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「Notion」まる分かりガイド 機能とメリット、事例を解説

「コネクテッドワークスペース」を標ぼうし、多様な機能を持つオンラインツール「Notion」。「Notion AI」もリリースされ話題となっている。Notionの基本機能やメリット、事例、運用や移行のポイントなどを2回に分けて解説する。

» 2023年04月24日 10時00分 公開
[平 行男, 編集:溝田萌里キーマンズネット]

Notionとは?

 Notionとは、ノートやドキュメント、Wiki、プロジェクト管理、データベースなど多彩な機能を備えたクラウドサービスだ。Notion Labsが開発し、利用者数は全世界で3000 万人を超える。日本のユーザー向けには、2021年10月に日本語のβ版を、2022年11月には日本語の正式版をリリース。2023年2月には、「Notion AI」をリリースして大きな話題となった。

 日本語β版リリース以降、トヨタ自動車や三菱重工、サイバーエージェント といった大手企業を中心に日本のユーザー事例も急激に増加している。Notionの活用法などを共有する企業利用ユーザーで構成される「チャンピオンズコミュニティー」の日本版も立ち上がり、さらなる盛り上がりを見せている。

 今知名度が急速に高まっているNotionの機能や導入効果を、Notion Labs Japan合同会社 ゼネラルマネージャーの西 勝清氏に聞いた内容を編集部で再構成した。

 なお、Notion AIやNotionの導入、運用ポイントについてはこちらの記事で解説している。

Notion Labs Japan 西 勝清氏

「Notion」の特徴と解決できる課題

 Notionは企業のアプリの増加に伴う課題を解決するという。ID管理サービスのOktaが実施した調査「Businesses at Work 2023」によれば、企業は平均89個(従業員2000人以上の大企業は211個)ものアプリを導入している(注)。多くの企業は、議事録やメモ、ドキュメント、Wiki、プロジェクト管理などで、幾つものアプリを使いわけている。業務では絶えずアプリの画面を遷移する必要があり、アプリが増えれば増えるほどユーザーの混乱は増す。さらに、同じジャンルのアプリであっても、部門が違えば別の製品が使われていることも珍しくない。

 こうした事態は、生産性の低下はもちろん、ナレッジのサイロ化や組織としての一体感の低下を招くおそれがある。契約が複数に分かれることでコストの無駄にもなりやすい。さらに、多くのアプリの操作方法を学ぶことは学習コストもかかり、社内で利用が浸透しない場合もある。

 これらの課題に対し、Notionは複数アプリの機能を一つにまとめることで解消するという。ユーザーがNotionでさまざまな作業をすることで自然に情報が集約され、「Notionに全ての情報がまとまっている状況」を作れる。これによって情報のサイロ化や一体感の低下などを解消するだけでなく、運用費用やライセンス費用、アプリの学習コストを低減させることも可能だ。

注:Okta『業務アプリの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2023」』(2023年2月16日)

Notionの基本的な機能

 Notionはさまざまな機能を持つが、主要な活用方法としては「Wiki」「プロジェクト管理(タスク管理)」「ドキュメント管理」「情報収集」などがあげられる 。デスクトップアプリ版とブラウザ版、モバイル版で利用可能だ。

Wiki

 Notionは、社内の情報を集約して、共有するページを手軽にWikiを作成できる。企業のミッション・ビジョン・バリューや全社目標、従業員名簿、経理など各種届出書類、福利厚生の情報、オフィスマニュアルなど、従業員が必要とする情報を各ページにまとめ、全社向けのワークスペースからアクセスできるようにするといった使い方ができる(図1)。Notionにアクセスすれば必要な情報が全てそろうようにしておくことで、「あのデータはどこだっけ?」と探す時間を削減できる。

 全社向けのワークスペースの中に、各部署、各チームのワークスペースを作り、必要な情報を収集、整理、共有することも可能だ。システム開発部なら、部門のタスクや開発手順を示したマニュアル、ベストプラクティス、会議の議事録、1on1の記録などを集約するといった使い方が考えられる。

図1 社内Wikiとしての使い方の一例(提供:Notion Labs Japan)

