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「会議の効率化」は間違い、Teamsを“会議代わり”にするには

本連載では、現場でよく見かける「ざんねんな仕事の進め方」に対して、Microsoft 365のアプリケーションを用いた解決策を提示する。第1回のテーマは「会議」だ。何でも会議で決めようとしていては、いつまでたっても生産性は上がらない。

» 2023年03月08日 07時00分 公開
[太田浩史内田洋行]

 東京都が発表した「テレワーク実施率調査結果」によると、2023年1月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は51.7%で、その割合は減少傾向にあります。働き方は徐々にオフラインに戻りつつありますが、会議までもがオフラインに戻ることはなく、オフィスに出社してもオンライン会議を実施することが当たり前の日常となりました。オンライン会議は私たちの働き方に完全に定着しました。

 オンライン会議には多くのメリットがあります。1つの場所に集まる必要がないため移動時間の節約につながり、また、会議室が確保できないことで実施日時が決まらないといったこともありません。いつでも気軽に会議を実施できます。

 Harvard Business Reviewが実施した調査結果によれば(注)、2020年と2022年を比較すると1会議当たりの時間は25%減少し、さらには会議の平均参加人数もおよそ半分になったといいます。これはオンライン会議のメリットを生かした働き方が定着した結果であり、従業員がテレワークやツールの使い方に適応した現れとも考えられます。一方で、短時間、少人数での突発的な会議が増加し、1日の多くが会議で占められることも珍しくないようです。これでは効率的な働き方とは言えません。今、無駄な会議の削減が求められています。

著者プロフィール:太田浩史(内田洋行 ネットワークビジネス推進事業部)

2010年に内田洋行でMicrosoft 365(当時はBPOS)の導入に携わり、以後は自社、他社問わず、Microsoft 365の導入から活用を支援し、Microsoft 365の魅力に憑りつかれる。自称Microsoft 365ギーク。多くの経験で得られたナレッジを各種イベントでの登壇や書籍、ブログ、SNSなどを通じて広く共有し、2013年にはMicrosoftから「Microsoft MVP Award」を受賞。


無駄な会議を減らすには「会議以外の方法」を検討する

 そもそも「無駄な会議」とは何でしょうか。定例化された会議は、無駄な会議として挙げられる代表例です。なぜなら、決められた日時に「取りあえず集まるだけ」になりがちで、明確な議題もなく時間だけを浪費してしまうことも多くあるからです。また、それぞれが持ち寄った情報を共有するだけで終わることも多く、それならば資料の共有だけで十分だと考える人も多いでしょう。情報を共有すること自体は価値があることですが、それを目的とした会議を無駄だと考える人は多くいます。「会議」という方法が適していないのです。

 何かを決めるためにはとにかく会議が必要だと考える人もいます。さらには、普段からメンバー間でコミュニケーションを取る方法がなく、会議でしか互いに相談できる場がないというケースもあります。これは、会議以外のコミュニケーション手段がないために、会議に頼りすぎていることが原因です。

会議を見直すには「質の向上」と「数の削減」の両面で考えることが重要(出典:筆者作成の資料)

 これらの状況を改善するには、会議そのものの効率を上げる他、会議に代替するコミュニケーション手段を検討する必要があります。

会議とチャット、適した手法を場面で見極める

 メンバー間の情報共有やコミュニケーションには「Microsoft Teams」(以下、Teams)のようなチャットツールが適しています。それも、メンバー個別でやり取りするプライベートチャットではなく「チーム」を活用することが大切です。既にTeamsを利用している企業や組織であっても、プライベートチャットの利用が極端に多い場合があります。このような使い方では、いつまでたっても情報共有の場は会議になってしまいます。普段からメンバー全員が見ることができるオープンな場に、より多くの情報を共有するよう意識することが必要です。共有された情報をチーム全員が目を通すことで、あらためて会議で共有する必要はなくなります。

 チャットでのコミュニケーションが会議よりも有効である場面もあります。例えば、自分の意見や発表に対してフィードバックを得たいときは、会議よりもチャットの方が有益なコメントを得られやすい場合もあります。また、じっくり考えて後からフィードバックを送りたいと考えるメンバーもいるでしょう。その場合、その場でしか発言できない会議よりも、時間をおいて意見を書き込めるチャットを利用する方が有効です。さらに、匿名で意見を集めたいのであれば、「Microsoft Forms」を組み合わせて利用して、アンケート形式で意見を募る方法もあります。

 会議でよく議題となるのが進捗(しんちょく)管理です。Teamsのチームを利用することで、「Microsoft Planner」を組み合わせてメンバーのタスクと進捗状況を把握でき、会議でタスクの進捗を一つ一つ確認する必要がなくなります。さらに、上司やリーダーの判断を仰ぎたいために、会議を開催する場合もあります。Teamsの「承認アプリ」を利用することで、会議を実施せずにその都度意思決定を求める使い方も可能です。承認アプリという名前から業務ワークフローをイメージする人もいますが、簡易な機能やその使い勝手から、日常的な判断や意思決定のために利用するのに便利です。

会議数を削減するには代替手段の検討が必要(出典:筆者作成の資料)

 気を付けなければならないのは、コミュニケーションにも労力や時間的コストがかかることです。特に会議は、参加者全員の時間を拘束するため、その分大きな時間的コストがかかるコミュニケーション方法です。しかしながら、普段はそれを意識していないため、気が付けば大きなコストになっていた、ということも往々にしてあります。

 必ず回避したいのが、チャットコミュニケーションと会議を同時に進めるパターンです。コミュニケーションコストが二重で発生することでメンバーの負担が増え、せっかくの取り組みも頓挫しがちです。会議の改善や削減のためには、思い切って不要な取り組みをやめて新しいことにチャレンジし、試行錯誤する必要があります。

何に取り組み、何をやらないのかを明確にする(出典:筆者作成の資料)

会議は「効率化」ではなく「削減」を目標にする

 こうして無駄な会議をチャットコミュニケーションに置き換えると、業務スピードの向上を感じるでしょう。それは、判断や意思決定のために会議を待つ必要がなくなったからです。業務の進捗報告が会議に依存し、会議でしかリーダーの判断を仰げなくなれば、その間メンバーの手が止まってしまいます。メンバーそれぞれの作業状況や判断、意思決定をチャットで確認できるようになれば、無駄な待ち時間の削減にもつながります。

 会議は「効率化」ではなく「減らす」取り組みが重要です。本稿で述べた通り、会議の削減にはいかにチャットを有効活用できるかどうかがキーポイントになります。Teamsのチームチャットはメンバーと多くの情報を共有できるだけでなく、上司やリーダーの判断や意思決定を伝える手段にもなります。会議数の削減は、業務の効率化にも大きく寄与するでしょう。

 最後に、コミュニケーション手段の切り替えはメンバーにとって大きなインパクトを与え、失敗する可能性もあるため「なかなか踏み切れない」という声も聞かれます。既に勤務先でTeamsを利用しているのであれば、大きな準備は必要ありません。まずは1カ月、1週間など期間を決めて、メンバー全員でチャットによるコミュニケーション改善を実践してみてはいかがでしょうか。会議でしかものを決められないこれまでの方法を変えたいと思っているのであれば、「まずは変えてみること」です。

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