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IT導入補助金の使い道は? 4社の課題と補助金活用例

既定の条件を満たす中小企業および小規模事業者において、申請すれば補助金が交付される「IT導入補助金制度」。交付を受けた中小企業は、どのような課題を抱え、何に悩んでいたのか。4社の事例から探る。

» 2022年03月31日 07時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 「IT導入補助金制度」は、予算の課題によって業務のデジタル化に踏み出せない中小企業や小規模事業者事業者の支援を目的として、経済産業省が開始した制度だ。補助金の交付によって、各事業者の課題やニーズに合ったITツールの導入と活用を促進することを狙いとする。

 補助金の交付を受けた企業は何に困り、その後補助金をどのように使ったのか。本稿では、ミロク情報サービスの佐藤 航氏の解説を基に、「会計」「販売管理」「ペーパーレス」「ECサイト」の4領域での事例を紹介する。

本稿は、オンラインセミナー「中小企業支援策・補助金活用セミナー 〜コロナ禍の影響を乗り越え、事業価値の向上を実現する支援策の活用〜」(共催:ミロク情報サービス、埼玉りそな銀行)における佐藤 航氏(ミロク情報サービス ソリューション関東信越支社)の講演内容を基に編集部で再構成した。

経理部門の手作業の仕分け処理を排除

 飲食業のA社(店舗数20)では経理担当者が請求書や領収書、各店舗から「Microsoft Excel」のファイルで提出される日報データを仕分け処理をした上で会計システムに手作業で入力していた。日報データには売り上げや経費など仕訳処理に関わる項目とそうでない項目が混在しているため、入力ミスが発生しないように複数人でのチェック体制を敷いていた。

 A社はIT導入補助金で会計システムを導入し、非効率な業務フローの変革に取り組んだ。連携機能を活用して、Excelファイルや他システムから出力されたCSVファイル、インターネットバンキングの入出金データを会計システムに取り込めるようにしたところ、これまでの手作業による仕分け作業にかかる工数と経理業務の手間を削減できた。

図1 Excelファイルや他システム、サービスからのデータを会計ソフトでデータ連携(出典:イベント投影資料)

クラウドで販売管理業務を効率化

 電子機器販売のB社では売り上げと仕入管理はシステム化されていたが、見積書の作成は専用のExcelフォーマットを使って作成していた。また注文内容に関して顧客から問い合わせがあった場合、大量の書類から該当の注文書を探すのに時間と労力がかかり、従業員からは不満の声が寄せられた。

 クラウド型販売管理システムを導入したことで、訪問先や自宅からでも即時に注文データを参照できるようになり、さらには顧客からの急な問い合わせ対応もスピーディーに対応可能になった。これを機に今後は経理や総務部門のシステムのクラウド化も検討しているという。

紙ベースのワークフローを排除し、プロセスを電子化

 国内に複数の拠点を持つ専門商社のC社では、経費精算や身上変更、物品購入の稟議(りんぎ)書の申請に当たり、専用申請書への記入や部門長の承認、本社への郵送、最終承認という紙文書を伴うワークフローが残っていた。申請から最終承認までに約7日かかる上に、本社部門では承認された内容を手作業で各システムに入力するため、多くのフローで手間と時間がかかっていた。

図2 最終承認までに7日間を要した紙による承認プロセス(出典:イベント投影資料)

 C社はIT導入補助金を使ってワークフローシステムを導入することでこの非効率なフローを解消しようと考えた。申請から承認の全てのプロセスを電子化し、印鑑を押すための出社も必要なくなった。さらに本社部門では承認結果を各システムと連携したことで、急ぎの申請、承認にも即時対応でき、またどれくらいの経費が発生したかなども申請時点で確認が可能となった。未承認データの集計も容易になり、約1日に短縮できた。

図3 ワークフローの電子化により承認プロセスが1日に短縮(出典:イベント投影資料)

ECサイトと販売管理システムを連携、伝票作成の手間を排除

 生活用品卸売業のD社では、顧客である小売店から電話やFAXで注文を受けることが多く、事務員が1件1件を手作業で販売管理システムに入力して伝票処理を行っていた。手書きFAXの内容確認に時間がかかり、伝票入力だけで1日が終わってしまうこともあった。

 この問題に対して注文用のECサイトを開設することを考えた。各取引先からECサイトへの注文データは販売管理システムと連携させ、伝票作成の自動化が可能になった。約半数の取引先で利用が始まり、現在は日々の入力業務が1時間ほどで完結できるようになった。ECサイトはショッピングサイト感覚で利用できるため、取引先にもすぐに慣れてもらえ、リピート注文が容易にできること、時間を気にせずに済むことから継続してされている。今後は取引先のECサイト利用率を高め、さらなる効率化を目指す。

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