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» 2021年09月16日 09時51分 公開

ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況(2021年)/前編

プログラミングのスキルがない事業部門の担当者が自らアプリケーションを開発できるとして注目が集まるノーコード/ローコード開発ツールだが、その評価は2分するようだ。どれほど導入が進んでいるのか。

[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2021年8月20日〜9月3日にわたり「ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況」に関するアンケートを実施。ノーコード/ローコード開発ツールの導入状況や導入目的などが明らかになった。近年にわかに注目を集めるノーコード/ローコード開発ツールだが、その評価は二分するようだ。企業では導入が進んでいるのか。

なお、本稿で取り扱うノーコード/ローコード開発ツールは、ドラッグ&ドロップなどのGUI操作によって、コーディング作業なしに(あるいはわずかなコーディング作業で)アプリケーションのUIデザインから開発、テスト、デプロイ、実行、管理などを実現するものを指す。

既存システムでカバーできないスキマ業務に苦慮

 多くの企業では、経理や財務、顧客管理などの「基幹業務」は、業務支援ITシステムが導入されている。だが、定型的な基幹業務システムでは網羅できないプロセスが残っており、担当者が個別の作業で対応しているという状況は少なからず見られるのではないだろうか。既存システムではカバーできないスキマ業務は、担当者の時間を効率を下げるだけでなく、業務フローを複雑化させ、ときには「情報があらゆる場所に分散している」などの状況を招く。

 今回の調査で業務プロセスの課題を聞いた質問では「表計算ソフトなどのファイルが部署や担当者ごとに散在していて、情報共有しにくい」(52.1%)、「業務がデジタル化されておらず、紙での運用が残っている」(48.8%)、「既存のシステムではカバーできないスキマ業務が煩雑」(45.8%)が上位に挙がった(図1)。

図1 業務プロセス上の課題

 フリーコメントでは「申請業務の際は、文書をメールに添付しなければならない。使用する申請書フォーマットも未改版で実態にあっていなかったり、フリーフォーマットで設定されていたりする場合もある」や「月毎の売上集計をExcelで実施しているので面倒」などの声が挙がった。

 こうした現場課題を解決するために、既存システムの機能を追加したりあらたなシステムを開発したりするにはエンジニアのリソースや時間を必要とするが、業務部門が主体となって日々の「できたらいいな」を迅速にシステム化できる手段としてノーコード/ローコード開発ツールに注目が集まっている。

 実際にどれほど導入されているのだろうか。「導入している」とした回答者は20.0%と全体の2割だった(図2)。これに「導入していないが、具体的な導入に向けて検討中」(9.2%)、「導入していないが興味はある」(35.0%)とした回答者を合わせると全体の6割を超えることから、ノーコード/ローコード開発ツールが関心を集めていることは事実と言えそうだ。

 従業員規模別でみると、「導入済み」「検討中」「興味がある」を合わせた割合は、規模の大きな企業ほど高い傾向にあった。従業員の数が多いほどスキマ業務の効率化による効果が高いために、大企業を中心に注目を集めているのではないかと考えられる。また、企業規模が大きいほどシステム開発のための稟議決裁や要件定義の作業が煩雑になり、その解消策としてノーコード/ローコード開発ツールへの期待が高いのかもしれない。

図2 ノーコード/ローコード開発ツールの導入状況

ノーコード/ローコード開発ツールを導入した理由

 企業はどのような目的でノーコード/ローコード開発ツールを導入するのか。「導入済み」「検討中」「興味がある」とした回答者に導入理由を聞いたところ、「業務プロセスの自動化」(50.6%)、が1位に挙がった(図3)。ノーコード/ローコード開発ツールによっては、開発するアプリケーションの中に業務フローを自動化する機能を実装できる。そうした機能を利用することで、手作業を少なからず自動化したいというニーズがあると分かる。

 また「開発スピードの向上」(50.0%)、3位「アプリケーション開発コストの削減」(45.5%)、4位「業務の標準化」(42.2%)、5位「開発の内製化の促進」(40.9%)も上位に位置している。ノーコード/ローコード開発ツールは、プログラミングの知識がない業務の担当者がエンジニアや社外のリソースに頼らず自らアプリケーションを開発できることから、開発のスピード向上やアプリケーション開発のコストを削減でき、開発の内製化も促進できることが注目されている。今回の結果にもその期待が反映されていると分かる。

 フリーコメントでは「ベンダーへの丸投げによって漏れている必要なプロセスや機能を補完するとともに、イノベーションを起こしやすい組織の仕組みにしたり、リソースを有効に活用できるようにしたりするため」や「ペーパーレス化の促進のため」といった考えが寄せられた。

 一方、導入に懐疑的なコメントも寄せられており「計画のない導入で個別最適化を進めようとしている」や「内製化は縮小・廃止の方向」など、有効に活用できないと考える企業もあるようだ。

図3 ノーコード/ローコード開発ツールの導入目的

「ただのブラックボックス作成機」導入を拒む3つの理由

 ノーコード/ローコード開発ツールを「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」とした回答者にその理由を聞いたところ、大きく3つの理由が挙がった。

 1つ目は、誰でもアプリケーションを開発できるような状況が、システムの乱立やブラックボックス化を招くのではないかと危惧して導入しない、というものだ。「ツール含め開発には設計書を必須としており、勝手に作成したアプリケーションが属人化することを防ぐため」や「過去にエンドユーザーコンピューティングで散々苦労したトラブルを繰り返すことになるため」など、リスク管理の難易度が上がることを問題視する声が挙がった。中には「導入する意味が不明。ただのブラックボックス作成機」といった厳しい声も見られた。

 2つ目は 費用対効果が見合わないために導入しない、という理由だ。「定型的な業務が多いこともあり、新規ツールの導入と既存ツールの運用のコストパフォーマンスを比較した際に、前者は費用対効果が出ないことが分かったため」や「コストがかさむため」といった意見が挙げられた。

 3つ目は導入に対する社内の理解が得られないというものだ。「経営層が技術を理解しておらず、導入意欲もないため」や「各部門が運用主体になるため、ツールの導入を一元的に管理できず温度差も大きい」「新規技術に積極的ではない雰囲気であり、利点が分からないから」などの声が寄せられた。

 非エンジニアにも開発の門戸を開くノーコード/ローコード開発ツールは、「開発の民主化」を促すものだが、業務部門の担当者が開発や運用を担う場合でも、IT部門の関与なしに独断で開発を進めることはITガバナンスの観点から望ましくない。IT部門と協力体制を築き、社内のセキュリティポリシーなどに準拠して設計や開発を行う必要がある。

 全回答者数240名のうち、情報システム部門が36.3%、製造・生産部門が15.4%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が12.0%、経営者・経営企画部門が8.8%などと続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

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