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Notion AIの使い方、Notion導入、運用のポイントを解説

Wiki、ドキュメント管理、プロジェクト管理などさまざまな機能を包含したコミュニケーションツールとして人気が高まっている。2月には「Notion AI」もリリースして話題になっている。Notion AIの特徴や、Notionの導入を成功させるポイントを解説する。

» 2023年04月25日 07時00分 公開
[平 行男, 編集:溝田萌里キーマンズネット]

 Wikiやドキュメント管理、プロジェクト管理などさまざまな機能を包含したコミュニケーションツールとして、世界で約3000万のユーザーに使われている「Notion」。前編では、Notionの基本機能やメリット、事例について紹介した。後編となる本稿は、Notion AIの特徴や、導入・運用のポイントなどを解説する。

 なお、前回に引き続きNotion Labs Japan 合同会社ゼネラルマネージャーの西 勝清氏に聞いた内容を編集部で再構成した。

Notion Labs Japan 西 勝清氏

Notion AIとは

 2023年2月22日(現地時間)、米Notion Labs Inc.(Notion社)は、ドキュメント作成をAIがサポートする「Notion AI」を正式リリースした。日本語版を含め、Notionが対応する全ての言語でAI機能を利用できる。

 Notion AI正式版リリースに先立ち、2022年11月にプライベートα版が既存ユーザーに向けて公開された。そのユーザーの利用方法を分析すると、文章の新規作成よりも、作成した文章を編集する用途が多数を占めたという。そこで正式版では、文章の編集機能に重きを置いてAI機能をアップデートした。「仕事をより早く進め、より良い文章を書き、創造性を高める」ことがNotion AIで可能になると、Notion Labs Japan ゼネラルマネージャーの西 勝清氏は言う。

 Notion AIは、NotionのワークスペースでAIを呼び出し、翻訳や要約、文章の改善、アイデア出しなどの機能を利用する。「AIが人間に寄り添って作業をサポートしてくれるような感覚」を目指した。

 AIを呼び出すには幾つかの方法がある。まず既存のテキストをハイライトして、「AIに依頼」を選ぶ方法。また、新しい行で半角・全角スペースもしくは「/(スラッシュ)」を入力するか、全角の「;(セミコロン)」を入力する方法もある(図1)。日本語入力と英語入力を切り替えることなく呼び出せるよう工夫したという。では、Notion AIで何ができるのか。

図1 「/」コマンドを入力してNotion AIを呼び出した画面(提供:Notion Labs Japan)

文章の作成・編集機能

 Notion AIには「ブログの投稿」「プレスリリース」「営業メール」など、新規の文章の作成をサポートする機能が搭載されている。既存の文章の要約、伸長、要点の整理といった文章の編集機能も利用できる。実際にユーザーに使われることが多いのは後者の文章の編集機能だ。

 文章の要約機能においては、会議の議事録や顧客へのヒアリング内容などをまとめるシーンなどで役立つ。一度生成されたまとめの文章の長さを長くする(または短くする)ことも可能だ(図2)。

図2 ハイライトされた箇所はNotion AIが要約した文章。これを長くすることもできる(提供:Notion Labs Japan)

 「アクションアイテムを抽出する」機能を選べば、文章の中からタスク(ToDo)を抽出し、列挙できる。Notion AIによって議事録の要点を整理し、やるべきタスクを作成するまでが、数回のクリックで可能になる。

 自分で書いた文章が短すぎるため、もう少し長くしたいといったケースにも対応する。Notion AIは、そのページ内に書かれている情報を元に、文脈を理解しながら文章を作成するので、見当外れの文章になる心配は少ないという。

文章の翻訳

 Notionの翻訳機能は現在14カ国語に対応している。Notionのワークスペース上で作業が完結できる点が特徴だ。

 下書きした外国語の文章を、Notion AIで改善したり、シンプルな表現に置き換えたり、トーンを変更(フォーマル、カジュアル、フレンドリーなど)したりといった編集機能もある。ネイティブの相手とより良いコミュニケーションを図る上で役立つ機能といえる(図3)。

図3 Notion AIで一部の文章を翻訳。翻訳後のテキストの長さ・トーン調整もできる(提供:Notion Labs Japan)

アイデア創出

 Notion AIを相手にブレーンストーミングして、アイデア創出に役立てる使い方もある。「Z世代向けフィットネスウェアの新ラインの販売を促進するクリエイティブなマーケティングキャンペーン」を考案したいとする。Notion AIで「アイデアのブレーンストーミング」を選択し、上記の文章を入力すると、図4のように幾つものアイデアを提示する。

 Notion AIが提示するアイデアは一般的なものが多いが、この結果を基にNotion AIを駆使して、アイデアを整理、深めることも可能だ。Notion AIによって、提示された各キャンペーン施策の長所と短所を表にまとめた上で、実現可能な施策をピックアップし、アクションの手順を示すといった活用法が考えられる。

図4 Notion AIが創出したマーケティング案(提供:Notion Labs Japan)

 なおNotion AIの開発は、パートナーである複数の言語モデルプロバイダーとNotionが共同で実施している。ユーザーがNotion AIを利用しても、その情報が言語モデルの学習に利用されることはない。

