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ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況(2022年)/前編

プログラミングのスキルがない非IT人材が自らアプリケーションを開発できるとして注目が集まるノーコード/ローコード開発ツール。だが、IT担当者の中には「あの悪夢」を想起する人もいるようだ。課題と理由の考察も含め、利用状況をレポートする。

» 2022年07月21日 09時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]

 キーマンズネットは2022年7月4日〜14日にわたり「ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況」に関するアンケートを実施した。本稿では、ノーコード/ローコード開発ツールの導入状況やメリット、デメリットなどをレポートし、背景にある課題などを考察した。

 プログラミングのスキルがない非IT人材が自らアプリケーションを開発できるとして注目が集まるノーコード/ローコード開発ツールだが、「エンドコンピューティングの悪夢がよみがえる」と感じるIT担当者もいるようだ。

 なお、本稿で取り扱うノーコード/ローコード開発ツールは、ドラッグ&ドロップなどのGUI操作によって、コーディング作業なしに(あるいはわずかなコーディング作業で)アプリケーションのUIデザインから開発、テスト、デプロイ、実行、管理などを実現するものを指す。

ノーコード/ローコード開発ツールの普及率

 ノーコード/ローコード開発ツールについて、企業の担当者は普及の実感があるのか。調査では、普及していると「とても感じる」(8.9%)、「やや感じる」(36.5%)を合わせて、45.4%がノーコード/ローコード開発ツールの普及を実感していることが分かった。一方、「あまり感じない」(33.5%)、「全く感じない」(12.8%)とした回答は合わせて46.3%だった(図1)。

図1 ノーコード/ローコード開発ツールの普及の実感

 実際の導入率はどうか。

 「導入している」とした回答者は27.6%と、全体の約3割を占めた。2021年に実施した同調査では導入率が20.0%と全体の2割だったため、1年で大きな変化はなかったと考えられる。

 「導入している」(27.6%)、「導入していないが、具体的な導入に向けて検討中」(7.4%)、「導入していないが興味はある」(34.5%)とした回答者を合わせると全体の約7割を占めることから、ノーコード/ローコード開発ツールが関心を集めていることは事実と言えそうだ(図2)。

 なお、従業員規模別でみると、「導入済み」「検討中」「興味がある」を合わせた割合は、規模の大きな企業ほど高い傾向にあった。近年は、大企業がノーコード/ローコード開発ツールによるアプリ開発と非IT人材の育成を大規模に展開する事例なども話題になっており、大企業での評判が普及の鍵になりそうだ。

図2 ノーコード/ローコード開発ツールの導入状況

「できたらいいな」を迅速に低コストにシステム化したい

 企業はノーコード/ローコード開発ツールにどのようなメリットを期待しているのだろうか。調査では上位3位に「開発スピードの向上」(59.1%)、「アプリケーション開発コストの削減」(48.8%)、「開発の内製化の促進」(42.9%)が挙がった(図3)。

図3 ノーコード/ローコード開発ツールのメリット

 多くの企業では、定型的な基幹業務システムでは網羅できない「スキマ業務」が発生しており、担当者が個別の作業で対応している。こうしたスキマ業務をシステム化するには、エンジニアや社外のリソースを頼る必要があり、時間やコストがかかっていた。

 一方、ノーコード/ローコード開発ツールは、プログラミングの知識がない業務の担当者が現場の知見を盛り込みながら、日々の「できたらいいな」をアプリケーション化できることから、開発のスピード向上やアプリケーション開発のコスト削減、開発の内製化につながる。今回の結果にはその期待が反映されていると言える。

 なお、4位の回答として「業務プロセスの自動化」も挙がった。ノーコード/ローコード開発ツールによっては、開発するアプリケーションに自動化機能を実装できるため、そうした機能のニーズも高いことが分かる。

