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Microsoftの月額制VDI「Windows 365」は何ができる? 機能と特徴をカンタン解説

Windows 10/11をネットワーク経由で利用できるWindows 365。その使いどころを知るために、主な特長を解説する。

» 2023年02月22日 07時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 「Windows 365 Cloud PC」(以下、Windows 365)とは、Webブラウザで「Windows 10」と「Windows 11」を利用できるMicrosoftのサブスクリプションサービスだ。「Microsoft Cloud」に接続してWindows OSやアプリなどを手元のデバイスにストリーミングすることで、出先からでもオフィスPCの作業環境を利用できる。

 本稿では、Windows 365の主要機能を簡単に解説するとともに、2021年にリリースされたWindows 11の特長をおさらいする。

Windows 365はMicrosoftの仮想デスクトップと何が違う?

 Windows 365は、しばしばMicrosoftのデスクトップ仮想化サービス「Azure Virtual Desktop」(AVD)と混同されることがある。日本マイクロソフトの春日井 良隆氏は「AVDはオーダーメイドのスーツで、Windows 365は既製品のスーツ」と喩えながら両者の違いを説明する。「Microsoft Intune」との統合管理が容易で、VDI(デスクトップ仮想化)や「Microsoft Azure」の知識がなくても利用できるのがWindows 365の特長だ。

 AVDはマルチセッションでリソースを効率的に利用でき、マシンスペックやOSタイプなどを用途に応じてカスタマイズできる。さらに「Microsoft Azure」のリソースも利用可能だ。

図1 Windows 365とAzure Virtual Desktop(AVD)の違い(出典:投影資料のキャプチャー)

 Windows 365の代表的な機能を4つ挙げ、それぞれの概要を説明する。

1.Windows 365 Switch

 Windows 11のタスクビューでWindows 365とローカルPCを簡単に切り替えることができ、双方へのアクセスを容易にする。

図2 クライアントPC上でクラウドPCを起動、簡単に切り替え可能に(出典:投影資料のキャプチャー)

2.Windows 365 Boot

 PCを起動すると同時にWindows 365が立ち上がる。「Microsoft Endpoint manager」で設定が可能。

3.Windows 365 Offline

 Windows 365に必要な情報をPCにキャッシュすることで、オフラインの状態でもWindows 365を利用できる。インターネットに接続次第、オフラインの環境が同期される。

4.Windows 365 app

 「Windows 365 app」とは「Microsoft Store」から入手できる専用アプリだ。専用環境の中でPINや認証情報を組み込んだ状態でWindows 365を起動でき、安全な環境で利用できる。

図3 Windows 365をアプリとして起動(Windows 365 app)(出典:投影資料のキャプチャー)

Windows 11の特長をおさらい

 Microsoftは、Windows 11の機能を手軽に利用できる手段としてWindows 365をリリースした。Windows 11がリリースされてから1年以上が過ぎたが、ここで、Windows 11の特徴をおさらいしよう。

 春日井氏は「この3年でリモート会議が増え、スマホよりもPCの利用時間が増えたことで、さらにPCの存在意義が増した」と語る。一方で、従業員にテレワーク疲れを感じさせない環境や、オンラインでの働き方に伴う心理的障壁の低減、社外でのセキュリティリスクの抑制など新たな課題も見えてきた。これらを解決することがWindows 11をリリースした理由だという。

 春日井氏は、Windows 11によって次の3つの効果が得られると語り、それぞれの特長を説明した。

1.生産性の向上

 Windows 11では、生産性の向上に寄与する改善が加えられた。以下が、主な改善点だ。

ユーザーインタフェースの改善

 ファイルエクスプローラのクイックアクセス機能やタブ機能、スナップレイアウト機能に加えて、ショートカットキーで使える音声入力コマンドなどが追加された。

Android/iOSスマートフォンとの連携性

 Androidスマホに加えて「iPhone」の写真の取り込みも可能になったことで、PowerPointなどのOfficeアプリにiPhoneの写真を張り付けることが容易になった。

Power Automate Desktopが標準搭載

 Microsoftのデスクトップ型RPAツール「Power Automate Desktop」が標準で搭載された。「Microsoft Excel」からのデータ抽出やインターネットでの情報収集などの定型作業を自動化でき、日常的に発生する面倒な作業の手間を省ける。

図4 Power Automateのサンプル一覧画面の例(出典:投影資料のキャプチャー)

2.ヘルプデスクへの問い合わせ工数を削減

 OS標準のヘルプ機能以外にも、IT部門の問い合わせ対応工数を削減する工夫が施された。

 Windows 10と11は同じカーネルを使用しているため、それぞれのOSを同じ手段で管理できる。例えば、Microsoft Intuneと「Windows Update」「Microsoft Active Directory」で利用部門のPCを管理している企業は、その仕組みを変えることなくWindows 11のPCも管理できる。

 アプリの互換性については約80万本のアプリの評価を済ませており(本稿公開時点)、Microsoftの検証で99.7%の互換率を確認したという。互換性を持たないアプリであっても、Microsoftのサポートサービス「App Assure プログラム」を利用することで、問題解決に向けた技術的なサポートを受けられる。

3.OSのリスクプロファイルを改善

 Microsoftはサードパーティー製のツールを使わなくても、Windowsの基本機能で十分なセキュリティ性を確保することを目指す。その中心となる機能が「Microsoft Defender」だ。

 Microsoft Defenderはアンチウイルスソフトと捉えている人が多いが、実はそれだけではない。パーソナルファイアウォールや有害なWebサイトからの保護機能、デバイス保護や資格情報の保護機能、その他、セキュリティ統合監視機能なども備える。さらに「Microsoft 365」の各種セキュリティ機能を連携させることで、高いセキュリティレベルで情報やデバイスの保護が可能となる。

図5 Windows 11とそのまわりに取りそろえられたレイヤー別のセキュリティ対策(出典:投影資料のキャプチャー)

 Microsoftはハードウェア分離の考え方にのっとって、ハードウェアとOS、アプリのそれぞれのレイヤーに適したセキュリティを施している。「Microsoft Pluton Processor」によってTPM(Trusted Platform Module)チップの弱点となり得るバスインタフェースをなくし、セキュリティ機能をCPUに組み込むことで、ハードウェアレベルでのセキュリティ機能を提供する。

本記事はオンラインイベント「Microsoft Base Festa 2023」における春日井 良隆氏のセッション「なにがよいの?Windows 11。Cloud PCってなに?Windows 365」(主催:日本マイクロソフト)の内容を編集部で再構成した。

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