 Notion AIの料金プランは1人月額10ドルで、利用回数は無制限。お試しとして、ユーザー1人につき20回までは無料でNotion AI機能を利用できる。

Notionの導入、運用時に確認すべきポイント

 Notionを導入、運用する際に知っておくべきポイントについて、セキュリティやデータ移行、Office製品との連携という観点でまとめた。

セキュリティ

 セキュリティは導入時にチェックすべき重要なポイントだが、Notionでは以下の点をおさえていることで大手企業の引き合いや導入実績が増えてきたという(監査ログ機能はエンタープライズプランのみ)。

  • ISO27000やSOC 2 Type 2を取得
  • GDPRへの準拠に努め、データポータビリティと管理のツールを複数提供
  • データセンター内外の、あらゆる場所でTLSを使用
  • データは転送中も保存中も暗号化される
  • ワークスペースの監査ログ機能を提供
  • ドメイン認証機能により会社として許可していない野良ワークスペースを防止できる

 なおホスティングにはAmazon Web Services(AWS)の米国にあるデータセンターを使用している。国内のデータセンターがあることを導入要件とする企業では、現状では導入が難しいかもしれない。

データ移行

 Notionでは、「Evernote」「Trello」「Google Docs」などの主要な業務アプリからデータをインポートするインポーターを用意している。また、htmlやCSVといったファイル形式でのインポートも可能だ。ただし元の表現を完全に再現できない場合や、そもそもインポーターに対応していないアプリもある。移行対象のデータが数テラバイトに及ぶような場合は時間もかかるので、導入時は移行データの量や実現性、工数について十分に検討することが望ましい。

 Notionでは、データ移行に関して国内パートナーとの連携を含めて個別に相談、サポートを提供するとしている。これまでの事例では、Wikiやプロジェクト管理の移行から始めるケースが多いそうだ。

Office製品との連携性

 Notion導入時には、Microsoft Office製品との連携性についても気になる企業が多いという。インポーターを使うことで、「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」の機能をNotionのドキュメント作成アプリで再現できるという。PowerPointに関してはインポーターが用意されていないので、リンクを埋め込むかPDFに変換してから埋め込むのが良さそうだ。

 なお、WordやExcelのファイルをそのままの形式でNotionにアップロードし、「ドキュメント保管」などのスペースを作成してNotionをクラウドストレージのように利用することも可能だ。

 その他、「Microsoft OneDrive」についてはコネクト機能が用意されている。Notionのワークスペースからアプリを切り替えることなくOneDriveのファイルを追加・プレビューできる。

Notionを定着させるポイント

 Notionを導入するメリットは業務やデータが集約されることにあるが、そのためには現場の従業員の利用を促進することが重要だ。そのコツについて、Notion Labs Japanの西氏は、「第一に、トップが率先してNotionを使うこと」が重要だと話す。特にNotionの得意分野であるドキュメント管理やプロジェクト管理は、組織のリーダーの考え方が大きく反映される業務であることから、リーダーがNotionを使いながら利用方針を示すことで定着が進むという。

 また、導入時は「なぜNotionを導入するか」を明確にすることも大切だ。組織の目指すビジョン・ミッション、価値観、重点施策の達成のためにNotionを使ってコミュニケーションを変えたい、というストーリーがユーザーにきちんと伝わると、新しいツールの導入も受け入れてもらいやすい。

 ある企業は、「情報を持っている人が偉いのではなく、共有する人が偉い」「グローバル競争時代に勝ち抜くには、情報・知識の透明性を高め業務に活用していくことが必須」とのメッセージをトップが強く打ち出し、その手段としてNotion導入を発表した。これにより社内の意識が統一され、Notionが速やかに浸透したという。

 ユーザーが利用する段階では、迷いなくツールを操作できることもポイントになる。Notionはノーコードで「LEGOブロックのように」テキストや画像などの要素を組み合わせながらページを作成できる操作性がメリットの一つだが、さらなる活用のヒントを得たい場合はNotionが用意する公式のガイドやチュートリアルの他、日本語によるユーザーサポートも利用できる。NotionユーザーがYouTubeやnote、Twitter、ブログなどで公開しているコンテンツも参考になるだろう。

 2022年11月には、Notionの企業ユーザーが集う「Notionチャンピオンズコミュニティー」の日本語サポートがはじまった。ユーザー企業のチャンピオン(Notion好きのユーザー)が参加できるプログラムで、自社の成功事例やTIPSなどの情報交換をする場として機能している。社内での利用率向上や運用効率化に取り組みたい人は参加することをお勧めする。

今後の取り組み

 西氏によれば、今後のNotionの開発ロードマップにおける重点項目は「Notion AIの拡張」だ。現時点でリリースされているドキュメント作成サポート機能から、プロジェクト管理やWikiなどにもNotion AIの適用範囲を広げる方針だという。

 細やかな機能改善については随時アップデートがある。下記の画像はNotionのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)アップデートの一例だ。以前は、メニューを表示させた状態から少しでもカーソルがずれると、メニューが消えていた。今はカーソルが多少ずれてもメニューが消えないように改善されている(図5)。こうした細かい工夫の積み重ねることで、アプリを操作する際のちょっとした“違和感”を低減し、ユーザビリティを向上していることもNotionの特徴だという。

図5 NotionのQOLアップデートの一例(提供:Notion Labs Japan)

 京都で最初の一行が書かれた、いわば京都生まれのアプリならではのデザイン性、おもてなしの心で、ユーザビリティの改善を続けるNotion。まだ始まったばかりのNotion AIの進化も含め今後の展開に注目したい。

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