Web会議の頻度が高まり、ツールに触れる機会が増えた今、使いづらさやストレスとなるポイントが鮮明になってきた。前編では「Web会議の課題」に焦点を当てたが、後編では「Web会議ツール」にフォーカスして、ユーザーから寄せられた意見や不満の声を紹介する。
Web会議ツールの普及とともに市場には類似サービスが増え、活用範囲も広がっている。キーマンズネットは「Web会議の課題とツール利用状況」と題してアンケート調査を実施した(実施期間:2023年3月10日〜3月24日、回答件数:262件)。後編となる本稿では「Web会議ツールの利用状況」に焦点を当てて、現在勤務先で利用しているツールと活用範囲、ツールに対する不満とその理由、そしてWeb会議ツールを提供するベンダーへの要望について、調査を掘り下げて紹介する。
まず、調査対象者の勤務先で利用するWeb会議ツールを選択式で尋ねたところ、最も割合が高いのが「Microsoft Teams」で77.1%、次いで「Zoomミーティング/無償版」(39.3%)、「Zoomミーティング/有償版」(34.0%)という並びになった(図1)。
2021年5月に実施した前回調査と比較すると順位に大きな変動はないが、Teamsの割合が7.6ポイント増加した。一方、Zoomミーティングや「Cisco Webex Meetings」などWeb会議に特化したツールも一定の割合を堅持している。特に従業員数100人以下の中小企業においては、Zoomミーティングの利用割合が高い傾向にあった。
Web会議ツールは利用用途が広いことから、新卒採用の会社説明会やウェビナーなど、工夫次第でさまざまなシーンに応用できる。次の質問では、Web会議ツールを会議や打ち合わせ以外でも利用しているかと尋ねたところ、「利用している」が45.8%、「利用していない」が54.2%であった。
会議や打ち合わせ以外の目的で「利用している」と回答した人に対してその利用目的を聞いたところ、「オンラインセミナー/ウェビナー」が最も高く68.3%で、次いで「1on1ミーティング」(52.5%)、「クライアントとの商談」(41.7%)となった(図2)。前回の調査結果と比較すると、コロナ禍の収束が見え始めて対面コミュニケーションが増えたためか、「クライアントとの商談」や「雑談やランチ会など業務以外での用途」が微減する結果となった。
なお、Research Nester Private Limitedが2020年5月に発刊した調査レポート「ウェビナーとウェブキャスト市場:世界的な需要の分析及び機会展望2023年」では、ウェビナーとウェブキャスト市場は2016〜2023年にかけてCAGRが7.6%拡大すると予測する。2015年の5億4700万ドルから2023年には8億ドルにまで成長するとの予想だ。
前編では「ミュートしないまま独り言を言ってしまった」など、回答者自身のWeb会議中の失敗経験について尋ねたが、それに関連して、今回は参加者がWeb会議中に遭遇した珍事件や思わず笑ってしまうようなエピソードをフリーコメント形式で募った。寄せられたコメントの一部を紹介しよう。
「ツールが使いづらい」「声が聞き取りにくい」「画面が固まる」など、Web会議ならではのストレスを感じる時がある。次に、勤務先で利用しているWeb会議ツールの満足度と不満に感じるポイントについて尋ねた結果を紹介する。
現在利用しているWeb会議ツールについて、使いづらい、機能が少ないなど、不便や不満を感じる点があるかどうかを聞いたところ、「ない」が過半数で56.9%、「ある」は43.1%であった。2021年5月に実施した前回の調査では、「ある」が50.6%であり、不満とする割合が微減した格好だ。従業員規模別で見ると、10001人を超える企業においては約6割が「不満がある」としており、従業員規模が大きくなるにつれて不満とする割合も上昇傾向にあった。
Web会議ツールに不満が「ある」とした回答者を対象に、その理由をフリーコメント形式で尋ねた。寄せられた不満の声をワードクラウドによって可視化したものが以下の図だ(図3)。
上図からも見て取れるように、最も不満が集中したのが「音声や映像品質」に対する不満だ。具体的には以下のようなコメントだ。
音声品質に関しては、ヘッドセットやPCの内蔵マイクの品質によるところもあり、一概にもWeb会議ツールによるものとは言い難い部分もあるが、一部のツールでは接続デバイスが認識されないなどの声もあり、Web会議ツールと音声デバイスの両面で原因を探る必要があるだろう。
次に多い声が「資料共有のしづらさ」だ。映し出される資料が小さく見えづらいとのコメントが目立った。
3つ目の不満として「議事録作成のしづらさ」「ベンダーによる急な機能変更」が挙がった。Web会議ツールの中には議事録の自動作成機能を備えるものもあるが、精度の低さに不満を持つ声もあった。また、急な仕様変更がユーザーを混乱させ、不満と感じるポイントであるようだ。
他にも資料共有時に「ホワイトボードのようにスライドを映しながらメモの共有が簡単にできない」「見えている報告資料に対して、投影者以外が指さしツールなどを利用して話ができないのでやりにくい」など、インタラクティブ性を備えた共有機能を持つツールが少ないことも不満の声として挙がった。
前項のWeb会議ツールへの不満と関連して、最後に「Web会議ツールベンダーに求めること」を尋ねた結果を紹介する。Web会議ツールの不満の声として多くの声が寄せられた「音声、映像品質」や「周囲の環境音やノイズの軽減」に関する要望が目立った。
会議のオンラインシフトによって開催ハードルが下がり、単発会議が増加したためか、できるだけ参加する会議を減らしたいとの思いから、議事録や文字起こし機能への要望も見られた。
音声と映像、テキストコミュニケーションを包括するWeb会議ツールは動作が重くなりがちだ。Web会議ツールを利用する上でストレスとなるためか「動作を軽くしてほしい」との意見も多く、以下のようなコメントが寄せられた。
その他の声として、ユーザーインタフェースや細部のデザイン、バージョンアップのタイミングに対して不満を訴える声もあった。Web会議の開催頻度とともにツールに触れる機会が増えたからこそ、気になるポイントなのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。