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ファイルサーバおよびクラウドストレージの利用状況(2023年)/後編

今や業務で当たり前のように利用するファイルサーバやクラウドストレージ。しかし利用頻度が高いからこそ、セキュリティリスクや管理工数の増大など”運用面での課題”も浮き彫りになっている。

» 2023年03月16日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 ファイル運用の見直し需要が増している現状を受け、キーマンズネットは「ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況」と題してアンケート調査を実施した(実施期間:2023年2月7日〜2月27日、回答件数:403件)。前編となる本稿では、ファイルサーバとクラウドストレージの利用率や併用率、利用サービスのシェアや今後の利用意向について取り上げた。後編は、ファイルサーバについての満足度やトラブル事例に焦点を当て、ファイル管理における注意点や今後注目される運用手法について紹介する。

ファイルサーバの"ごみ箱化"が深刻な状況に

 はじめにファイルサーバの利用に対して満足度を聞いたところ「満足」(16.3%)と、「やや満足」(31.5%)を合わせた47.8%がおおむね満足している結果になった(図1)

図1 ファイルサーバの満足度

 「やや不満」(41.5%)、「不満」(10.7%)とした回答者に対し、ファイルサーバへの不満を聞いたところ「不要なデータが多く整理できていない」(54.0%)、「誰のものか分からないデータが多い」(46.0%)、「容量が足りない」(41.5%)という項目が上位に上がった(図2)。

上位項目については2022年1月に実施した前回調査から変動はなかったが「不要なデータが多く整理できない」「誰のものか分からないデータが多い」といったファイルサーバの”ごみ箱化”への不満は若干増加傾向にある。一方、進捗が見られたのは「組織改編の際のディレクトリ管理が煩雑」(29.5%)という項目で、1年前から7.3ポイント減少と全項目の中でも増減幅が最も大きかった。AD(Active Directory)と連携しアクセス権限の変更を一本化するツールの利用が広まったことや、コロナ禍に伴う組織変更が落ち着きを見せたことが考えられる。

図2 ファイルサーバに対する不満

「管理者が誤って全削除…」 403人に聞いたファイル管理”トラブル”事例

 企業におけるファイル管理で忘れてはならないのがセキュリティリスクへの対応だ。ファイルサーバやクラウドストレージへの不正アクセスや設定ミスによる情報漏えいのトラブルは絶えない。ファイルサーバおよびクラウドストレージの利用者にトラブル発生有無を聞いたところ、約3割が「トラブルの経験あり」と答えた(図3)。

 フリーコメントで寄せられたトラブル事例は、2種類に大別できる。最も多く寄せられたのが”人的ミス”とHDDなどの”故障”に由来した「データ消失」だ。人的ミスでは「サーバ管理者がディスクメンテ時にファイルを全て消去した」「バックアップデータの消失」といった管理者に起因したものや、「エンドユーザーが間違ってファイルを消してしまった」「フォルダが操作誤りにより移動、もしくは削除されてデータが参照できないことがある」など、利用者側の操作ミスによるものが挙げられた。故障については「HDDの故障。構成と運用対応が適切でなかったためデータの一部を失った」や「RAIDの故障によってバックアップデータを損失してしまった」という事例が挙げられた。

 2つ目は「アクセス権限の設定ミス」によるトラブルだ。「異動に伴うアクセス権限の変更や臨時対応時の戻し忘れ」「似たようなディレクトリ名が多くあり、操作で間違って削除する」というコメントに見られるように「アクセス権が適正に設定されているか分からず、セキュリティに不安がある」企業も少なくないようだ。少しでも不安を抱える企業は早期に原因究明と対策を行う必要があるだろう。

 他にも「障害が発生してサービスがデグレードに陥り、データにアクセスできない事象が発生した」や「在宅勤務中に大きなファイルを更新してしまうと同期作業でネットワークの帯域が圧迫されてしまう」といった「アクセス不良」に関するトラブルや、「ディスク容量の逼迫」「定期的に棚卸しをしないと利用していないデータがそのままになり、ストレージ容量の圧迫や管理工数が発生する」といったコメントに見られる「容量不足」についての事例も多く寄せられた。これらはセキュリティリスクへの直接的な影響にはなりづらい一方、生産性の低下やバックアップ不備につながることも考えられるため、合わせて対策が必要だ。

図3 ファイルサーバやクラウドストレージに関してのトラブル経験の有無

世界規模で市場拡大中のマネージドサービス、国内でも利用率はジワリ増加傾向に

 ファイルサーバ運用はもちろん、クラウドストレージが混在する環境でのファイル管理が困難な場合は、運用そのものを外部委託できる「マネージドファイルサーバ」を選択するのも一手だ。利用率は13.4%と少数ではあるものの、2022年の前回調査からは0.6ポイント増と、大企業を中心にじわじわと認知や利用が広がってきている(図4)。

 Panorama Data Insightsが2022年3月に発表したレポートでは、ファイル管理を含めた広義のマネージドサービスについて、世界の市場規模は2021年の2467億米ドルから2030年に8479億米ドルにまで達すると予測されている。ITサービスの複雑化や労働人口不足を背景に管理者の採用や育成の難易度が増し、専門のプロバイダーに運用管理業務を委託する潮流は世界的に進んでいるとみられている。マネージドサービスはセキュリティ強化や管理体制の構築コスト軽減のメリットがある一方、運用コストや自社にノウハウが蓄積されないなどの懸念も考えられる。自社状況に合わせて"選択肢の一つ"として動向に注目しておきたいサービスだ。

図4 現在のファイルサーバの運用形態

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