SAP S4/HANAのプロジェクト期間とコストへの不安から導入を足踏みする企業に、期間とコストを事前に明示するサービスが始まった。SAPはこれらのサービスによって中堅・中小企業のERP導入を後押しするとしている。
大企業向けERPの印象が強いSAPだが、「SAP S4/HANA」の登場を期に中堅・中小企業にもシェアが拡大している。
SAPはプロジェクト期間とコストへの不安から導入を足踏みする企業向けに、期間とコストを事前に明示するサービスを開始した。その詳細をSAPジャパンの田原隆次氏(バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部 本部長)が語った。
SAPは大企業向けだとみられがちだが、利用企業の80%以上が年商1000億円未満、50%以上が年商500億円未満の企業である。これらの中堅・中小企業は、この2年間に会計領域だけでなくロジスティクス領域も含めて企業全体の業務プロセスを最適化し、SAPを経営情報基盤として活用している。
SAP採用の理由は主に次の4つだ。
システムをシンプルに短期間、低コストで導入し、早期に効果を出して投資対効果の最大化を図ることが共通の目的である。導入プロジェクトは、重要な要素はトップダウンで推進し、セクショナリズムが少ない全体最適思考で実施する。中堅・中小企業はスピード感や機動性をもって導入できるのが大企業に比べた強みになる。
中堅・中小企業の導入プロジェクトに共通する重要要素の一つが、パートナーテンプレートの活用である。汎用ERPの機能モジュールを業種や業態ごとに組み合わせることで、業務プロセスの「ひな型」になる。SAPパートナーの経験を基に構築したテンプレートは業務プロセスを短期間で確実に実装できる。
テンプレート適用の考え方を中堅・中小企業向けにリニューアルしたのが「SAP S/4HANA All in One」である。次の4つの要素が含まれる。
300〜1000億の年商規模の企業を対象としたサービスパッケージをパートナーごとに用意している。それぞれのサービスパッケージは業務範囲やクラウドオプション(Private/Public)、期間、導入費用(一般的な想定費用、製品ライセンスは別)が明示されているので、不安要素である導入期間とコストを事前に評価できる。
従来SAPは上述のアプローチを展開していたが、期間とコストを含めて提案することまではできていなかった。しかし、パートナーにさまざまなノウハウが蓄積されてきたと同時に、顧客側のアプローチ方針が変化したことにより、期間とコストの明示が可能になった。
これまでは、事前に十分準備したつもりでいても、プロジェクトが開始するとなかなかシステムの品質を維持できず、いつしか稼働させることが目的化して、本来目指したシステムとは違うシステムが出来上がるケースが多くあった。しかし現在は、顧客側でも基幹システム導入の経験や苦労、クラウド、SaaSの利用経験などを経ることで、ボトムアップ型の部分最適化を進めたり、業務に合わせてパッケージを作ったりといった旧来型のアプローチと決別するケースが多くなってきた。
クラウドベースの企業が増え、期間とコストを圧縮した導入事例が出てきている。このような要素があいまって、SAPが提案段階から期間とコストを明示することが可能となった。
本稿は、2022年7月15日のセミナー「実は顧客の 8 割が中堅企業! 中堅・中小企業は、SAP ERP をどのように活用し、DX を実現しているのか?」の講演内容を基に、編集部で再構成した。
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