Windows OSにWordやExcel、Teamsなど、われわれは日々何らかのMicrosoft製品と関わりながら業務を進めている。ある企業は、働き方を変える手段として、Microsoft製品の力を借りない道を選んだ。
オフィススイートのデファクトスタンダードとなった「Microsoft 365」。多くの企業が業務基盤として採用する中で、システムの企画、開発を手掛けるG-genはMicrosoft製品に頼らない働き方を選択した。
その背景には、同社ビジネス推進部の菊池勇一氏と森本健誉氏が前職で経験した失敗談があった。両氏は共に同じ大手事務機器メーカーに勤めていた過去があり、G-genで再会した。前職でのMicrosoft製品を中心とした仕事の進め方を振り返りながら、オンラインセミナーで「脱・Microsoft」を決めた理由を両氏が語った。
G-genは、コロナ禍の到来を機にフルリモートの働き方にシフトした。従業員全員に「Chromebook」を配布し、Windows端末は一切使っていないという。
勤務場所に制限はなく、従業員は全国を働く場所としている。業務ツールは「Google Workspace」とChromebookのみで、Googleアカウントさえあれば必要なツールにアクセスできる。「Microsoft Active Directory」によるユーザー管理の必要もなくなった。VPNを使って社内システムに接続することもなく、全従業員がクラウドネイティブな環境で働いている。
菊池氏は、Microsoft製品に頼った働き方をやめた理由として、前職での失敗談も交えながら5つの理由を明かした。
Microsoft 365にはPCにインストールして利用するクライアントアプリの他、Webブラウザから利用できるモバイルアプリ版がある。多くの企業では現在もクライアントアプリをメインとし、菊池氏の前職でも同様だったという。クライアントアプリはインストールの手間に加えて、情シスでのアプリケーション管理も伴う。
クライアントアプリは共同編集の概念がなく、ファイルを回覧するなどして編集作業を進める必要がある。菊池氏によれば、前職では複数人が声を掛け合いながら編集を進める場面もあったという。
他のメンバーと分担しながら作業を進めるケースでは、類似ファイルが生まれることが度々あった。似たようなファイルが乱立すると、どれが最終版なのかが分からなくなる。さらに、メールで情報を共有する際、複製したファイルを添付して送っていたため、ファイルがあちらこちらにあふれ、混乱する場面もあったという。
Microsoft 365ではデータの保存先として「Microsoft OneDrive」と「Microsoft SharePoint」がある。これに加えて、多くの企業ではファイルサーバも運用していることだろう。類似ファイルが各所に重複して保管され、それがストレージのデータ容量を圧迫する原因になっていた。また、ファイルの保存先に関するルールがないためファイルが各所に散乱し、目的のファイルを見つけ出すのに時間がかかっていた。
IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2022」によれば、「ランサムウェアによる被害」「標的型攻撃による機密情報の窃取 」が上位に挙がった。「Microsoft Excel」や「Microsoft Word」に仕込まれたマクロウイルスによるマルウェアの感染リスクがあった。
これらの経験を踏まえて、森本氏はMicrosoft 365とGoogle Workspaceの違いを解説しながら、業務改革基盤としてGoogle Workspaceを選んだ理由を挙げた。
Microsoft 365はOSやPCに細かな利用要件(PCのスペック要件など)が設定されているのに対して、Google Workspaceにはそうした煩わしい条件はない。必要なのはWebブラウザだけだ。「Google Chrome」「Microsoft Edge」「Firefox」「Safari」など一般的に利用されているWebブラウザであれば問題なく利用できる。
Google Workspaceでは、ファイルのリアルタイム編集によって協働型の働き方を可能にし、人とつながりながら業務を進められる。「個から組織、チーム」を可能とする。
Google Workspaceではファイルを回覧しながら複数人で作業を進めるのではなく、1つのファイルをソース元として複数人で同時編集しながら成果物を作るスタイルを基本とする。ファイルのコピーが散乱することもない。
Microsoft 365では、ファイルに共有リンクを張った後にファイル名を変えたり保存先のフォルダを変更したりするとリンクが切れて混乱することがある。Google Workspaceでは、共有リンクを生成した後にファイル名やフォルダを変更してもリンクが切れることはない。メールを使ってコミュニケーションを図るという必要がなくなった。
森本氏によると、前職では会議の議事録を共有する際、担当者がメモを取って「Microsoft OneNote」にまとめ、関係者にメールで共有していたという。現職ではそうした手間はなくなり、参加者全員で「Google ドキュメント」に議事を書き込むスタイルに変わった。
WindowsとMicrosoft 365の環境では、ファイルの検索性に問題があったが、Google Workspaceでは「Google Cloud Search」でGoogle検索と同じ要領で探したいファイルを迅速に探し出せる。「Google ドライブ」のみならず、「Gmail」や各種Googleのサービスを横断した検索が可能だ。データの格納先でそれぞれ検索する手間はなくなった。
IT担当者の頭を悩ますのがセキュリティだ。「ChromeOS」は読み取り専用のOSとして設計されていて、OSにセキュリティ機能が組み込まれている。重厚なエンドポイントセキュリティは不要だ。利用する端末が壊れた場合、別のChromebookを用意してGoogleアカウントでログインすれば、業務を継続できる。煩わしいキッティング作業は不要となる。また、Chromebookのデータは全てGoogleドライブに保存されるため、データレスな運用が可能となる。
G-genは「働き方改革」ではなく「働き方『変革』」を意識し、新たな働き方を一から作り上げているところだ。その手段として、ChromebookとGoogle Workspaceを選んだ。自社の経験を基に、今後も企業のワークシフトをサポートする考えだ。
本稿はオンラインセミナー「G-genが365なしで働けている理由」(主催:G-gen)の講演内容を基に、編集部で再構成した。
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