 ちなみにWikiページの作成時の操作も簡単だ。Notionのページは基本的にブロックの組み合わせで成り立っている。1つのページを作って文字を入力し始めると、その入力した文字はテキストブロックとして認識される。ブロックはテキストに限らず、画像や表、リストなどさまざまなタイプがあり、「/」または「;」を入力、もしくは「+」をクリックすることで追加できる。それらを「LEGO」のように組み合わせ、ドラッグアンドドロップで順序を並べ替えながら好みのページを作成する。その他ページ内にサブページを作り、階層化されたページを一覧表示したり、「Microsoft Power Point」などで作成したグラフィカルな資料をPDF化してページに埋め込んだりすることも可能だ。

 社内Wikiを一から作るのもいいが、既存のテンプレートも活用できる。Notionでは、アプリ内にテンプレートを多数用意している他(図2)、Webサイトでも「テンプレートギャラリー」を公開している(図3)。テンプレートギャラリーでユーザーが提出したテンプレートを掲載している他、多くのユーザーがSNSなどで自作テンプレートを公開しているので、これらをコピーして、ノーコードでカスタマイズすることで作成時間を短縮できる。

図2 Notionアプリ内に豊富なテンプレートが用意されている(提供:Notion Labs Japan)
図3 テンプレートギャラリー。「Netflix社のブランディング・フレームワーク」など、有名企業のベストプラクティスがテンプレート化されているのも面白い(提供:Notion Labs Japan)

プロジェクト管理

 Notionのプロジェクト管理は、個人向けのToDo管理から、多数のメンバーが参加する大規模プロジェクトの管理まで、多方に散在する情報を1カ所にまとめて可視化できる。どのように利用するのか。

 図4のデモページは、「プロジェクト」や「タスク」などのデータベースで構成され、それぞれ期間や担当者、ステータス、優先度などの記入、更新すべき項目がある。これらのデータベースの中身を更新するとプロジェクトに反映される。

 Notionはこれらの一元化されたデータベースを、さまざまな視点(ビュー)で表示できることが特徴だ。下記の画像はプロジェクト管理のトップページの一例で、進行中のプロジェクトをリストとして一覧できる他、ビュー形式を「タイムライン」に切り替えることで、ガントチャートに変更したり、フィルター機能で「自分のプロジェクトだけ」を表示したり、ソート機能で「優先順位ごとに」表示したりできる(図4)。さらに、プロジェクトの中身をドリルダウンすると個人のタスクを閲覧でき、プロジェクトにかかわる全てのタスクを俯瞰(ふかん)しながら、状況を見て柔軟にタスクを移動できる。

図4 プロジェクト管理ページの一例(提供:Notion Labs Japan)
図5 「タイムライン」ビューで、プロジェクト一覧をガントチャートで表示させた画面(提供:Notion Labs Japan)

 以上はプロジェクトの管理者に便利な機能だが、個人が複数プロジェクトに紐づいた自分のタスク、あるいはどこのプロジェクトにもひも付かない個人タスクを表示、管理するための、個人ページを作成することも可能だ。タスクの表示方法も、タイムライン形式、カンバン形式、カレンダー形式などさまざまで、プロジェクト管理ツールに必要な基本機能を一通り備えているといえるだろう。

図6 カンバン形式で表示したタスク管理画面(提供:Notion Labs Japan)

 なお、一つのデータベースをさまざまなビューで表示できる機能はNotionの大きな特徴で、多くのシーンでそのメリットが発揮される。従業員名簿のページを作成して、従業員の名前や所属などをテーブルビュー で一覧表示させたり、顔写真のアイコンを並べてギャラリービューにしたりといったことも可能になる。あるいは、会議とそこで決まった決定事項をデータベースとして、自分が参加した会議の決定事項を一覧表示させたり、「実施済み/未着手」「担当者」といったフィルターを設定して 表示させたりすることもできる。元となるデータベースはExcelのようなシンプルな表だが、それらを目的に応じて追加した上で、さまざまなビューで可視化できることがポイントだ。

ドキュメント管理

 ドキュメント管理は最も分かりやすい使い方だ。Notionは、Word、Excel、PowerPointに準ずるドキュメント作成機能を持つ。さらに、これらを含むさまざまなアプリと連携させてドキュメントをアップロートしたり、Notionのページ内に埋め込む使い方もある。

