テレワークシフトや働き方改革関連法の施行によって、勤怠管理システムの導入が進んでいる。特に導入が増えているのはどれくらいの規模の、どの業界の企業なのだろうか。
テレワークの普及や働き方改革関連法の施行は、日本における勤怠管理の在り方に大きな影響を与えた。企業は多様化する従業員の勤務実態をどのように管理しているのだろうか。
キーマンズネットは「勤怠管理に関するアンケート(2023年)」と題して調査を実施した(実施期間:2023年3月24日〜4月4日、回答件数:317件)。前編となる本稿では、勤怠管理システムの導入率や導入形態、導入目的といった調査結果を紹介する。
勤務先での勤怠管理システムの導入状況を聞いたところ、全体で86.1%と多くの企業で導入されており、2018年、2021年実施の同調査と比較しても年々導入率が高まっていることが分かった。業種別で見ると、特に「(IT関連外)製造業」での導入が増えている。教育機関や医療機関でも、これまでは導入率が低い傾向にあったが、徐々に導入が進んでいるようだ(図1)。
従業員規模別ではどのような傾向が見えてくるだろうか。
従業員規模別では、特に「1〜100人」「101〜500人」で導入率が増えている。「従業員数100人」が勤怠管理システム導入を検討するボーダーラインになっているようだ。特に「100〜500人」の中堅企業での導入が進んだ(図2)。
勤怠管理システムの導入が進んでいる背景には、時間外労働の上限規則を設けるなどの管理強化を求めた2019年4月施行の「働き方改革関連法」が大きく関係している。
導入目的やきっかけを聞くと「法令対応のため(時間外労働の上限規制など)」が63.4%と大半で、次点でも「勤務時間の不正申告を減らすため(34.9%)」といった関連項目が続いている。
「法令対応のため」という回答の割合を業種別に見ると、「流通・サービス業」が75.5%と最も高く、「IT製品関連業」が55.0%と最も低かった(図3)。「流通・サービス業」は複数の拠点でのオフラインの業務が多く、勤怠管理システムの導入が進んでいなかった可能性がある。そのような中で、法令改正への対応のため、本腰を入れて導入せざるを得なくなった企業が多いのではないだろうか。
従業員規模別に見ると、「タイムカードや『Microsoft Excel』での管理が難しくなってきたため」と答える割合が、特に「1〜100人」「101〜500人」で多いことが分かる(図4)。中堅・中小企業では、規模の拡大によって既存のツールでの勤怠管理が難しくなり、導入を決めるケースが多いようだ。
では、どのような方式のシステムが導入されているのだろうか。全体では「自社開発システム(36.3%)」「パッケージソフト(29.9%)」「SaaS(26.1%)」となり、自社開発が若干多いものの、おおむね三分されている。
業種別に推移を見ると、どの業種でもSaaSが増加傾向、パッケージソフトが減少傾向にある。勤怠管理システムもオンプレミスからクラウドの移行が進んでいるようだ。
従業員規模別に見ると、特に「101〜500人」の中堅企業でSaaSの割合が大きく増えている(図4)。上述のように法令改正や企業規模拡大に伴って、比較的気軽に導入できるSaaS型の勤怠管理システムの導入が中堅企業で進んでいると思われる。
勤怠管理システムにおける打刻方法も聞いたところ、「Webシステムへ時間を直接入力(65.5%)」「IDカード認証(27.1%)」「PCへのログインにより自動で打刻(25.4%)」といった結果だった(図5)。コロナ禍を背景にテレワークシフトが進み、Webシステムやスマートデバイスでの打刻を採用するケースも増えたのだろう。「(IT関連外)製造業」では工場などで勤務する従業員が多いからか、IDカード認証を採用する割合が高いようだ。
以上、前編では企業における勤怠管理システムの導入状況について紹介した。後編ではテレワークの実施状況を中心に、残業時間管理の実態にも触れていく。
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