「エンドコンピューティングの悪夢がよみがえる」

 さまざまなメリットを持つノーコード/ローコード開発ツールだが、利用に対して懸念を抱いている回答者もいるようだ。デメリットを聞いた質問では、「アプリケーションを管理できずブラックボックス化する」(45.3%)、「開発人材がいない」(40.9%)、「必要な要件が実現できない」(33.5%)、「開発・運用ルールの策定が困難」(32.5%)、「社内に利用が浸透しない」(30.5%)などが挙がった(図4)。

図4 ノーコード/ローコード開発ツールのデメリット

 1位の「アプリケーションを管理できずブラックボックス化する」という懸念については、ノーコード/ローコード開発ツールの「誰でもアプリケーションを開発できる」というメリットの裏返しとしてよく指摘される問題だ。

 フリーコメントでも「管理外アプリが氾濫するエンドユーザーコンピューティングの悪夢がよみがえる」「ブラックボックス、属人化と関連するが、アプリケーションのあらゆる観点での品質管理ができない、難しくなるのではないかといった懸念がある」といった厳しい声が寄せられた。

 ノーコード/ローコード開発ツールという用語が聞かれるようになったのはここ数年だが、その技術は「高速アプリケーション開発プラットフォーム」といった名前で既に企業で適用されてきた。ITの歴史を知る情シスやIT担当者であれは、この技術による「エンドユーザーコンピューティング」がもたらした「悪夢」が繰り返されることを危惧するかもしれない。

 具体的な管理の課題として「アプリの更新が先延ばしになり、DX促進が遅れる」というコメントも見られた。ノーコード/ローコードで開発したアプリであっても、ベンダーのアップデートに従って、アプリの操作テストや更新作業が必要だ。ノーコード/ローコード開発ツールは、API連携によって社内システムや外部サービスと容易に連携できることを売りにしているが、統合要素が多いほどエラーが生じやすいという問題もある。

 これらのデメリットを鑑みて自社開発をせず外注するという選択肢もある。フリーコメントには「信頼できるベンダーへ発注して品質を確保/向上する方が中期的な費用対効果が高く、経営に寄与すると感じる」という声が寄せられた。

 デメリットの2位以降には「開発人材不足」や「利用が浸透しないことへの懸念」「開発運用ルール策定の工数がかかること」などが続いた。これらについては、全社横ぐしの組織編成で対応している企業もあるが、リソースの豊富な大企業でなければ難しいかもしれない。各企業が教育や広報活動をどのように実施しているかは、後編で紹介する。

導入しない理由は?

 こうしたデメリットから、ノーコード/ローコード開発ツールを利用しないと判断した企業もあるようだ。「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」とした回答者にその理由を聞いたところ、「ノーコード/ローコード開発はメンテナンス性が優れているとは思わない」「(ノーコード/ローコード開発)は全社的な施策でないので、部署単独導入はない」「開発人材がいない」といった声が挙がった。

 その他、そもそも「業務的に不要」「IT人材には必要ない」「「業務毎にクラウドサービスを導入しており、社内で開発ツールを利用する体制にない」など、ニーズがないという回答もあった。

ノーコード/ローコード開発ツールに期待すること

 最後に、ノーコード/ローコード開発ツールに期待することについても聞いた。最も回答率が高かったのは「導入必要」(61.1%)で、これに直観的なUI/UXで非エンジニアでも開発しやすい」(46.8%)、「APIによる多システムとの連携性」(39.4%)、「画面テンプレートやサンプルアプリの数が多い」(38.9%)などが続いた(図5)。

 後編では、開発作業者の「所属部門」や「コーディングスキルのレベル」「開発スキルの教育・習得方法」「統制・管理の実施状況」「開発しているアプリケーション」などを紹介する。

  なお全回答者数203人のうち、情報システム部門が31.0%、製造・生産部門が12.8%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が13.7%、経営者・経営企画部門が9.8%などと続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

図5 ノーコード/ローコード開発ツールに期待すること

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