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ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況(2023年)/前編

コロナ禍やDX推進の潮流などが、企業におけるファイル管理の在り方にも大きく影響を与えた。以前は個人利用が中心だったクラウドストレージが業務でも活用されるようになった一方、ファイルサーバ運用との共存やすみ分けが課題となっている。

» 2023年03月09日 09時00分 公開
[キーマンズネット]

 ファイル運用の見直し需要が増している現状を受け、キーマンズネットは「ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況」と題してアンケート調査を実施した(実施期間:2023年2月7日〜2月27日、回答件数:403件)。前編となる本稿では、ファイルサーバとクラウドストレージの利用率や併用率、利用サービスのシェアや今後の利用意向について取り上げる。

クラウドストレージ利用が順調に増加

 はじめにファイルサーバとクラウドストレージの利用状況を調査した。ファイルサーバの利用率は「ファイルサーバのみ利用」(30.5%)と「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」(53.1%)を合わせ83.6%だった(図1)。クラウドストレージの利用率は併用組の53.1%と「クラウドストレージのみ利用」(11.7%)を合わせて64.8%で、ファイルサーバの利用率が大きく上回った。

図1 ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況

 この結果を2022年1月に行った前回調査と比較したところ、ファイルサーバ利用率が3.5ポイント減少する代わりに、クラウドストレージ利用率が8.9ポイント増加した。特に「ファイルサーバのみ利用」が7.8ポイント減と目立ち、21年に実施した前々回調査と比較すると実に21.8ポイントも減少した。

 一方、クラウドストレージの利用率は増加傾向にある。22年からの伸び率を見ると”ファイルサーバとの併用”が4.3ポイント増、”クラウドストレージのみ利用”が4.6ポイント増と堅調な伸びを示した。コロナ禍で在宅勤務を導入する企業が増加したことで、テレワーク環境下でのファイル共有に有効なクラウドストレージを選択する企業が増えていると考えられる。

最も利用されているクラウドストレージは?

 利用企業が増えているクラウドストレージについて、どのようなサービスが人気なのだろうか。

 調査の結果、「Microsoft OneDrive」(66.3%)が大きくシェアを占め、次いで「Google ドライブ」(28.7%)や「Box」(23.4%)、「Dropbox」(12.6%)が続いた(図2)。

  上位はオフィススイートにバンドルされたサービスが並ぶ。キーマンズネットで2023年1月に実施した調査「Microsoft 365とGoogle Workspaceの利用状況」において、Microsoft 365の利用率が過半数を占めていたことからも、バンドルサービスであるMicrosoft OneDriveの利用率が高いこともうなずける。

 従業員規模で見ると比較的大きい企業で利用されている傾向にあり、OneDrive for Businessで利用できるアクセス制限やログ管理機能を用い、セキュリティリスクを軽減できる点などが選ばれる理由になっていると推察される。ちなみに今後利用予定のクラウドストレージについても同様の結果で、「Microsoft OneDrive」(48.9%)、「Google ドライブ」(25.5%)や「Box」(12.8%)、「Dropbox」(8.5%)が続いた

図2 現在利用しているクラウドストレージ

使い分け進むクラウドストレージとファイルサーバ

 今後もクラウドストレージの利用は進むのだろうか。「ファイルサーバのみ利用」とした回答者に対して今後クラウドストレージを利用する予定はあるか」と尋ねたところ、57.7%と過半数が「予定はない」と答えた一方、「予定がある」(8.1%)と「検討中」(30.1%)を合わせて38.1%が前向きな姿勢を示した(図3)。

図3 ファイルサーバのみ利用者に聞いた「今後のクラウドストレージ利用予定」

 2022年に実施した前回調査と比較すると、クラウドストレージ利用予定が”ない”が3.7ポイント増加しており、ファイルサーバのみでの運用を継続する企業も少なくない。

 今後クラウドストレージを利用する「予定がある」「検討中」とした回答者に対して、現在利用するファイルサーバの運用方法について聞いたところ、「ファイルサーバとクラウドストレージ併用する予定」(83.0%)が大多数で「ファイルサーバを廃止予定」(10.6%)は約1割にとどまった。

 この結果から、企業でファイルサーバとクラウドストレージの使い分けが進んでいるのではないかと推測できる。クラウドストレージはユーザーの場所を問わずファイルを操作、共有できることで、テレワークとの相性もよい。さらに、単にファイルの置き場所を提供するだけでなく、コラボレーション機能や文書管理機能、セキュリティ機能など、コンテンツ管理や活用にまつわるさまざまな機能を持ち、コラボレーション基盤としても有効だ。一方で、企業によっては自社のセキュリティポリシーにそぐわないケースもあるだろう。ファイルサーバの移行はデータ容量の見積もりや設計などに多くの勘所が必要で簡単ではないとも言われている。環境変化の激しい昨今、各社の状態に合わせて運用を最適化することが求められている。

 以上、前編ではファイルサーバとクラウドストレージの利用状況から、企業におけるファイル管理の動向を考察してきた。後編では、ファイルサーバについての満足度やトラブル事例などを紹介する。

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