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「入浴中のひらめきに給与支給」も? テレワーク時代の勤怠管理問題

従業員をオフィスに閉じ込めて拘束時間で評価する企業からは創造性が失われていくだろう。

» 2022年06月07日 07時00分 公開
[Mark Brimキーマンズネット]
HR Dive

 われわれが取材した企業の多くが、その企業特有の「何か特別なこと」をする必要性を認識している。一方で彼らは、生産性や信頼性に課題を抱えている。

 近年最も需要が高く、企業が奪い合うような人材は、画一的で生産性のない勤怠規則を嫌っている。必要なのは創造性であり、長時間の拘束をしても意味がないことは企業も分かっている。一方、週あたりの拘束時間を減らせば良いかというと、それも人材の創造性を引き出す施策として適切ではないようだ。注目すべきなのは、人材がどのように生産性を発揮しているかという点だ。

「柔軟な働き方」の中で人材は何をしているのか

 近年、創造的な人材にとってフレキシブルワークはもはや「役得」ではない。フレックス制が採用条件に含まれていなければ、求職者は応募を取りやめたり、内定を辞退したりしている。

 米国のマーケティング、クリエイティブおよびデザイン分野の人材のうち、83%の従業員がフレックス制のない仕事を辞退し、98%の従業員が少なくとも一定期間テレワークを希望している。雇用主は、俊敏性を保ち、強力で刺激的なチームを維持するために、従業員の意見に耳を傾ける必要がある。具体的には9時から17時までの労働時間制を廃止し、従業員にこれまで以上に権限を与えることによって最も需要のある人材を引きつけ、留保すべきだ。われわれは常に「従業員の生産性を着席時間(seat time)で測っているのなら、それは的外れだ」と指摘している。

 クリエイティブな分野で仕事をする人材にとって重要なのは「仕事とブレーンストーミングのバランス」だ。デスクに張り付いて作業をしたり「Zoom」での会議に付き合わされていたりする中で、そのバランスを取ることは難しい。

 クリエイティブ業務の生産性は、1時間単位では測れない。その領域で働く人材は自分たちが「仕事のスピード」を期待されていることをよく認識し、それが課題であることに同意している。週あたりの労働時間の短縮は、仕事のプレッシャーを軽減する唯一の解決策にはならない。

クリエイティブな仕事のプロセスは5つのステージで進行する

 創造力は、未来の仕事の成功を保証するスキルの1つになっていくだろう。雇用主が勤務体系や生産性指標を柔軟に変えられれば、人材は創造力を身に付け、大きなアイデアを思いつくために必要な精神的余裕を生み出せるようになる。

 なぜなら、クリエイティブなプロセスは「準備」(preparation)、「孵化」(incubation)、「照明」(illumination)、「評価」(evaluation)、「検証」(verification)の5つのステージで進行するためだ。このプロセスの多くにはPCから離れてアイデアを発想できるようにするための重要なブレーンストーミングが含まれる。素晴らしいアイデアは、そのプロセスの後に生まれるためだ。

 アイデアは、例えば夜に魅力的な文章を目にしたり、ふとしたきっかけで調べ物をしたりした時に浮かぶものだ。頭をすっきりさせるためにランニングをした後や新しいレシピの料理を作っているとき、あるいは平凡な家事をこなしている最中にも生まれる。このような自発的なひらめきを持つ人は、理想的なフロー状態に達しやすい。彼らのインスピレーションは、時間を問わずに湧いてくるものだ。

 これらは「白昼夢」とも言えるものだ。雇用主は、従業員の白昼夢に対して給料を出すことはできないだろう。一方で雇用主は、創造的な仕事をする人材は勤務時間外でも、自発的なひらめきを頻繁に得ていることを認識する必要がある。柔軟な勤務体制を整えれば、クリエイティブチームはいつでもどこでも、自発的なインスピレーションを質の高い仕事に変えられる。小さな箱に閉じこもる時代はとっくに終わっているのだ。

「アイディアが浮かんだら仕事開始」にしても良い

 雇用主が人材を確保し、質の高い仕事を実現するためには「最大」の結果よりも「最適」な結果を優先すべきだ。ワークスケジュールの選択肢を選ぶに当たって必要なのは、仕事の「スピード」や「量」ではなく「質」である。そうすればクリエイティブで優秀な人材は、長い時間をかけて顧客との関係を築きつつ企業独自の制度的知識や専門知識を蓄積している。そのような深い専門性を備えた人材または複数のチームメンバーを失うことの代償は、あまりにも大きい。

 雇用主がワークスケジュールの選択肢を検討するにあたって重要なのは、従業員と一緒になって考えることだ。従業員が希望する勤務形態を拒否するだけではいけない。

 生産の評価や安全性の確保といった課題はあるが、例えば「デスクから離れた場所でインスピレーションを得たら、その時点から勤務時間を打刻してアイデアを提供する」といった「創造的な自由」もあるべきだろう。

マーク・ブリム氏は、Aquentのリクルート部門であるVitamin Tのプレジデントです。意見は筆者個人のものです。

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