 例えば、会議の情報を整理する場合を考えてみよう。会議資料や議事録などがバラバラに管理されていて各情報を探し出すことに手間がかかるケースも少なくない。一方、Notionは会議ページを作成し、一つのページにアジェンダや議事録をテキストで入力したり、スライド資料をPDFとして埋め込んだり、ドキュメントを格納したり、プロジェクト管理ページへのリンクを張ったりすることで、情報を一元的に集約して「あの資料はどこに行った?」をなくすことができる。

 Notionが面白いのは同じデータベースを複数の場所で活用できることだ。図7のように「プロジェクト状況」というページを作り、プロジェクトの背景や目的などを記載し、その下にプロジェクト管理ページからデータソースをコピーして、「リンクドビュー」として貼り付ける。すると図7のように、最新のプロジェクトの進捗状況が表示される。この使い方はプロジェクトの背景と状況を一覧できるとしてユーザーにも支持されているという。 なお、このビューはオリジナルのコピーとして表示されるので、ビューを変更しても、オリジナルデータベースには影響を与えない(コンテンツの中身やプロパティに変更を加えるとオリジナルに反映される)。

図7 ページ内に「プロジェクト管理」のビューを配置した。リンク先の情報が変われば、このページの情報もリアルタイムで変わる(提供:Notion Labs Japan)

情報を集めるWebクリップ機能

 個人で利用するには、情報を集めるWebクリップ機能が便利だ。「Google Chrome」「Firefox」「Safari」で使用できるブラウザ拡張機能「Webクリッパー」をインストールすれば、閲覧しているWebページをNotionのページに簡単に保存できる。「あとで読みたい記事」や「参考資料になりそうな記事」を保存しておくと便利だ。

ツール連携機能

 Notionは「コネクテッドワークスペース」を称し、Notionのページ間で情報を連携できるだけでなく、APIを使用して外部のツールとも柔軟に連携できる。「Slack」「Google Drive」「Microsoft OneDrive」「Box」「Trello」「Figma」「GitHub」「Zoomミーティング」など、さまざまなAPIが用意されている。

 一例としてSlackでのチャットをNotionのページに埋め込めば、「Slackでどのようなコミュニケーションがあったか」を示すことができ、文脈の説明が可能になる。

図8 Slack、Google Map、Figma、Twitterなどのコンテンツを埋め込んだNotionのページ(提供:Notion Labs Japan)

事例:Notionによって社内外のプロジェクト情報を一元管理

 ある企業では、新規プロダクトの開発時に、社内外を含めたプロジェクトメンバーが情報を集約、共有する場としてNotionを導入した。タスクやKPI、分析結果、仕様書、ブランドガイドライン、スケジュール、議事録など、ほぼ全ての情報をNotionで管理しているという。

 同社では、従来「タスク管理やスケジュール管理にはExcel」「議事録にはメール」「決定事項のまとめにはPowerPoint」「各種資料保管にはネットワークドライブ」といったように、バラバラのツールを使っていた。情報管理が煩雑になりドキュメントが見つからないといった課題があった他、複数チームのプロジェクトを一元的に俯瞰するための仕組みもなかったという。

 こうした課題を解消するために、プロダクト開発のスタートとともにNotionを導入し、「全ての情報をNotionに記載する」スタイルを浸透させた。以前は会議でPowerPointなどの報告資料を投影しながら進捗状況を報告していたが、Notionにシンプルに記載した情報をもとに話を進めるようにした。Notionを契機にした情報共有、業務スタイルの変化によって、資料作成にかかる時間の削減や、シームレスな情報連携、複数プロジェクトの俯瞰的な管理を実現したという。

 以上、Notionの基本的な特徴や企業内での使い方を紹介した。Notionは、デザインやユーザーインタフェースが非常にシンプルで、コーディングの知識がなくても 直感的に操作できること、さらにページの背景やアイコンなどに遊び心のある設定が可能なこともユーザーの支持を得ているという。Notionの創業者は京都に長期滞在している間に現在のNotionのコードの最初の一行を書いたという裏話があるが、その際に触れたデザイン性やおもてなしの心がNotionに反映されている。そういう意味でNotionは京都生まれのツールと言えるだろう。

 次回は2023年2月にリリースされた「Notion AI」の機能や、企業がNotionを導入する上で気をつけたいポイントについて解説する。

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