の所在が直感的に把握できる。これを実際に可視化した例に郡山市のフィージビリティスタディーがある。
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