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年収の差が生む「リスキリング格差」 お金と目的、学習意欲の課題デジタル関連技術のリスキリング調査

「ChatGPT」など生成系AIを代表とするテクノロジーの急速な発展により、デジタル関連スキルの習得が急務だ。リスキリングが求められる一方で、障壁もある。

» 2023年04月12日 14時00分 公開
[キーマンズネット]

 大手企業を中心にリスキリングの取り組みに関心が集まる一方で、中小企業など育成費用を捻出するのが困難な組織の従業員はリスキリングの機会を得ることが難しいのが現状だ。

 デジタル人材育成プラットフォームを提供するIGSのONGAESHIプロジェクトチームが20〜30代の社会人を対象に実施した調査(回答件数1854件、調査期間2022年12月19〜21日)によれば、現在、「リスキリングに取り組んでいる」とした人は19.6%(196人)、「リスキリングの必要性は感じるものの取り組んでいない人(リスキリング予備軍)」は35.1%(724人)、「取り組んだことはなく必要性も感じていない人」は45.3%(934人)だった。

 調査結果からリスキリング経験の有無と諦めた理由、学習したいこと、学習する自信が持てない理由、リスキリングを途中で中断した理由など、障壁となり得る項目を基に、リスキリングの課題の焦点を見ていく。

お金の課題、年収の差が生む「リスキリング格差」

 「デジタル関連のリスキリングのために実際にかけられる費用」を尋ねた項目では、全体の82%(273人)が「5万円未満」と回答した。さらに、年収400万円を境に比較したところ、年収400万円未満の85%(152人)と年収400万円以上の79%(121人)が「5万円未満」と回答した。

リスクリングのために払える費用はいくらまでか(出典:IGSのリリース資料)

 デジタル関連スキルを実務で使えるレベルになるまでには、学習にかかる費用は5万円を超えるケースが多く、「個人でリスキリング費用を負担することが難しい」という声が反映される結果となった。

 「費用が理由でデジタル関連のリスキリングを諦めたことがあるか」と尋ねた質問では、全体の44%(146人)が「ある」と回答した。さらに、年収400万円を境に比較したところ、年収400万円未満の人は51%(91人)、年収400万円以上の人は36%(55人)となった。20〜30代の賃金の低さが指摘される中で、経済格差によってリスキリング格差が広がっていることが分かる。

お金が理由でデジタル関連のリスキリングを諦めたことがあるか(出典:IGSのリリース資料)

リスキリングの目的は「給与を上げたい」「仕事の幅を広げたい」

 「デジタル関連のリスキリングをしたい理由」を尋ねた項目では、1位は「給与を上げたいから」(38%、138人)、2位は「仕事の幅を広げたいから」(34%、122人)、3位は「副業がしたいから」(31%、112人)となった。

デジタル関連のリスキリングをしたい理由(出典:IGSのリリース資料)

 また、リスキリングの経験および意向別では、「リスキリング中断者」は「好きな仕事がしたいから」が1位(「再度取り組みたい、リスキリング中断者」が45%、38人。「取り組みが止まったままの、リスキリング中断者」が35%、38人)で、「リスキリングの必要性を感じている未経験者」は「仕事の幅を広げたいから」が1位(43%、72人)とリスキリング中断者と未経験差では、傾向が異なる結果となった。

 「自分の市場価値を上げるために、学習したいことがあるか」を尋ねた質問では、「明確にある」「何となくある」を合わせて「学習したいことがある」と答えた人は全体の84%(301人)となった。また、リスキリングの経験および意向別で「学習したいことがある」と答えた人は、「再度取り組みたい、リスキリング中断者」が98%(83人)。「取り組みが止まったままの、リスキリング中断者」が92%(101人)。「リスキリングの必要性を感じている未経験者」は70%(117人)となり、リスキリングの経験がある、あるいは意向が高いほど、学習したいことがあることが分かる結果となった。

自分の市場価値を上げるために学習したいことがあるか(出典:IGSのリリース資料)

学習に「自信がない」、理由は「自分に合う勉強が分からない」

 「学習する自信はあるか」との質問では、全体では「とてもある」「ややある」を合わせると約半数(49%、174人)が「学習する自信がある」と答えた。

学習する自信はあるか(出典:IGSのリリース資料)

 また、リスキリング経験別では、学習する自信がない人(「あまりない」「全くない」と回答)は、割合が多い順に「リスキリングの必要性を感じている未経験者」(35%、59人名)、「リスキリング中断者」(11%、12人)、「取り組みが止まったままの、リスキリング中断者」(5%、4人)となった。リスキリングの経験がない、あるいは意向が低いほど、学習する自信がないことが分かる。

 「学習する自信がない」(学習する自信が「あまりない」「全くない」)と答えた人に対して、「なぜ学習する自信がないのか」を尋ねたところ、1位は「自分に合う勉強がわからないから」(51%、38人)、2位はわずかな差で「理解できるか不安だから」(48%、36人)となった。

学習に自信が持てない理由(出典:IGSのリリース資料)

 また、リスキリングの経験および意向別では、「再度取り組みたい、リスキリング中断者」の1位が「理解できるか不安だから」(75%、3人)。「取り組みが止まったままの、リスキリング中断者」の1位が「理解できるか不安だから」「自分に合う勉強がわからないから」(ともに、42%、5人)、「リスキリングの必要性を感じている未経験者」の1位は「自分に合う勉強がわからないから」(53%、72人)となり、数値の傾向は若干異なるものの、あまり大きな差は見られない。

 リスキリング中断者(「再度取り組みたい、リスキリング中断者」「リスキリング中断者」と回答)に対して、「リスキリングを中断した理由」を聞いた項目では、1位は「一人で勉強し続けるのがつらかったから」(45%、87人)、2位は「成長を実感できなかったから」(34%、66人)、3位は「お金が足りなくなったから」(24%、46人)となった。リスキリングを完走するためのサポートや、金銭的なサポートが必要であることが分かる。

リスキリングを中断した理由(出典:IGSのリリース資料)

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