バックオフィスにおいて2023年の大きなイベントとなるのが「改正電子帳簿保存法」「インボイス制度」への対応だ。それぞれの対応状況を従業員規模別にみた。
キーマンズネット編集部では2023年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「電帳法/インボイス」「Windows 11」「社内ヘルプデスク」「音声コミュニケーション」「デジタルスキル」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2022年11月11日〜12月12日、有効回答数654件)。企業における2023年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。第2回のテーマは「電子帳簿保存法/インボイス制度」だ。
2022年1月、国税関係の帳簿や証憑(しょうひょう)書類などの一部、または全てをデータで保存することを認める改正電子帳簿保存法が施行された。法令の一部が緩和された一方で電子取引書面の出力保存が禁止となった。その後、準備期間が短いことから、やむを得ない事情がある場合に限り、2年間の宥恕(ゆうじょ)措置(2023年12月まで)の適用が発表された。
また、2023年10月には「インボイス(適格請求書)制度」が控えている。インボイスが発行されなければ消費税の仕入額控除は受けられず、買い手側から求められた場合、売り手側はインボイスを発行しなければならない。インボイスを発行するには適格請求書発行事業者として税務署の登録を受ける必要がある。
改正電子帳簿保存法では、取引年月日など指定の条件で電子取引データを検索でき、削除、変更できない環境にデータを保存しなければならない。インボイス制度では、対応した請求書発行システムや販売管理システムへの移行を検討する必要がある。
これらがバックオフィス部門における2023年の「二大イベント」となる。本調査ではシステム対応の観点で、それぞれの進捗(しんちょく)度合いと、対応中に発生した「ヒヤリハット」なトラブル事例を、アンケート結果を基に紹介する。
まず、改正電子帳簿保存法へのシステム対応について、進み具合を尋ねた結果が図1だ(従業員規模別)。全体の割合を見ると「対応を計画中」が約3割で、「既に対応済み」とした割合は18.3%と2割に満たない。「対応済み」は従業員規模5001人以上の大企業が中心で、従業員数が1000人未満の中堅・中小企業においては「計画中」が3割強を占めた。
法令未対応に対する明確なペナルティーは示されてはいないが、規定に違反したとされる場合は追徴課税や過料が課される場合もあるため、速やかな対応が求められる。
次に、インボイス制度へのシステム対応の進捗だ(図2)。電子帳簿保存法とは異なる傾向として、「既に対応済み」とした割合が従業員数「501〜1000人」の企業で37.5%と、5001人以上の33.8%を上回る結果となった。
次に、改正電子帳簿保存法とインボイス制度への対応中に起こった混乱や問題、トラブルについてフリーコメント式で尋ねた結果を紹介する。特にインボイス制度では、個人事業主に与える影響が大きいことから、個人事業主との取引に関する問題が多く寄せられた。
改正電子帳簿保存法では対応ポイントである「データの管理」「保存場所」にまつわるコメントが多く寄せられた。また、「対応する担当部署を決めるに当たり、内部で押し付け合いがあった」など、対応の煩雑さからくる社内トラブルを挙げる声もあった。
インボイス制度への対応では、「個人事業主が離れていく原因にもなる」などの声もあり、取引先である個人事業主のインボイス対応に関するコメントが中心となった。
改正電子帳簿保存法とインボイス制度は法令内容が複雑な部分があることから、先送りにされがちだ。しかし、双方ともに対応リミットが近づいている。ウェビナーまたはオフラインセミナーなどが開催されており、今からでもまだできることはある。情報収集を進めつつ、自社の状況に合った対応を進めていきたい。
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