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「ピボットテーブル」でExcelデータ集計を時短するには? 初心者のための使い方講座

Excelのテーブルから特定のデータを抽出し、集計する手段の一つである「ピボットテーブル」。実例を基に、データの取りまとめ方を解説する。

» 2023年02月06日 07時00分 公開
[三沢友治富士ソフト]

 第3回までは組織全体で使える「Microsoft Excel」(以下、Excel)の活用法を紹介しました。第4回となる本稿では、特に情報の取りまとめが必要なマネジャー層や管理職で使える、ピボットテーブルを使ったデータの取りまとめ方を紹介します。

 部門のマネジャーがExcelの定型フォーマットを準備してメンバーに入力を求めるシーンは、業務でよく見かける光景です。例えば、図1のように総務部が部内のセキュリティ対策の状況を取りまとめるために総務部の各課に依頼して、部門メンバーに状況を入力してもらうといった場合です。

図1 総務部総務課のユーザー別のセキュリティ対応状況 各自が入力したデータを収集(出典:筆者キャプチャー画像)
図2 総務部の課別のセキュリティ対応状況 各課で収集したユーザー別のデータを課別に集計(出典:筆者キャプチャー画像)

 図1のような情報を図2のように集計する場合、手作業では情報の転記ミスが起こりやすく、作業者の負荷も高まります。最近は、業務の効率化やデータ精度の向上の観点から「Microsoft Power Apps」などのフォームベースアプリを使うケースもあります。これをExcelの代替ツールとして利用することもできますが、集計単位ごとにフォームを作成する必要があり、その分工数も膨らみがちです。

 人手による作業を減らし、集計処理の手間を削減する手段としてExcelの「ピボットテーブル」」があります。図1、図2の例を基に、ピボットテーブルを使ったデータの取りまとめ方を見ていきましょう。

実例で解説、Excel「ピボットテーブル」の使い方

 「ピボット」とは、Excelの表から特定のデータを取り出す方法です。それをテーブル上に加工したものがピボットテーブルです。

 ピボットテーブルを作成するには、まず図1のようなデータを作成して、ショートカット「Ctrl + T」(Windowsの場合)を押してテーブル化します。次に、テーブルのセルを選択して「挿入」タブの「おすすめピボットテーブル」をクリックします。

図3 「おすすめピボットテーブル」ではおすすめを提案してくれます(出典:筆者キャプチャー画像)

 おすすめピボットテーブル機能は、データの内容に応じておすすめのピボットテーブルを提案します。図1のように数値がなく総量も少ないデータの場合は何も提案がないケースもありますが、まずは確認してみるといいでしょう。残念ながら図1の例では提案がなかったので、「新しいワークシート」ボタンをクリックしてピボットテーブルを新たに作成します。

図4 提案されない場合は「新しいワークシート」でピボットテーブルを作成できます(出典:筆者キャプチャー画像)

 新しいワークシートにピボットテーブルを作成するとオブジェクトができますが、「ピボットテーブルレポートを操作するにはこの領域をクリックしてください」と表示され、何も表示されません。ピボットテーブルにデータを表示させるには、作成されたオブジェクトをクリックしてピボットテーブルを完成させる必要があります。

図5 ピボットテーブルには何も表示されません(出典:筆者キャプチャー画像)

 右側にピボットテーブルのフィールドが表示されたら、図6のように上部にある項目を「行」と「値」にドラッグします。行には縦方向に並べたい内容を、値には行に対応する数値情報としたい項目を設定します。すると列の箇所に「Σ」が表示されます。このΣは合計を列に表示するという内容です。

図6 行と値にドラッグすると列が自動的に生成されます(出典:筆者キャプチャー画像)

 行と値を設定すると、ピボットテーブルに値が表示されます。1つのテーブルからデータを集計するにはこの方法が簡単です。これで総務課のデータのとりまとめが完了しました(図7)。

図7 1つのテーブルからピボットテーブルを簡単に作成できました(出典:筆者キャプチャー画像)

