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「顔出しZoom」で売り上げアップも 3事例から学ぶコミュニケーション戦略

Web会議ツール「Zoom」で知られるZVC Japanの執行役員が、Web会議にとどまらないZoomを使ったエンゲージメント強化策を語った。

» 2022年04月20日 07時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
ZVC Japan 林 幹人氏

 Web会議ツール「Zoom Meeting」(以下、Zoom)で知られるZVC Japanの林 幹人氏(執行役員 エンタープライズ第一営業本部長)は「Zoomの価値はWeb会議だけではない」と強調する。同社は「Zoom Webinar」「Zoom Chat」「Zoom Rooms」「Zoom Phone」などをラインアップし、林氏は「これらを基にしたプラットフォームで、テレワーカーだけでなく工場や店舗などでの柔軟な働き方も支援する」と語る。

 これらサービスの提供によって最終的に同社が目指すのは組織力の強化だ。従業員や顧客のエンゲージメントの強化が組織力を高める重要な要素だという。ZVCの調査によれば、従業員の39%が「働く環境をもっとフレキシブルにしたい」と回答し、その半数がZ世代(1990年後半から2010年頃にかけて誕生した世代)だという。

 しかし、そうした思いを抱きながらも、調査では回答者の40%が「自分で働き方を選択できない」と回答した。中には店舗や工場などテレワークでの就業が難しい職種もあり、またテレワークをしていても時には出社が求められる場合もある。ワークシフトの潮流が高まりを見せるが、労働環境にはまだ制限があるのが現状だ。回答者の57%、特に営業職に就く人は「初めての顧客とはせめて対面で商談したい」と考えているようだ。

 林氏は、従業員が離れた場所で就業していても「顔出しのコミュニケーション」で従業員のエンゲージメントを高めることは可能で、それが組織力の強化にもつながるという。

Zoomの製品ラインアップで構成される「Zoomコミュニケーションプラットフォーム」(出典:イベント投影資料)

本稿は「Japan IT Week 春」で行われたZVC Japanの林 幹人氏による講演「企業の力を強くするための全社的なエンゲージメントの実現」を基に編集部で再構成した。

なぜ“顔出しZoom”で組織のエンゲージメントを高められるのか

 心理学者のアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によれば、人がコミュニケーションを取る際に話者が聞き手に与える影響について、視覚情報が55%、聴覚情報が38%で、言語情報はわずか7%だという。

 組織のエンゲージメント向上においてもこの法則を当てはめて考えることができる。つまりは、従業員に対して顔を出してコミュニケーションを取ることが重要ということだ。ZVC Japanが実施した調査によれば、こうしたコミュニケーションによって回答者の7割が「営業部員の売り上げが上がった」と答え、67%が「生産性が上がった」という。顔出しのコミュニケーションがオープンな関係を作り、それによって信頼度が向上して商談が進むのだという。

 林氏は、こうしたコミュニケーション改革で組織のエンゲージメント向上に成功した3社の事例を紹介した。

コロナ禍で会えない現場をオンラインでつなぐ

 ある大手航空会社では、コロナ禍でパイロットやキャビンアテンダント、オフィスや整備工場勤務者など、従業員全員が出社できない状況になった。そこで、全員にタブレット端末を配布し顔を出してコミュニケーションできるようにしたところ、部門間で会話する機会が増え、コロナ禍以前よりもコミュニケーション量が増加したという。また、「組織で働いている」「仲間がいる」と感じた従業員も多く、社内のエンゲージメント強化の効果が生まれた。

 この体験をサービスにも生かそうとバーチャルトラベル(仮想旅行)の企画が生まれた。オンライン整備工場見学やオンライン旅行などの顧客向けサービスの提供が実現したという。

経営層と現場をダイレクトにつなぐ

 世界に数百拠点と数千人規模の従業員を擁する運送会社では、これまで役員からのメッセージを現場の従業員に直接届けることができず、メール送信や人を介した伝言に頼るだけだった。Zoomを使って顔を出してメッセージを伝えるようにしたところ、現場と役員で直接対話する機会が増え、経営層からのメッセージを現場の人にダイレクトに伝えられるようになった。

上司と新人社員をつなぐ

 NECグループでは社内エンゲージメント強化のために「Microsoft Teams」とZoomを併用している。営業部門では、いつでも気軽に他の従業員や上司に相談ができるよう、新人とは常にZoomを常時つないだままにしている。業務上の悩みや課題を気軽に相談できる環境にしたことで、新人のストレス軽減と生産性低下の防止につながったという。

Web会議だけじゃない 「組み込みZoom」で広がる活用範囲

 次に、林氏はAPIや拡張機能を使ってZoomと他アプリとを連携させることで活用範囲はもっと広がるとし、連携例を幾つか紹介した。

 ZoomはAPIやSDKを提供しており、社内プロセスやアプリケーションプロセス、あるいはアプリケーションそのものにZoomの機能を組み込むことが可能だ。例えば、「box」「Slack」「Salesforce」などのサービスとAPIでつなぐことで、アプリケーションにZoomの機能を組み込むことができ、画面共有の権限があればZoomに表示させることも可能だ。拡張機能「DocuSign eSignature for Zoom」によって、商談から電子契約までのフローをスピーディーに進められる。その模様を録画すれば監査証跡にもなる。

APIを利用して顧客接点を効率化する(出典:イベント投影資料)

 またSDKを使うことでZoomの機能の一部を利用することも可能だ。例えば、VuzixのスマートグラスにZoomの機能を組み込むことで現場と管理者をつなぎ、管理者やベテラン技術者がメンバーに指示をしたり、現場作業員が機械などの映像を共有して相談したりしながらハンズフリーでの作業を可能にする。

 Zoomそのものを自社サービスに組み込む例も紹介された。例えば、英会話スクールのGabaではWebサイトで講師を予約すれば、レッスン開始とZoomミーティングが始まり自宅から受講できる。その他、営業担当者向けデバイスへの組み込みや医療従事者向けデバイスへの組み込みなどB2B、B2C問わずさまざまな連携ソリューションが提供されている、

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