複数のデータからピボットを作成する方法

 次に、複数の課にまたがる情報のまとめ方です。複数のExcelファイル(ブック)やシートのデータを取りまとめて1つのピボットを作りたい場合、「ピボットテーブル ウィザード」を使います。ピボットテーブル ウィザードで図1のデータを基に図 2のように集計する方法を見てみましょう。

 まず対象のExcelファイルを開き、「Alt」「D」「P」の順にキーを押下すると、ピボットテーブル ウィザードが表示されます。「複数のワークシート範囲」を選択し、「次へ」をクリックします。

図8 ピボットテーブル ウィザードを利用すると複数の範囲からピボットを作成できます(出典:筆者キャプチャー画像)

 続いて表のまとまりであるページフィールドの作成方法を指定します。ページはワークシートそのものを指しますが、「指定」にすることでワークシートごとに名前を設定できるようになります。

図9 ページフィールドの作成方法は「指定」を選択します(出典:筆者キャプチャー画像)

 続いてワークシートを指定します。まずは「範囲」で集計したい範囲を選択します。ここで選択する列数は全てのワークシートで同じとする必要があるので注意しましょう。「ページ フィールド数」の項目を1以上に設定すると、そのワークシートに設定できる属性を作成できます。フィルターなどに活用できるので、1以上を設定して一意になる値を入力します。

図10 この画面で複数のデータ(ワークシート)を選択します(出典:筆者キャプチャー画像)

 複数選択すると図11のように選択範囲に内容が増えていきます。図11では絶対値による範囲を設定していますが、テーブル名も指定できます。ここで選んだ列はピボットに全て表示される仕様となっています。列を選びたい場合はこのタイミングで選びましょう。

図11 範囲一覧に選択したピボットの範囲が複数表示されます(出典:筆者キャプチャー画像)

 最後にピボットの配置位置を決定すれば設定終了です。

図12 ピボットテーブルの作成場所を指定します(出典:筆者キャプチャー画像)

 この手順によって、複数のデータから特定の情報を抽出し、表にまとめることが可能になります。課の担当者は収集したデータを課別に集計する必要はなく、収集したデータをそのまま部門の担当者に渡すだけで済みます。事前にファイルを共有するだけでデータの取りまとめができ、全体の作業効率を上げることが可能です。

図13 複数データがピボットテーブルにまとまります(出典:筆者キャプチャー画像)

 なお、「Microsoft 365 Apps」を利用している場合、おすすめのピボットテーブル以外に、「データ分析」機能も利用できます。この機能はMicrosoft 365 Appsのホームリボンにあり、AI(人工知能)が最適な分析観点を提示します。

図14 データ分析機能(出典:筆者キャプチャー画像)

 また、おすすめのピボットテーブルとは異なり、複数の分析視点を提案します。ピボットテーブルだけではなくピボットグラフも提示するため、どのように表現するかが決まっていないデータの場合は、利用してみるといいでしょう。

図15 データ分析ではグラフも生成することができる(出典:筆者キャプチャー画像)

 このように、情報を俯瞰(ふかん)する方法はExcel以外にも「Microsoft Power BI」などさまざまな手法があります。情報のリアルタイム性や準備のしやすさなどを指標にどの方法が最適なのかを判断して選択するといいでしょう。今回のようにまだまだExcelによって効率化できる場面は多くあります。標準機能や仕組みを覚えて、Excelの活用に挑戦してみてください。

著者紹介:三沢友治

2007年頃に「Microsoft SharePoint Server」の導入に携わり、それ以後数多くのMicrosoft製品の導入案件を担当。最近は「Microsoft 365」の導入や活用支援、さらにはMicrosoft 365の機能を活用したカスタマイズ開発の指揮も担う。ミドルウェアのバージョンアップにおけるカスタム機能の互換性維持に苦慮した経験から、継続開発が続けられるシステム環境としてMicrosoft製品群に期待を寄せる。2017年には「Microsoft MVP Award」を受賞。


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